東京都の時短要請 学生アルバイト直撃

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 東京都は1月8日から中小の飲食店への営業時間短縮をあらためて要請し、応じた店舗に感染拡大防止協力金を1日あたり6万円給付することとした。午後8時までの営業とすることで飲食店事業者を直撃しているが、アルバイトをする学生も収入減の事態に直面している。

■1日2時間しか働けず午後7時半には終了

昼間はまだ人出が多い新宿・歌舞伎町も夜は静かになる(撮影・松田 隆)

 営業時間短縮の要請は昨年4月から随時、行われてきたが、1月8日からのものは営業を午前5時から午後8時までとし、2月7日までの31日間で最大186万円(1日あたり6万円)が給付される。これに応じる店舗は多く、都内の繁華街では午後8時にシャッターを閉める店舗の映像が流されているのはご存知の通り。

 デリバリーやテイクアウトなど、新しい業態でビジネスをして店舗存続のための努力を続ける事業者が多い。生き残りに必死の事業者も大変だが、アルバイト学生も厳しい状況に置かれていることは忘れるべきではない。

 僕が専門学校で教えている生徒の多くは20歳前後。学業の合間を縫ってアルバイトをしている者がほとんどで、その多くが飲食店で働いている。

 最近、ある女子学生と授業の合間に話したところ「今は(午後)7時30分には帰されてしまいます。そのため、1日2時間程度しか働かせてもらえません」と厳しい状況を教えられた。1日の収入は3000円にも届かず、1万円稼ぐために4日ほど働く必要があるという。1月8日より前も時短要請はあったが、それでも午後10時まで営業が出来た。そう考えると収入は半減と言っていい状態。

 しかし、自分はまだいい方だという。「ほとんどお客さんが来ません」(同学生)という状況で事業者にとってはその営業時間帯は赤字かもしれないのに働かせてもらっているからである。その学生は続ける。「私の友達が働いている店は、ローテーションを正社員だけで回して、アルバイトはシフトに入れないそうです。その友達は『飲食店以外を探そうかな』と言っています」。

■飲食店にも雇えない事情がある

飲食店も客足が途絶えている(写真はイメージ)

 学生にとって本業ではないから仕方ないと言ってしまえばそれまでだが、学生の多くは小遣い稼ぎのために働いているわけではない。一人暮らしであれば、生活費の一部に充てており、大学編入試験の受験費用(相場は1校3万5000円)も自分で出す学生がほとんど。専ら親の脛をかじっていた我が身を思うと、今時の学生さんには頭が下がる思いがする。

 そうした学生にとっては収入減に対してこれといった補償もないわけで、他業種のアルバイトを掛け持ちするなどしてしのぐか、それができなければ実家に「今月だけ多めに仕送りを」と頼むしかない。そうなると実家も負担が増えてしまう。

 飲食店には「何とか学生を雇ってあげてください」と言いたいが、そう簡単ではない。飲食店を取材していると雇用調整助成金は学生アルバイトも助成対象となるとはいえ、前出のように「ほとんどお客さんが来ません」という中、アルバイトの雇用を継続すること自体が困難なのは容易に想像がつく。

 実際に僕は昨年11月28日から午後10時までの時短要請(20日間で合計40万円の協力金給付)がされた際のことを飲食店に取材したが、「9時以降にお客さんが入ってきませんし、そもそも人が歩いていません。」「11月27 日までは大賑わいだったのが、時短要請で一気に冷え込みました。キャンセル、キャンセル、キャンセルでした。」という悲痛な声が寄せられた(Foodist Media:時短要請を「時代の変わり目」と捉える飲食店も。ポストコロナへ動き始める外食業界)。そうなると正社員だけでシフトを回してというのはやむを得ない選択。誰が事業者を責められようか、という話である。

■日本の飲食業界を支える学生アルバイト

 日本の飲食店の純益は総売り上げの中で10%を切ると言われている。主要国に比して日本の飲食店の値段が安いのは、人件費が低い学生アルバイトに頼る部分も少なくない。今や飲食業界は学生アルバイトなしには成り立たない。時給1,000円ちょっとで一生懸命、客に笑顔を見せて働く学生たちの頑張りが社会を支えてきたのである。

 戦後最大の危機と言われる新型コロナウイルス禍にあって、学生アルバイトの問題でこれといった有効な解決策は見出せない。しかし、日々若者と接している身としては、せめて、この時期に忙しくなっている業界に学生アルバイトを積極的に採用してくださいとお願いしたい気分である。

"東京都の時短要請 学生アルバイト直撃"に2件のコメントがあります

  1. MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    コロナ禍でやっかいなのは、通常は人手不足が常態化しており、【雇用の受け皿】でもある飲食業が壊滅的な打撃を受けてしまっていることですね。もちろんその他の業界も広く雇用に影響が及んでいますから、転職もままならないでしょう。
    小生如きには名案は浮かびませんけど、先ずは一刻も早いワクチンや治療薬の開発・普及を祈ります。そして高齢者と同様に、国家の未来の担い手である学生さんにも、政府が温かい支援の手を早急に差し伸べて欲しいと思います。

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

      >>MR.CB様

       コメントをありがとうございます。

       中小の飲食店は少々の助成金を得たぐらいでは、アルバイトの雇用を維持できる現状ではないでしょう。それも取材をしていてひしひしと感じます。一方で日々、学生に接している身としては(真面目な、いい子たちを何とかしてやりたい)という気持ちになります。こういう状況を見ていると本当に辛くなります。

       今は飲食店が生き残って、コロナ後の雇用を拡大していくことに努力してもらうことを祈るのみです。そのためにワクチン、治療薬を早く、その通りだと思います。

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