テレ東の大ミス 北朝鮮”国母”の写真誤掲載

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 BSテレビ東京の番組内で5月2日、北朝鮮の故金日成主席夫人・金正淑氏の写真として同名の韓国の大統領夫人の写真を掲載するミスがあった。番組ホームページでお詫びと訂正が掲載されているが、これで済むとは思えない。

■北朝鮮の金日成主席夫人に韓国大統領夫人の写真を使用

「NIKKEIプラス10サタデー ニュースの疑問」のHPから

 5月2日放送の「NIKKEIプラス10サタデー ニュースの疑問」は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の家系図を紹介する中で、祖母に当たる金正淑氏の写真として、現在の韓国の文在寅大統領夫人で同姓同名の金正淑氏の写真を使用したフリップを示した。

 北朝鮮の金正淑氏は国母とも呼べる存在だそうで、ある種、神格化された人の写真を、休戦中の敵国の大統領夫人と間違えるとは考えられないミスである。とりあえず番組ホームページでは正しい写真とともにお詫びを掲載しているが、これで終わるとは思えない。

スポーツソウル電子版に掲載された誤って放送されたフリップ

 韓国のスポーツソウル電子版はキム・エギョン海外言論秘書官の話として「当該放送局側が5月4日、文書を通じて謝罪と訂正報道の意思を表明した」「具体的な謝罪表明の方法と訂正については協議中」という内容を伝えた。

 僕も30年近くメディアに在籍したが、韓国・北朝鮮関連の記事を掲載する場合は、常に気をつけるように言われる。

 その理由として、事実関係の間違いや差別的な表現をした場合、関係する団体からの抗議活動が行われ、会社としての責任を強く問われるからと説明される。

 報道では事実関係等には気をつけなければならないのは当たり前のこと。それを会社側は(文句を言ってくる人には特別気をつけろよ)と言っているに等しく、それも報道機関のモラルとしてどうなのかとは思えるが、勤め人としては会社の方針に忠実に仕事をするしかない。

■記者の”辞書”記者ハンドブックに書かれた注意

記者の”辞書”記者ハンドブック(第13版)

 新聞記事を書く場合は「記者ハンドブック」(共同通信社)を参考にするが、韓国・北朝鮮に関しては、かなり詳細に注意がなされている。「差別語、不快用語」の章には以下のような記載がある。

・朝鮮征伐→朝鮮出兵

・帰化→(原則として)国籍取得

・帰化人→渡来人

[注]帰化は朝廷の支配下に入ることを意味する。教科書は中国、朝鮮から古来日本に渡ってきた人を「渡来人」としている。

 また、「外国の地名・人名の書き方」の「中国語・韓国語・朝鮮語」の部分には以下の記載がある。

・朝鮮の略称を「鮮」とはしない。

[注]北鮮→北朝鮮 南鮮→南朝鮮

・朝鮮半島を「韓半島」とは書かない。韓国側当局者の発言を引用する場合も「北韓」は避け、「北側の主張では…」などと工夫する。

(記者ハンドブック第13版 494ページ、716ページから)

 「南朝鮮」は記者ハンドブックでは使用は問題ないとされるが、ほとんど使われることはなく、共同通信も使っていないはずである。

 「帰化」が不使用というのは明らかにおかしいと思うが、会社支給のパソコンの記事作成ソフトで「帰化」と打つとエラーメッセージが出るようになっており、使用できないのである。それぐらい、この問題に関してはメディアは慎重に構えているのである。

■下請け会社がフリップ製作か

 ほとんどのメディアはそのような環境で仕事をしており、テレビ東京も同様であろう。それなのに、このミス。メディアとしては考えられないレベルのミスである。抗議は韓国政府からだけではないはず。国交がないとはいえ北朝鮮も、日本にある団体を通じて抗議をしてくる可能性は十分にある。

 どういう経緯で製作されたのか分からないが、おそらく、下請けの製作会社が作ったものであろう。極めて繊細な問題を孕むフリップであるから、本来なら、放送前にテレビ東京の局員が二重三重にチェックしなければいけない。

 普通に考えれば金日成主席、金正日総書記の写真ですら入手困難であり、まして金日成主席夫人の写真など簡単には手に入らない。それが堂々とカラー写真で掲載されていれば「この写真大丈夫だろうな? どこで手に入れたんだ?」と確認するのが常識である。

 僕が所属していた日刊スポーツも職業差別に関する問題で大きなお詫びを出したことがあるので偉そうなことは言えないが、今回のテレビ東京の仕事ぶりはお粗末としか言いようがない。5月9日の放送でどのような謝罪と説明をするか、今から注目している。

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