中居氏セクハラ認定の欺瞞 ”革命裁判”か

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 元タレント・中居正広氏と元フジテレビアナウンサー女性Aさんとのトラブルに関する第三者委員会の報告書に関するレポートを続ける。週刊文春でも報じられた2021年12月18日の「スイートルームの会」において、中居氏はセクシャルハラスメントを行ったと事実認定された。自宅マンションでの「性暴力」ではなく、「セクシャルハラスメント」と認定したのは、何らかの意図があるのではないかと思わされる。

◾️スイートルームに4人

報告書を元にしたスイートルームの会(作成・」松田隆)

 第三者委員会(以下、第三者委)が公表した報告書は、2023年6月2日、中居氏の自宅マンションでの女性Aとの間の性的行為について「性暴力」と認定したが、それとは別の案件でセクシャルハラスメントがあったとしている。それが週刊文春でも報じられた2021年12月18日の「スイートルームの会」でのこと(参照・中居氏”新たな被害者報道”問題の根源フジの体質)。

 以下、報告書の内容に沿って説明すると外資系ホテルαのスイートルームでの会合が中居氏と親しいB氏によって企画された。参加は中居氏とタレントU氏、女性アナウンサーのQ氏、R氏、S氏、そして女性A、企画したB氏など10名で18時にはスイートルームのリビングで宴会が始まった。22時頃に中居氏がB氏らに退出するように働きかけた。

 残ったのは中居氏、タレントU氏と女性アナウンサーのQ氏とR氏である。4人は向かい合うソファーで中居氏とQ氏、タレントU氏とR氏がそれぞれ同じソファーに座った。やがてタレントU氏とR氏が席を立ち、リビングには中居氏と横に座るQ氏が残された。

Q氏の証言内容:Q氏は、タレントU氏及びR氏が離席している間、中居氏と二人だけになる時間帯があり、その間中居氏において、Q氏の膝や肩、鎖骨付近に手を触れる、Q氏の顔に自身の顔を近づける等の行動があったため、中居氏の機嫌を損ねないように手をどけたり、身体を離すなどしながら会話を続けることでやりすごした旨述べる。(報告書p146)

中居氏の証言内容:Q氏がこの飲み会の場にいたかどうかすら覚えておらず、まして横にいた女性(Q氏)の身体に触ったことなどはない、と抽象的に述べて上記を否定する。(同)

 タレントU氏とR氏はともに第三者委員会のヒアリングを断った。ヒアリングに応じたのは中居氏とQ氏のみ。密室の中の2人の意見が180度異なる状況が生じている。

◾️週刊文春報道のスイートルームの会

 このスイートルームの会については週刊文春2025年1月23日号で、第三者委からのヒアリングを拒否したR氏が「水谷愛子」という仮名で詳細を語っている。R氏=水谷愛子アナは、ソファに座っている時にタレントU氏(文春記事内では単にタレント)が密着して太ももを触ってきたために一時、トイレに避難。しばらくしてリビングに戻ると、寝室に移動したタレントU氏が全裸で手招きをしており、「私、こういうのできない。無理です!」と半泣きで拒否した。

 本来であれば、この事例も報告書(公表版)の中で事実認定すべきことのように思われるが、R氏=水谷愛子アナとタレントU氏ともにヒアリングを拒否したために、第三者委は、そうした事実を正確に把握できなかったのかもしれない。

 このR氏=水谷愛子アナが、この時の中居氏の様子を週刊文春に語っている。

★「…中居さんは自分で持参した焼酎をぐびぐび飲み始め、『俺、凄い飲んじゃうんだよ。止まらなくて最近ヤバい。一晩で一本飲んじゃうんだよね』と上機嫌だった」

★「私たち女性アナに対して、マウントを取るようなことを言っていました。イメージと違って俺様タイプなんだ、と。…」

★(同僚たちが部屋を出ていき4人が残された時に)「向かいのソファを見ると、中居さんは完全にD子(=報告書ではQ氏)をロックオンし、口説いていた。」

★(タレントU氏が寝室から全裸で手招きをした後、R氏=水谷愛子アナはリビングに戻り)「そのうちタレント(U氏)が服を着てリビングに戻ってきて、また四人で会話をすることになった。」(以上、週刊文春2025年1月23日号 「中居正広 新たな被害者が爆弾告白「私もAさんに”献上”されました」から)

◾️対立する両者の主張

上は週刊文春2025年1月23日号

 R氏=水谷愛子アナは中居氏がQ氏に触った、セクハラをしていたとは言っていない。この文春が出た後にQ氏が第三者委からヒアリングを受け、2人になった時にセクハラを受けたとしており、これはR氏=水谷愛子アナの証言と整合性がとれる。

 2人きりになった時間にセクハラと呼べる行為が行われたかについては、意見が対立する中、第三者委は以下のようにして中居氏のセクハラを認定した。

 まず、中居氏の証言の信用性については以下のように評価する。

 「中居氏は、Q氏がこの飲み会の場にいたかどうかすら覚えておらず、まして横にいた女性の身体に触ったことなどはない、と抽象的に述べて上記を否定するが、そもそも、中居氏としては、この時の記憶が全体的に薄いとのことで曖昧な回答に終始しているほか、客観的な証拠や他者のヒアリング結果から認定できる事実と異なる内容を供述する部分もあり、信用性に欠ける。」

 続いてQ氏について。

 「一方、Q氏の供述は全体的に具体性が高く、一貫性があり、4名が部屋に残された前後の状況に関する供述内容についても、室外にいた社員とのLINEのやりとりの内容等の客観的証拠にも一致しており、相対的に信用性が高い。」

 以上から結論を導く。

 「したがって、当委員会としては、Q氏の供述内容どおりの事実があったことを認める。当該事実はQ氏の意に反する性的な言動であることから『セクシュアルハラスメント』と認められる。」(以上、報告書p146)

◾️自由心証主義

 密室の出来事で両者の証言が対立する中、一方の意見を信用性が高いと判断できたのは第三者委が「自由心証により事実認定を行う。」(報告書p27注6)としている点に原因が求められる。この点は少々、硬い話になるが、しばし、お付き合い願いたい。

 この自由心証は民事訴訟上の用語で、証拠の選び方や判断のしかたを、裁判官の経験や知識に任せる考え方。その中心となるのは「(1)証拠方法の無制限、(2)経験則の取捨選択の自由の2つであるが、実定法上は(民事訴訟法)247条から、(3)弁論の全趣旨のしん酌も含められる。」(基礎からわかる民事訴訟法初版 和田吉弘 商事法務p293)とされる。

 これは証拠方法や経験則を限定する法定証拠主義と対立する概念で、要は、自分たちが証拠方法などを含めて自由に判断していいという方法であるから、このように対立する証言の場合、一方の証言の信用性が高いとして事実認定しても日本弁護士連合会が定めた「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」には反しないと胸を張れる。

 もっとも、この自由心証主義はリスクが伴う。「裁判官の質が信頼できない時代であれば事実の認定方法についても裁判官を拘束する必要があるが、現在では裁判官の資質が向上したため裁判官の自由心証に任せても問題がないと考えられた…」(上記の和田、p296)。つまり、質の良い裁判官なら自由心証主義でも誤った判断はしないが、質の良くない裁判官では誤った判断がされ得るとの懸念である。

 第三者委は裁判官ではない弁護士が事実認定を行う。裁判官の経験がない弁護士が、通常の業務では行わない事実認定を自由心証主義で行うこと自体、大きなリスクと言える。しかも、中居氏と女性Aの行為をWHOの規定に当てはめて「性暴力」と認定するような政治的意図を有しているとも思える弁護士が、質の良い裁判官だから行える自由心証主義による事実認定をすることが適切なのかは疑問が残る。

 この件では、フジテレビの男性社員は今後、女性社員を含む会合では十分に気を使わないといけないということは付け加えておかないといけない。酔ってフラついて顔を女性の顔に近づけたらセクハラ認定される可能性がある。我が身が大事なら、女性が参加する会合には絶対に出ないと決めておいた方がいい。

◾️性暴力ではなくセクハラ認定

 実は重要なのは上記の点ではない。仮に、Q氏が言うような行為を中居氏が行なっていたとしても、「セクシャルハラスメント」と事実認定することは大きな問題を孕む。

 中居氏が自宅マンションで女性Aと性的行為を行ったことを、第三者委は「性暴力」とした。第三者委の言う性暴力の定義は「強制力を用いたあらゆる性的な行為、性的な行為を求める試み、望まない性的な発言や誘い、売春、その他個人の性に向けられた行為…」(世界保健機構(WHO)「World Report on Violence and Health」2002年)である。

 そうすると、中居氏のセクハラとされた行為は相手の意に反する性的な言動というのであるから、上記に該当するのは間違いない。そうであれば、スイートルームの会での言動も性暴力と事実認定することができるし、そうすべき。ところが第三者委は「セクシャルハラスメント」とした。

 この恣意的な認定こそが、第三者委の偏向を示している証左と言っても過言ではない。つまり、ここでもWHOの定義を持ち出して「性暴力」とすれば、中居氏は2度の性暴力を行ったことになってしまう。そうなれば、メディアも「性暴力は2度」と報じる。読者、視聴者は1つは自宅マンションでの女性Aとの行為は分かるが、もう1つはどんな行為だったのか注目するに違いない。

 そして、その行為とはスイートルームの会での「Q氏の膝や肩、鎖骨付近に手を触れる、Q氏の顔に自身の顔を近づける等の行動」と知ることになる。(え、これが性暴力?)と疑問に感じ、「そもそも性暴力とは有形力の行使である暴力よりも遥かに広い範囲であり、売春すらも性暴力になる、中居氏は暴力は振るっていないと言ってたが、なるほど、性暴力と暴力は違うんだな」と第三者委の中居氏が自宅マンションで女性Aに性暴力を行ったと認定した”手品”のタネがバレてしまう。

 おそらく、そうしたことから性暴力の濫発を避け、セクハラと認定したのではないか。事実認定が怪しい上に、その評価が自宅マンションでの「性暴力」認定をより効果的なものとするために恣意的に行われているとの疑いは払拭できない。自宅マンションでも、スイートルームでも、中居氏のやったことは、第三者委に言わせれば同じ性暴力。それを自宅マンションの方だけ性暴力として、スイートルームでも性暴力とできるのに、セクハラとした理由を明らかにしていただきたいものである。

◾️茶番でなければ革命裁判

写真はイメージ

 これが第三者委の報告書の内容、中居氏の行為の事実認定と評価である。多くの国民はこの仕掛けをどう感じるのであろうか。

 弁護人なし、上訴権なし、原告(検察官)が裁判官を兼ねて、裁判官は自由心証主義で判断。その裁判官役が、別稿で触れる予定であるが、特定の価値観を有するNGOの影響を強く受けているとあれば、目をつけられた者に逃れる術はない。待っているのはジャコバン派に狙われたマリー・アントワネットと同様の運命である。

 「性暴力」の件も含め、中居氏に対する第三者委の事実認定、評価への筆者の率直な感想は”茶番”といったところか。言葉が過ぎるようなら、革命裁判に変えてもいい。

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