擊退中國 躍進する台湾の熱気

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。

 東京五輪バドミントン男子ダブルス決勝で台湾として史上初の同種目の金メダルに輝きました。またメダル授与式では銀メダルの中国代表選手の目前でチャイニーズタイペイ団旗が掲げられ団歌が流されるというオリンピック史上初の光景も出現しました。新記録ラッシュが続く大躍進の台湾代表に人々は大喝采です。

■「麟洋」ペア決勝戦で中国に勝つ

LIHKG「羽毛球男雙打決賽 台灣VS強国」から

 7月31日に行われた東京五輪バドミントン男子ダブルス決勝で台湾の王斉麟・李洋選手の「麟洋」ペアが中国の李俊慧・劉雨辰ペアを2-0のストレートで破り、金メダルを獲得しました。台湾バドミントン界史上初、さらに球技種目で初の金メダルを台湾にもたらした両選手。ウエイトリフティングの郭婞淳選手に続く金メダル獲得(参照:”金滿貫”に台湾熱狂 強すぎた舉重女神)に、台湾ネットユーザーからは以下のような声が上がりました。

見證歷史! (歴史の証人になった!)

這個真的會哭爆 (これには号泣だ)

我們台灣人的驕傲 (台湾人の誇りだ)

辛苦有了代價 (努力した甲斐があったな)

 以上のような祝福の声です(コメントは台湾Yahooニュース、Facebook)。台湾メディアは中国との決戦に勝った両選手の活躍を「擊退中國 (中国を撃退した)」(中國時報 2021年8月1日)「擊敗中國雙塔 (中国のダブルタワーを打ち負かした)」(東森新聞 2021年8月1日)といった見出しとともに報じました。

 またメダル授与式では2位の中国李俊慧・劉雨辰ペアの面前でチャイニーズタイペイ代表団旗が掲げられ、チャイニーズタイペイ代表団歌(通称「國旗歌」)が流されることになりました。これも五輪史上初の光景で、台湾民進党系メディアは「中國選手聽台灣國旗歌  (中国選手が台湾國旗歌を聞いた)」 歴史的瞬間であると伝えています(自由時報 2021年8月1日付け 第3面 及び三立新聞)。

 なお、中国で東京五輪を放送する中央テレビは(案の定)この光景を中継しなかったようです (ETtoday東森新聞網 2021年7月31日)。聞くところでは、中央テレビは決勝戦の最中も麟洋ペアの優勝が濃厚となってきた第2セット後半にスタジオからの放送に切り替え、勝利の瞬間を流さなかったということです。

 このニュースを聞いたとき、都合の悪いことは国民に伝えない中共のやり口に「『一つの中国』に則ればこれもあなたたちのメダルだろ?」との皮肉が思わず頭をよぎりました。表彰式の光景には台湾ネットユーザーから感動の声が寄せられています。

歌詞末有青天白日滿地紅,間接提到國旗 (最後に「青天白日満地紅」の歌詞がある、これは間接的に国旗を表しているんだ)

沒想到在國際體育舞台二度聽到國旗歌 (まさか国際スポーツの舞台で二度も国旗歌が聞けるとは)

我跟著唱了,也跟著哭了 (自分は歌いながら泣いたよ)

國旗歌就是我們的國歌 (国旗歌が我々の国歌なんだ)

 また直立の姿勢で団旗を見上げ団歌を聞く中国の選手、この構図には

感慨萬分 中國選手立正聽國旗歌 (感慨深い 中国の選手が直立で国旗歌を聞いている)

 感無量といった声も挙がっていました(コメントは台湾Yahooニュース批踢踢實業坊)。五輪に政治は無縁と言いますが、台湾にとって、日本と対戦した時と中国と対戦した時とは明らかに状況が異なります。政治と無縁ではないからこそ、五輪は面白いのではないかと思います。

■台湾の勝利に香港も喝采

 さて香港でも今回の快挙に喝采が挙がっています。香港最大のBBS「LIHKG(連登)」には決勝戦開始前から「羽毛球男雙打決賽 台灣VS強国  (バドミントン男子ダブルス決勝 台湾VS強国)」と名付けられたスレッドが建てられ、香港のネットユーザー達は決勝戦の試合経過に熱い視線を送っていました。麟洋ペアの金メダル獲得についてはこのスレッドに多数の書き込みが投稿されています。

恭喜台灣! (台湾おめでとう!)

中華民國萬歲! (中華民国万歳!)

台灣no1!!!香港支持台灣!! (台湾No.1! 香港は台湾を応援しているよ!)

祝賀中國隊喜獲銀牌 (中国の銀メダルおめでとう)

 その多くが「国家安全法」を施行し民主化運動を抑制する中国共産党(と香港政府)への不満を募らせる香港の人々の「一矢報いた」台湾に対する祝福のコメントで埋められています(LIHKG「羽毛球男雙打決賽 台灣VS強国)。

■翌日バドミントン女王が中国と決戦 アクセス集中で観戦困難に

 男子ダブルス快挙の余韻が冷めない翌8月1日、世界ランキング1位載資㯋選手出場の女子シングル決勝戦が行われました。対戦相手は陳雨菲選手(中国)。2日連続対中国の決勝戦、そしてバドミントン女王の出場。新聞には「小載接棒今晚槍金牌  (載ちゃんがラケットを繋ぎ今夜金メダルを狙う)」の見出しが躍り、テレビやインターネットでは載資㯋選手の特集が組まれました。

 2日連続の金メダルなるか、当日晩に行われる決勝戦を前に人々の期待度は高まる一方でした。私は台湾時間8時20分決勝戦開始に合わせて約5分前にオリンピック専用ライブストリーミングサイトへ接続しようとしたのですが、アクセスが集中したためかなかなか繋がらず、ようやく映像が表示されたときにはすでに第1セットが始まっていました。

 このサイトは台湾最大手の電信会社中華電信の有料オリンピック専用チャンネルで普段から観戦に利用していたのですが、今開催初めて「渋滞」に遭遇しました。恐らく決勝戦に合わせて当日駆け込みでチャンネル登録、観戦に臨んだ人が相当数いたのだと思います。

 試合は第3セットまでもつれた接戦の結果陳雨菲選手が勝利、2日連続の対中国金メダルは成りませんでした。しかし載資㯋選手にとっては初のメダル獲得、ネットユーザーは彼女の健闘を讃えていました。

■台湾選手団の大躍進

台湾代表選手の活躍は連日トップニュース(提供・葛西健二)

 さて8月1日は載資㯋選手の他に「鞍馬王子 (あん馬の王子)」で親しまれる李智凱が体操男子あん馬で体操選手として初の銀メダル獲得、ゴルフ男子で潘政琮選手が台湾ゴルフ界初の銅メダル獲得の新記録を生み出しました。さらに1日で銀2,銅1は五輪史上初、そして8月1日までの台湾メダル数は金2,銀4,銅4、過去最多の2004年アテネオリンピックの5個を大きく上回り、10個となりました。

 新記録が続出する東京五輪に(他に柔道界初の銀メダル楊勇緯選手、史上初の国際競技大会グランドスラムを達成した女子ウエイトリフティングの郭婞淳選手など)、台湾の人々は

今年奧運 表現太棒啦! (今年のオリンピックは 素晴らしいパフォーマンスだ)

台灣運動元年 (台湾スポーツ元年だ)

創紀錄元年 (新記録創出元年だ)

 などと、喜びもひとしおです(コメントは台湾Yahooニュース批踢踢實業坊)。

 8月5日には東京五輪で追加種目として実施される空手の女子55キロ級にアジア空手道選手権三大会(2015年、2017年、2018年)の覇者、文姿云選手が出場します。大会は残り6日間、今後どのような台湾新記録が飛び出すのでしょうか。

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