小泉環境相の太陽光発電推進政策を阻止せよ

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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 レジ袋有料化を推進し、プラスチックスプーン有料化を提言、温室効果ガス削減目標の46%を「浮かんできた」とオカルトめいた発言をするなど、奇行の続く小泉進次郎環境大臣が、またおかしな動きをしている。「屋根置き太陽光発電」の拡大を騒ぎ始めた。この政策は、効果も実現性も怪しいものだ。

◆思いつきで政策を語る環境大臣

 日本政府は、4月22日に2030年度に温室効果ガスの排出を13年度比で46%削減すると表明した。これを受けて翌日の23日に、小泉環境相は閣議後記者会見で「再生可能エネルギーを現在の2倍入れなければ削減できない」と強調。「太陽光は導入に時間がかからない。屋根置きが切り札だ」「私も大臣室から外を眺めているが、太陽光が置かれていない東京のビルはいっぱいある。これからは景色が変わるようにやっていきたい」と述べた。

 また小泉氏が思いつきで、政策を語っている。この発言は間違っており、問題だ。筆者は太陽光発電を決して批判するつもりはないが、長所と短所を見極めながら、導入することが必要と考える。小泉環境相のようなおかしな人が、軽々しく、政策を勝手に語らないでほしい。

◆太陽光が増えるとCO2排出は増える?

 まず太陽光発電の普及によって、温室効果ガスとCO2(二酸化炭素)は減らない。小泉環境相の言うことは怪しい。

東京工業大学奈良林直特任教授講演資料より

 太陽光発電そのものは、化石燃料を燃やさないので、発電時点で温室効果ガスの二酸化炭素を発生させない。ところが電力システム全体で見ると違う。太陽光や風力による発電は天候次第になる。

 再エネをバックアップするため、動かない場合は火力発電が使われる。そのために太陽光が増えるほど、火力発電の設備も、使用も増える。

 図表は、各国の一人当たりC O2の排出量だ。中国、インドは暖房や電源の石炭火力、米国は自動車使用の多さが影響して、排出量は大きい。ところが再エネを拡大し、原発を止めている日本とドイツの成績が悪い。それはこの理由と推定される。

 温室効果ガスの一人当たりの排出が少ないのは、原子力を活用し、水力発電の多い北欧諸国やフランスだ。火力発電に依存しなくてもよいためだ。(調べたが太陽光発電の導入増とC O2増加がリンクしていることについて、傾向はあるものの、具体的な数字の計測研究は見当たらなかった。)

 小泉環境相は、この傾向を知らないのだろう。

◆進次郎政策で国も個人も負担が増える

 第二にコストの問題がある。

 国全体の2020年度の再エネ賦課金の総額は、3兆8434億円になっている。今の日本は再エネ発電をした場合に強制的に20年にわたって電力会社に買い取らせ、電力使用者に負担させる振興策(F I T=Feed-in Tariff)が採用されている。それが賦課金だ。その総額はおそらく2040年までに50兆円を超え、4人家族で現在月約1500円だ。この巨額負担はあまり知られていない。このまま再エネ負担が増え続ければ、電力料金が上昇し、産業界の国際競争力の低下や家庭の負担が大きくなるだろう。

 F I Tは原発事故の後で当時の菅直人首相の主導で導入された。ところが再エネバブルが発生し、太陽光による環境破壊などの問題も発生している。主務官庁の経産省は、買取価格の支出の抑制政策を進めている。また太陽光の買取価格を下げて風力発電を優遇し、風力での投資拡大を目指している。小泉氏の「屋根置き太陽光発電」の発想は、その政策を混乱させるものだ。

 日本の場合、審議会や官庁の政策を観察すれば、次の政策は大体予想できる。ところが、この「屋根置き太陽光発電」は、突如出てきた。小泉環境相は、官僚からの情報を聞かず、誰かに入れ知恵され、突如騒いでいるのかもしれない。

 2020年1月から米国カリフォルニア州では、大規模な建築物や大型住宅で太陽光パネルの設置が義務付けられている。それを小泉環境相はこの政策を知って突如発言したのかもしれない。ところが罰則などがないので、同州ではこの法律を多くの人は守らない。また同州では2020年夏に電力不足が発生し、計画停電を行った。再エネ振興政策に傾きすぎていなかったか、同州では今、政策の見直し議論の最中だ。

 太陽光パネルの発電セットは、家庭向けで一般的な発電量5kwのパネル設備、工事費込みで120万円前後とされる。重さは400キロぐらいだ。新築の場合に、施工主に、その余分な出費は負担になる。古い家に設置する場合には工事が大変で、地震、台風などの災害では屋根が壊れやすくなるだろう。従う人は少ないはずだ。

◆「無能な働き者」が働けないように正しい知識を

太陽光発電による環境破壊(2015年、山梨県北杜市)(撮影・石井孝明)

 さらに小泉環境相の周囲に、太陽光をめぐる利権の蠢きがある。横浜市の太陽光発電会社テクノシステムは、父親の小泉純一郎元総理、兄の俳優の小泉孝太郎氏を広告に使っている。ところが、同社は4月、バイオマス発電をめぐる詐欺の疑いで東京地検特捜部が捜査したと報道されている(デイリー新潮:小泉純一郎が広告塔の太陽光発電会社のグレーな経営実態 息子・孝太郎もCMに出演)。小泉環境相は知恵がないことに加え、脇が甘いし、太陽光発電の振興を語るべきではないだろう。

 日本のエネルギー政策は、一応、常識に基づき、実現可能性に基づき打ち出されてきた。ところが、東京電力の福島第一原発事故で、政治も行政も迷走し、政争の場になってしまった。さらに怪しげな環境活動家や、小泉環境相のような目立ちたい政治家を集めるようになっている。

 政策が、合理性ではなく、かっこよさで決まる。とても危険な状況だ。エネルギーなどのインフラは国民の生活に直接関わり、その政策やビジネスの失敗は、影響が大きすぎる。被害を避けるには、おかしなことに、「おかしい」と指摘し、「無能な働き者」が活動できないようにすることだ(参照:「無能な働き者」「神がかり」小泉環境相を更迭せよ)。

 私のこの小さなコラムが、その一助になればいいと思う。無能な権力者は、賢い国民の運営する民主主義国家では存在できないはずだ。小泉環境相のおかしな言行は多分、治りそうもない。だから、こうした権力者の暴走を、私たち国民が、正しい知識に基づいて行動し、止めなければならない。

"小泉環境相の太陽光発電推進政策を阻止せよ"に5件のコメントがあります

  1. ななし より:

    石井さんこんにちわ
    実は私の住んでいる地域はゴミの分別の人員がおらず、レジ袋を可燃ゴミに指定したばかりだったんですよ。
    でも思ったのはこちらの方が環境に良いのでは?プラゴミは軽いから風の強い日は袋ごと飛ばされ車に跳ねられ飛散することがありますが、可燃ゴミにしてまえば、河川に流出する量が減ると思うのです。
    又、コロナ禍のスプーンの有料化は問題外だと思わないのかな?
    そして、太陽光。東西に長い日本の日照時間の違い、豪雪地、豪雨地などの地域性。
    小学生高学年でもわかると思いますが。
    悪い占い師にはまっちゃったですかね?

    1. 高山椎菜 より:

      こんにちは。
      たしかに最終的には処理場で燃しちゃうわけで、ただ単に燃すための袋を買うというのもおかしい気がしますよね。

      そういえばレジ袋追放をした自治体がありますが、追随する自治体がないのはそういうことなのかなとも思います。

  2. 高山椎菜 より:

    こんにちは。
    わが国の環境相は莫迦しかなれんのかなと思えるんです。そういえばいま知事やってるあの人も・・・?

  3. ぷんぷん丸 より:

    無能な権力者には、有能なジャーナリストをぶつけるのが有効です。
    そのような人は、会見場に入れないのか、居ないのか。
    公開インタビューで突っ込めや、って単純に思っちゃいますけど。

    ビルの屋上にパネル?
    数年後、台風のたびに、パネルが上から降ってくる光景しか思い浮かびません。
    塗料として塗り込めるものでないと、危なっかしい。

    CO2の回収技術を推進するとか、蓄電池の能力アップとか、が
    良いと思うのですが、これらは、経産省か文科省の管轄でしょうかね。
    環境省じゃ、インパクトのあるパフォーマンスができないので、
    現状の状況に至っているのかもしれませんね。

  4. まお より:

    テクノシステム社長が詐欺で逮捕されましたね
    これから小泉家とのつながりを含めてどういう展開になるのでしょうか?
    都知事選で小泉純一郎が脱原発と言い出した時からの繋がりがあるのかな?
    小泉進次郎のポリ袋だプラスティックスプーンだという暴走とも思える発言は全て全戸太陽光発電義務化の為への目くらましだったのでは?

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