スポーツ新聞は消滅寸前? 僕が見た内部事情

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 ガベージニュースというサイトに「1年間で223万部減、1世帯あたり部数は0.70部まで減少…新聞の発行部数動向」という興味深い記事が掲載されていた。日本新聞協会が発表した各種データから、日本の新聞業界全体の発行部数動向について調査・分析している。それによると2018年に朝日や読売などの一般紙は1年間で223万部減、対前年比5.29%の減少。そして、スポーツ新聞は1年間で28万6000部減の対前年比8.50%の減少となった。今日はこの話題について考えてみよう。音声データはこちら

誰が手に取る?スポーツ新聞

 一般紙も落ちているがスポーツ新聞の落ち込みもすごい。2017年に336万部だったものが308万部に。スポーツ新聞全体では1997年に650万部あったものが、半分以下になっている。東京エリアのスポーツ新聞は日刊スポーツ、スポニチ、サンスポ、報知、デイリー、東京中日に、夕刊の東スポ。売り上げが半分以下になって、7紙が全部残っているのは、ある意味、感動的である。ネットでの広告売上等で、何とか踏みとどまっているのかもしれない。

 ただ、一般的に考えてスポーツ新聞は「オワコン」だろう。僕はスポーツ新聞では最も部数が多い日刊スポーツに在籍していたが、2005年を過ぎたあたりから「このままでいいのかな」と思うようになった。何が良くないって、社員が自分たちの商品に自信を持てなくなっていた。「どうせ誰も読んでないよ」といった感じの諦めの感情が社内に出てきているのを日々感じていた。

 多くの社員が「みんなネットでただで記事を読む時代、わざわざ新聞を買わないよ」と思っていたし、事件が起きたらすぐに記事になるネットに慣れてしまうと、情報を届けるまでに長い時で24時間以上かかる新聞など誰も見向きもしないだろう、と。

 僕も同じ感想を持っていたが、そうした伝える媒体の問題以上に、伝える内容に問題があるのではという点に危機感を抱いていた。プロ野球なんて今ではほとんど見向きもされないコンテンツであるが、相変わらずプロ野球におんぶに抱っこの紙面作り。

 1面のほとんどが写真1枚、原稿が12字で80行程度のもので終わって情報量が非常に少ない、そんな新聞を誰が買うのかなと思っていた。僕が会社をやめた2014年だったと思うが、プロ野球のキャンプインの2月1日付けの紙面で「日刊スポーツでは30人以上の記者やカメラをキャンプ地に送り、大々的に報じます」みたいな特集を組んでいた。ただでさえ人気のないプロ野球、しかも試合ですらない練習の情報なんて誰がほしいと思うだろうか。「誰も興味を持たない情報を送るために30人からの人を沖縄などに送って、どうするの?」と思っていたが、案の定、売り上げは下がる一方である。

 そんな状況なので、僕は日刊スポーツにいる頃から自分の会社の新聞を含めスポーツ新聞はほとんど読まなかった。プロ野球の誰がホームランを打ったとか、完封したとか、ペナントレースに興味がないから、個人記録に興味があるわけがない。多くの国民も気持ちは同じだろう。芸能の記事は一般紙にはないが、その多くが記事にすると芸能プロダクションからお金をもらえるというタイアップのような記事ばかり。読者を愚弄している。

 そんな紙面を作っているから、売上も右肩下がりなのは頷ける。毎年、新入社員が3人ほど入ってきていたが、誰一人として新聞を定期購読している者はいない。「大学生に1日140円は痛いです」と言って、すべてネットで見ていると言っていた。自社の製品を買ったことがない大学生をよく採用するなと思うが、それが時代なのであろう。そして、若い社員はよく辞めていった。残っているのは40代、50代ばかり。若者の感性など理解できないおじさん、おばさんが日々の紙面をつくっている。僕のような早期退職制度を利用して辞めていく者は年に10人ぐらいいて、足りない分は派遣社員や、60歳で定年になった社員を再雇用してまかなっていると聞く。

 おそらくスポーツ新聞はこの先、単独では生き残れないと思う。一般紙に吸収されて、その特別版みたいな形で細々と生き残るパターンが考えられる。それも時代というもの。僕の出身母体日刊スポーツもいつまで会社が残っていられるかなと考えると、少しばかり寂しい気持ちになる。

8 thoughts on “スポーツ新聞は消滅寸前? 僕が見た内部事情

  1. アバター ブルーインク より:

    参考になりました。自分たちのコンテンツに自信がなくなっていたらおしまいですよね。号外をもらって市民が驚いている風景をTVのニュースでみるが、あれもなつかしい風景を無理やりつくりだしているのかと思います。

    1. matsuda matsuda より:

      ブルーインク様
       コメントをありがとうございます。おっしゃる通り、自分たちの商品に自信がなくなったら、会社は辞め時だと思います。お客様に自信を持って出せない商品を売ってはいけませんよね。
       今の時代、号外も意味があるのかなと思います。スマホのニュースサイトの方が遥かに情報が早いですから。

  2. アバター 伊集院貴仁 より:

    「日刊スポーツ 部数」 で検索してここに来ました。
    スポーツ新聞批判というのはあまり聞いたことがありませんので、
    このブログは新鮮で面白かったです。あまり聞いたことがないのは、
    まともな頭を持った人がまともに批判するような対象じゃない、アウトオブ眼中のゴミだからですかね。
    毎日毎日同じような紙面を作ってて虚しくならないんでしょうかね。
    一面から5面まで野球、それからサッカー、相撲、公営競技、ゴルフ、釣り、エロ記事、芸能・・・
    果たして世の中の人の興味ってそれだけなんでしょうか。
    スポーツってそんなに偉いんでしょうか。
    するスポーツは健康にいいと思いますが、みるスポーツってどこまで意義があるんでしょうか
    観て金を出す人が居たら経済活動として意義がある、それはそうです。
    しかし、観て金を出す人ってどうやって生まれるのでしょうか?
    スポーツ新聞とかがマッチポンプ的に、みるスポーツはみんな興味あるはずだ、だから書く、って
    感じで、こぎつづけてないと倒れる自転車操業みたいなものなんじゃないですか?
    本当はスポーツビジネスにそこまで魅力はないんじゃないですか?
    広い意味でスポーツビジネスの片棒担ぎでしかなく、対象を批判的に書くジャーナリズム精神からは
    ほど遠いですよね。スポーツ新聞つまんねーやって思ったら、もうどうあがいてもスポーツ新聞は立ち直れないですよね
    自転車操業が倒れる日が近いと思います。

    1. matsuda matsuda より:

      >>伊集院貴仁様
       コメントをありがとうございます。
       僕も在職時は何とかしたいなとは思っていましたが、上が全く変える気持ちがなくどうにもなりませんでした。スポーツに関してそれを政治や経済の側面からの分析記事などをしていくなどがあれば読者層を広げられるのではないかと思っていたのですが、会社がそういう気持ちが全くありませんでした。今も昔ながらの「やった、ホームランだ!」みたいな記事に終始している感じです。

       東京五輪が終わったら、いくつかスポーツ新聞がなくなるのではという話も耳にしたことがありますが、遠からず消えゆく媒体だと思います。

      1. アバター 匿名 より:

        返信ありがとうございます。
        松田さんのご専門の競馬でいうと、日経の野元記者などはそういうことをされていますよね。
        あれは日経だからできたのかもしれませんが。
        スポーツ新聞って読者をバカだと思ってますよね。
        それが根底にあるんでしょうね。だから紙面構成も変えないんでしょう。
        低級紙を読むような人はバカに違いないんですが、バカなりに行動様式が
        変わっていってることに気づかない編集局はバカの二乗ですかね。
        それから、ブログにある「芸能記事はタイアップ」の指摘。
        薄々は思っていましたが、やはりそうでしたか。
        よく言っても広告、悪く言えばステマですかね。
        タレント○○が企業●●の広告塔に就任した。→これのどこにニュースバリューがあるのか?
        と思いますが、答えはニュースバリューなんかない、新聞社に金が入るから書いてる、でした。
        マスコミ批判が強いネット時代なので知られたらもっと批判されるべきことだと思いますが、
        芸能記事なんて誰も見てないのでしょう。
        もう一つ、スポーツ新聞で低コストなことです。
        第1回か2回のWBCで日本が優勝したとき、スポーツ新聞の編集局にテレビ取材が入ったのですが
        なんと記者らはテレビで放送されてるのを見て、記事を書いていたのです。
        呆れましたね。講釈師見て来たような嘘を言うと言いますが。
        テレビより情報量が少ないのが明らかな記事を見てきたように書いて売ってるのです。
        だったらせめてテレビ取材は受けるなよ、と思いましたが自分のやってることが
        当たり前になりすぎて恥だとも思わなかったのでしょうね。
        あと最近だといわゆる炎上芸人と呼ばれるウーマン村本とか
        上西小百合とか世の中に批判されることが明らかな人物の些細な発言を
        ことさらに取り上げて記事にしている。批判するために多くの人が見るからPVが稼げるからですね。
        そんなんで稼いだPVに意味はあるのでしょうか。それは記者やスポーツ新聞の手柄なのでしょうか。
        松田様のように頑張って頭を使って書いた記事と同列に並べられてPV数だけで競争
        させられるのでしょうか。スポーツ新聞の低劣化に拍車がかかっている気がします。

        1. matsuda matsuda より:

          >>匿名様
           コメントをありがとうございます。
           テレビを見て書くのは、多分、一般紙も同じだと思いますが、読者を舐めた話ではあります。また、外電が伝えた小さなニュースを、現地報道などをネットで調べ、見てきたかのように書く記事も沢山あります。そんな記事をありがたがる読者なんていないのに、とは会社にいてずっと思っていました。

           スポーツ新聞の衰退は、確かにネットの登場で時代遅れの媒体になったという点がありますが、同時に、読者が望む情報を伝えているのかという情報の質の問題が大きいと思います。そこに気付かず、昔のままの記事を並べていることで衰退に拍車がかかったと思っています。

  3. アバター 伊集院貴仁 より:

    ありがとうございました。先程のコメントも伊集院貴仁でした。
    一般紙もやってるんですね。
    ま、外電なら翻訳することに付加価値があるともいえますが、
    契約してない通信社等のニュースを勝手に翻訳して報道するのって、剽窃じゃないんでしょうか。
    よくわかりませんが。
    スポーツ新聞の内部事情、とても面白いので第二弾を期待しています。

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