はやぶさ2東京新聞社説の非科学的態度

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 東京新聞の12月9日付けの社説を見て、思わず首を捻った。新聞社の顔とも言える社説が文章の基本を無視する形で記載されていたからである。文章の素人が書いたと言われても仕方がないもので、媒体としてお粗末という以外にない。

■はやぶさ2の帰還に関する社説に問題点

小惑星探査機はやぶさ2(JAXAホームページから)

 問題の社説は「はやぶさ2帰還 天体衝突から地球守れ」というタイトルで、無人探査機はやぶさ2が小惑星りゅうぐうで採取した岩のかけらを地球に落としたことに関するものである。

 はやぶさ2が達成したプロジェクトによって新たな知見が得られるかもしれず、また、その後の延長ミッションで「1998KY26」という小天体の探索向かったことに関して、地球に衝突するかもしれない小天体の探査の意義を論じている。

 最後に「国威発揚から発展した宇宙技術が地球防衛につながることは、望ましい変化だ。」と結んでいるのは、何かしら文句をつけないと気が済まない東京新聞など左翼系メディアの特徴と言えるかもしれないが、それはいい。

 問題は別の部分にある。

■断定できる根拠はどこに?

 当該社説には、小天体の地球への衝突の危険性を語る中で、以下のような記述があった。

地球の周囲には、七十万個以上の小天体があり、時々地球に落ちてくる。六千六百万年前には、直径十~十五キロというかなり大きい天体が衝突し、恐竜が絶滅した。同程度のものが落ちたら文明は崩壊する。

 およそ6600万年前に巨大な隕石が地球に衝突し、それに伴う地球規模の寒冷化等によって恐竜が絶滅したという説は有力で、今では支配的な学説になっているようである。多くの人がテレビの科学番組や、書籍、ネット情報等で一度は目にしたことがあるだろう。それ自体を否定しないし、個人的に、その推測は概ね正しいのだろうと感じる。

 しかし、それを確定した事実とするとなると話は別。東京新聞は「かなり大きい天体が衝突し、恐竜が絶滅した。」と断定した。断定するということは、100%確定の事実であり、他の可能性を全て排除する。「隕石衝突説」に関しては異論も存在する。ネットで検索すればいくらでも出てくるが、例えば金沢大学のHPには隕石衝突説に対する批判として「絶滅にかかる時間の相違。衝突クレーターが未確認。」(理工学域自然システム学類地球学コース・大学院自然科学研究家自然システム学選考地球環境学コース)と記載されている。

 また、国立科学博物館 標本資料センター長・コレクションディレクター、分子生物多様性研究資料センター長の真鍋真氏は「恐竜がいなくなった主な原因が隕石だろうというのがコンセンサスになったといっても、デカン高原を作った火山活動が無関係だと思っている研究者もまずいないんです。つまり、両方が関係していたことは間違いなくて…」(恐竜絶滅の謎を解く鍵と、その意味とは)と語っている。

■せめて「恐竜が絶滅したとされている」と書け

 要は巨大な隕石衝突と恐竜の絶滅に因果関係があると多くの科学者が考えるようになったという話であり、確定した事実ではない。真鍋氏も語っているが、この隕石衝突説の初出は1980年。まだ40年しか経っておらず、今後の研究に竢つ部分が少なくない。

 巨大隕石の衝突による文明の崩壊も同様で、必ず崩壊するかどうかなど分からないのであるから、その部分の断定も避けた方がいい。

 こうした事情を考慮すれば、文章で禄を食む者であれば、問題の部分は以下のように書くべきである。例として示す。

×かなり大きい天体が衝突し、恐竜が絶滅した。同程度のものが落ちたら文明は崩壊する。

かなり大きい天体が衝突し、恐竜が絶滅したとされている。同程度のものが落ちたら文明は崩壊するだろう

かなり大きい天体が衝突し、恐竜が絶滅したと一般的には考えられている。同程度のものが落ちたら文明は崩壊するに違いない

 断定するということは他の可能性を排除することであるから、断定できるだけの証拠がある時に限られる。法律の世界で言えば、民事訴訟法で「公知の事実」は証明することを要しないとされており(民事訴訟法179条後段)、それが考え方としては近いと思う。

 東京新聞が日頃トンチンカンな主張をしているのはよく知っているが、報道機関としてせめて正しい文章の書き方をすべき。読者は細かい表現から「この新聞は真実と本人の思い込みとの区別がついていない」と判断するものである。特に科学関係のジャンルの記事であれば、普段の時以上の注意が必要。そう考えると社説の執筆者も、それをチェックする人間も無能と言うしかない。

2 thoughts on “はやぶさ2東京新聞社説の非科学的態度

  1. アバター 山口 秀明 より:

    東京新聞だけでは有りません。地方の新聞の社説もいい加減です。思い込み(断定)が激しいです。もう少し勉強(調べてから)して書いた方が良いと思います。意図的に読者を有る方向へと向かわせようとしているとしか思えません。学術問題でしたが、一方的な断定で書いている事。報道は事実を報じて、憶測や勝手な断定は控えて欲しいと強く思います。まず、依処としているのは共同通信ですから!仕方ありませんね。

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

      >>山口 秀明様

       コメントをありがとうございます。
       地方紙の社説は共同通信が提供らしいですね。地方紙レベルでは社説を書くだけの人的資源がないというのが理由と聞いたことがあります。日本の報道の問題点の多くは共同通信が元凶という主張もよく耳にします。

       ネットの時代でそういったものに国民が「おかしいぞ」と気付いてきたのはいいことだと思っています。

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