中居氏に性暴力の汚名着せたのは誰か HRNの影響力

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 元タレント・中居正広氏による元フジテレビアナウンサーの女性Aさんに性暴力があったと認定した第三者委員会は、特定の政治的勢力の影響を受けていることが推察される。刑法の不同意性交罪の創設にも深く関わった国際人権NGOのヒューマンライツ・ナウ(新倉修理事長)は、第三者委員会で中心的な役割を果たしている。その団体としての考え、行動をたどっていくと「性暴力」認定は既定路線だったのではと思わされる。

◾️事実認定の権限握る委員3人

写真はイメージ

 フジテレビと中居氏の問題で第三者委員会(以下、フジ第三者委)が設置されたが、一般に第三者委については日本弁護士連合会がガイドラインを作成しており、それに準拠して実際の設置や運営がなされる。

 第三者委は通常弁護士が委員として任命され、その数は原則3人以上。委員は当該事案に関連する法令の素養があり、内部統制、コンプライアンス、ガバナンス等、企業組織論に精通した者でなければならず、「事実認定の権限は委員会に属する」(「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」策定にあたって・同第1(2)事実認定)とされている。そのため、フジテレビと中居氏の問題について事実認定をする権限はフジ第三者委の3人の委員に属していることになる。

 第三者委が出す評価や原因分析については「法的評価のみにとらわれることなく、自主規制機関の規則やガイドライン等も参考にしつつ、ステークホルダーの視点に立った事実評価、原因分析を行う」(同・第1(3)①)とされている。このことからフジ第三者委は世界保健機構(WHO)の「World Report on Violence and Health」(2002年)の「性暴力」の定義を中居氏の事案に当てはめたものと思われる。

 抽象的な表現をすれば、日本の法廷では法令と条約などのもの差しで事案を測るが、第三者委では自分たちに都合のいいもの差しを持ってきて、事案を”測定”できる。男性の行為を不同意性交、不同意わいせつとは認定できなくても、海外の物差しを持ってきて「性暴力」と結論付けることが可能なシステムになっている。

 委員の選定方法はガイドラインに明記されていない。ただし、「第三者委員会は、依頼の形式にかかわらず、企業等から独立した立場で企業等のステークホルダーのために、中立・公正で客観的な調査を行う。」(同第2)とある。フジテレビの当時の港浩一社長が当初、独自の調査委員会を設置しようとした際に(お手盛りの調査で済ませる気か)との批判が殺到、後に第三者委設置に切り替えた経緯を考えれば、フジテレビ側が委員を指名するとは考えにくい。おそらく、日弁連から推薦のような形で決まったものと思われる。

◾️ヒューマンライツ・ナウとは

 ここでフジ第三者委の3人の委員を紹介する。

委員長・竹内朗弁護士(プロアクト法律事務所)

委員・五味祐子弁護士(国広総合法律事務所)

委員・山口利昭弁護士(山口利昭法律事務所 ※前任の寺田昌弘氏から引き継ぎ)

 竹内氏は冒頭紹介したヒューマンライツ・ナウ(以下、HRN)の運営顧問であり(HRN・団体概要)、五味氏は所属事務所の所長弁護士の国広正氏とともにHRNの講師としてホームページ上で紹介されている(HRN・ビジネスと人権)。つまり、フジ第三者委で事実認定をする権限を持つ3人のうち2人はHRNの関係者、HRNの考えに共鳴する人物で占められていると言っていい。そうなると事実認定も、それに基づく評価も、HRNの考えが反映されたものになることは容易に想像がつく。ちなみに主任調査担当弁護士4人のうち2人は竹内弁護士と同じプロアクト法律事務所で、うち1人はHRNの運営委員を務めている。

写真はイメージ

 それでは、HRNとはどのような団体なのか。活動内容は定款第4条で「(1)人権の擁護又は平和の推進を図る活動 (2)国際協力の活動 (3)以上の活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動」とされている(HRN・定款)。

 実際の活動では不同意性交等罪の創設への働きかけがある。2018年に報告書「#MeTooを法律へ性犯罪に関する各国法制度調査報告書」を公表して法整備の実現を呼びかけた(HRN・【報告書】#MeTooを法律へ 性犯罪に関する各国法制度調査報告書)。2023年7月13日に施行された際には、ウェビナーを開催している。

 その告知の中で「『同意のない性交は犯罪』であることが法律名にも明確に示されたことで、被害者の落ち度が責められる文化が終わり、加害者がきちんと罰せられる世の中へとシフトしていくことが今後に期待されます。」(HRN・みんなで獲得した「不同意性交等罪」~次の一歩へ~)と明記されている。

 HRNと親和性の高い人物として、TBS元記者から性的被害を受けたとする伊藤詩織氏がいる。2018年6月に「メディアで起き始めた#Me Too  声をあげられる社会をつくるために」というイベントが開催され、そこにゲストとして参加した(HRN・【イベント報告】6月8日(金) メディアで起き始めた#MeToo 声をあげられる社会をつくるために)。

 インタビューでは伊藤氏の不同意性交等罪に関する考えが語られている。「この背景には、同意のない性交を罰する法律がないという問題があります。著しい暴行や脅迫を被害者側が証明できなければ、強制性交罪が成立しないとされており、恐怖で体が動かなかった場合など、加害者を罪に問えなくなってしまいます。『同意のない性交は暴力であり、犯罪だ』と法律に明記することが、被害を訴えるハードルを下げることにつながります。」(琉球新報・伊藤詩織さんインタビュー「同意のない性交は犯罪、法に明記を」 被害認定の判決が確定、5年間とこれから)。

◾️HRNの考え方

 伊藤詩織氏の話に代表されるように、不同意性交等罪の創設を求めていたHRNなどの人々は、基本的に「同意のない性交は暴力であり、犯罪」という認識と見受けられる。

 フジ第三者委の過半数を構成する、HRNと関係する2人の弁護士(竹内、五味の両氏)の個人的な思想・信条までは分からないが、おそらく、それに近いものであったと推察される。

 中居氏の弁護士は第三者委の委員の顔ぶれを見れば、上記の事情は容易に察知できる。仮に守秘義務を解除し、中居氏と女性Aの間で発生したことが調査の対象とされたら、その内容が当サイトが推理したような「少なくとも中居氏は性的行為をする際に暴力は用いていなかったのは間違いなく、さらに同意がなかったとする女性Aとは異なる受け止め方をしていた、即ち『女性Aの同意を得て性的行為をしたと認識している』」(参照・フジ第三者委による中居氏の「性暴力」認定に疑問というものであったとしても、同意のない性交なので犯罪と断じられる可能性は十分にある。

 実際に報告書では、女性Aが中居氏の自宅マンションを訪れたのは「最終的に同氏所有のマンションで 2 人で食事することに同意したが、この同意は、業務上の関係において 2 人で食事するという限度での同意であって、それ以上のものではない。加えて、この同意が真意に基づくものであったとはいえない。」(報告書p52)と認定している。

 そうなれば中居氏の行為は「改正刑法施行直前であったが、現在であれば不同意性交等罪にあたる犯罪である」といった、おどろおどろしい表現の報告がなされた可能性がある。それを考えれば、中居氏の弁護士は「絶対に守秘義務を解除すべきではない」と中居氏に迫るであろう。

 こうした問題で、女性のバックに人権団体がつくと企業や男性の側にすれば厄介なことになったと受け止められがちである。フジテレビも問題発生後、女性Aに政治的な団体からの支援が行われているのではないかと警戒していた事実が報告書に記載されている。F氏(アナウンス室部長、佐々木恭子氏)が「G氏(編成局長)から、女性A本人と直接面会できないか、どういった支援団体とつながっているか知りたいとして、女性A本人とやりとりしてほしいとの指示がメールでなされた。」(報告書p38)との記載である。結局この時はF氏が諸般の事情を考慮し、指示された確認をせずに終わっている。フジテレビが警戒した団体の1つにHRNがあった可能性は否定できない。

 守秘義務が解除されなかったのは、これらの理由もあると筆者は考えている。その結果、フジ第三者委は不同意性交等罪とは断じられなくなったが(事案の核心部分が明らかにされないのに刑事責任ありの認定はさすがに無理がある)、とはいえ民法の不法行為ではアピールが弱く、結果、WHOの規定を持ち出して「性暴力である」という認定に落ち着いたのではないか。

◾️裁判と第三者委の違い

 以上のようにフジ第三者委の政治的中立性には疑問符がつく。これは弁護士が委員になるのが原則の第三者委の制度が持つ宿痾のようなものと言える。第三者委が常に公明正大、公平公正と考えるのは控えた方がいい。弁護士は政治活動は禁じられておらず、政党のトップが弁護士であることも少なくない(社民党の福島みずほ党首など)。

 これが裁判であれば、裁判官の積極的な政治活動は禁止されており(裁判所法52条1号後段)、違反すれば懲戒される(同法49条)。実際にそのことで戒告処分になった判事補の事件も発生している(参照・最高裁大法廷決定平成10.12.1)。

 裁判官にも政治的信条はあるが、職務を行う際には「その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」(憲法76条3項)とされ、良心以外の考え、思い、信条に従って職を行うことは許されない。

 以上の点から筆者は(1)第三者委が裁判のようなレベルの公平公正さを有しているとは言えないこと、(2)フジ第三者委の報告書は全体的にHRNの主張が反映されていること、(3)中居氏が「性暴力で重大な人権侵害」を行った人物と事実認定されたことにHRNが果たした役割は(間接的とは言え)小さくないこと、以上の3点を考えている。

◾️筆者とHRN あさからぬ因縁

青山学院大学(撮影・松田隆)

 最後に、筆者とHRNとの関わりを明らかにしておく。HRNの新倉修理事長には筆者が青山学院大学大学院法務研究科在籍時に授業を受け持っていただいた。また、1学年上の学生の音頭で新倉先生を招き、3人で忘年会を行ったこともあり公私共にお世話になった。

 一方で、伊藤詩織氏の事件(参照・伊藤詩織氏関連)や、札幌の元教師の復職を求める裁判等(参照・免職教師の叫び札幌・元教師の戦い 免職処分取消訴訟)では、HRNとは敵対に近い関係にあった。

 それらの意味では、あさからぬ因縁と言えるが、この記事を書くにあたってはそのような関係は一切、考慮していない。事実の摘示と、それに基づく推察を述べており、何の利害関係も反映していないことを明記しておく。

    "中居氏に性暴力の汚名着せたのは誰か HRNの影響力"に3件のコメントがあります

    1. あき より:

      この案件にヒューマンライツナウがA子さんの代理人弁護士として最初から関わっていた事はハッキリしていますが第三者委員会だけでなく格付け委員会もヒューマンライツナウのメンバーで構成されている事も問題だと思います。果たしてこれで公平公正な格付けと判断できるでしょうか?さらに報告書で2002年の定義をわざわざ採用するならフジの社員やスポンサー、総務省のセクハラ認定された案件も性暴力として追及するべきだと思います。更にこの裏には最近急にフジの株買い付けを行った旧村上ファンドとヒューマンライツナウの繋がりも囁かれています。その辺りも追及していただきたいです。

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        貴重な情報をありがとうございます。びっくりな内容もありますが、取材を続けていこうと思います。

        旧村上ファンドはとんでもない方向から弾が飛んできたな、という印象です。しかし、あり得る話のようにも感じます。

    2. 白狐 より:

      この事件。いかんせん核心部分がわからないし、確かな情報がわからないので伊藤詩織事件以上にコメントしづらい。
      ふたりになるのを知らなかったと思っていたら、中居氏は確認していたらしいし、事後にも、お礼メールをしたのかしないのかよくわからない。新卒でもなく、アナウンサー業界を知らぬわけでもない女性が男性の部屋でふたりになるのをわかっていったとしたら、業務の一部であろうと、なかろうと相手がどんな権力者であろうとリスクを考えないというのは、どうかと思う。
      書籍の出版があって、したがこれも核心部分をオブラートにくるんでいんので論評しづらくPTSD体験記のようになっている、わからない状態でコメントすればセカンドレイプと言われる。9000万を前提で考えていると双方がそんなにもらってない出してないなどという。
      ヒューマンライツナウがかかわっているという時点で、なるほどと思うところもある。それしかいえない。

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