ミサイル発射直前も「座して死を待て」朝日社説

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 5月30日朝日新聞の社説のタイトルは「防衛大綱提言 予算倍増の危うい道」。政府が年末に策定する防衛計画大綱と、中期防衛力整備計画に対して自民党が提言をまとめ、防衛費の対GDP比1%の突破を求め、2%の北大西洋条約機構(NATO)の例を参考としていることを批判している。

■昭和31年鳩山一郎首相の答弁は知らないのか

 「5兆円台に膨らんだ防衛費を10兆円規模に倍増させようというのか。財源の議論もないまま大風呂敷を広げるのは無責任の極みだ」

防衛とか軍事の言葉に、昔の血が騒ぐ?朝日新聞

 ここでは財源の議論がないことを問題にしているようである。しかし、自民党の提言は1%の突破を求めるということであって、一気に10兆円にしようなどとは言っていない。2%のNATOを参考にと言っているだけである。

 相手の主張を正確に理解していないのでは、議論は成立しない。この時点でこの社説、論理的文章としてはアウト。僕が責任者なら「書き直してこい」と命じるだろう。

 さらにこうも書いている。

 「敵基地攻撃能力の整備や、海上自衛隊の護衛艦いずもを念頭においた空母化の提言は、いずれも専守防衛の範囲を超える」

 これは違和感がある。敵基地攻撃能力については昭和31年の当時の鳩山一郎首相の衆議院での答弁(船田防衛庁長官代読)が日本政府の見解とされているのは朝日新聞もご存知のはず。その時の答弁の主要部分だけ示すと「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。…他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います」。ごく当たり前のことを言っており、多くの日本人はその通りと思っているであろう。

 この政府見解を「専守防衛の範囲を超える」とあっさりと断言しているようであるが、そうなると朝日新聞は北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射しようとしていても、じっと指をくわえて自国に被害が出るのを待ちなさいということなのだろうか。それとも米軍に敵基地攻撃を頼むのか。ただし「集団的自衛権は行使できないから、我々はできないのでアメリカさんだけでやってください」と、朝日新聞なら頼むのかもしれない。

■中国の軍事費の伸びは「危うい道」ではないのか

 それから空母を保有することは専守防衛の範囲を超えるというのは何を根拠にしているのか。日本は多くの島嶼で成り立っている国であり、離島の防衛は非常に重要な問題。沖ノ鳥島に他国軍隊が侵攻してきた時に、空母なしでどう防衛するのか、さっぱり分からない。

 「安全保障は軍事だけでなく、緊張緩和をはかる外交とあわせて築かれるものだ。」とも言っているが、それはその通りであろう。しかし、そのことは軍事面での増強を一切しないということまでは意味しない。軍事面を増強するとしても、外交努力は継続でき、軍事面で増強しても緊張緩和をするのが外交である。軍事と外交の二者択一ではないことを朝日新聞は知るべき。

 「たしかに、中国海軍の強引な海洋進出に自衛隊が対処する必要はあろう。ただ、力に力で対抗するだけでは、かえって地域の緊張を高める恐れがある」と書いているが、力のバランスが崩れた時にこそ、戦争は発生するものである。

 あれこれ言う前に中国の軍事費の伸びをまず、見よう。1988年に215億元だったものが、2017年には1兆0444億元と48倍になっているのは各種統計から明らかである。2011年から2015年まで5年連続で二桁の伸びを示している。

 日本の場合「予算倍増の危うい道」としているが、30年間で48倍になっている中国の場合は危うくないのだろうか。

 これぞ朝日新聞という社説である。

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