札幌市教委が情報隠し 教師免職絡みの文書非公開(1)

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 札幌市教委が2021年1月に免職した教師に絡む当サイトの公文書公開請求を拒否、4年前には開示している文書を存在するかどうかも答えないという二重基準を示した。しかも一度は公文書の存在を認めながら、後日「あれは誤記でした」と送付してくるお粗末な対応に終始した。

◾️一方に公開、当サイトには非公開

過去に開示された文書を”隠蔽”

 札幌市の中学教師だった鈴木浩氏(仮名)が2021年1月に、28年前に教え子だった石田郁子氏に対して非違行為をしたとして免職された事件について、当サイトでは2021年6月から継続的に報じている(参照・免職教師の叫び札幌・元教師の戦い 免職処分取消訴訟)。

 この事件に関し、11月9日付けで札幌市情報公開条例に基づく公文書公開請求を行なった。通常は2週間で開示の可否が決まるが、11月20日付けで公開決定等期間延長の通知を受け、最終的に12月23日付けで公文書公開請求拒否通知書が送られた。

 この公開拒否は重大な問題を孕んでいる。というのも、4年前には他のジャーナリストの公開請求によって文書が開示されており、当サイトでは「それと同じ文書を開示してください」と指定したからである。全く同じ文書の開示をめぐり、4年前は認められたものが今回は当該文書が存在するかどうかも答えずに開示を拒否。一度は公文書の存在を認め、それが複雑なので時間がかかるから通知を延期すると通知してきたにもかかわらず、一転して公文書が存在するかどうかも明らかにせずに拒否するとしたのである。

 こうした行政の手法は、札幌市情報公開条例の理念に反する。

【札幌市情報公開条例 1条】

この条例は、日本国憲法が保障する住民自治の理念にのっとり、市民の知る権利を具体化するため、公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに、情報公開の総合的推進に関し必要な事項を定め、もって市政について市民に説明する市の責任が全うされるようにし、市民の参加と監視の下にある公正で民主的な市政の発展に寄与することを目的とする。

 条例が「公正で民主的な市政の発展に寄与することを目的」としているとしながら、一方には公開し、他方には公開どころか文書の存否すら答えないことは公正な行政とは言えないのは明らかである。

◾️当時の教職担当部長のセリフ

 ここで情報開示請求にかかる部分を説明しよう。当サイトが求めた情報は、石田郁子氏が市教委に鈴木浩氏から中学3年時よりわいせつな行為を受けていたと申し出て、それに対して、市教委が鈴木氏に事情聴取を行ったことに関するもの。

 鈴木氏は一貫してそのような行為はしていないとしており、現在、札幌地裁に係属中の免職処分の取消請求訴訟でもその点を強調している。石田氏の申し出に対して市教委も当初は信憑性がないと判断していたようで、2016年6月24日の3回目の事情聴取で当時の檜田英樹教職担当部長は「わいせつ行為がなければ懲戒処分は行わない、一度出した決定は変えない。7月には直接、石田氏に会って、処分はしないことを伝えてきます」と鈴木氏に語った。

 その後、実際に檜田部長は石田氏に鈴木氏を処分しないと伝えている。ところが、鈴木氏が2021年1月に免職され、同年3月に地方公務員法49条の2第1項の規定に基づき、札幌市人事委員会に免職処分の取消しの裁決を求める審査請求を行なうと、檜田氏は前言を翻す。

 同年7月19日付けの再答弁書で「『わいせつ行為がなければ懲戒処分は行わない、一度出した決定は変えない。7月には私が直接、石田氏に会って、処分はしないことを伝えてきます。』との発言をした事実はない。」と全面的に否定した。

 鈴木氏側は事情聴取の場で録音することの了承を求められていたため、その時の録音の提出を求めたところ、市教委は「録音していない」とし、さらに「その時に市教委から出された事情聴取の概要なるものでは、鈴木氏が言ったことも聞いたこともない虚偽が並べ立てられていた」(鈴木氏)とのことである(以上、「黒塗り報告書」を謝罪 札幌市教育長の悪評)。

◾️2020年公開の記事が示すもの

 審査請求では以上のような経緯があり、市教委側は「言ってない」「録音してない」「(詳細な)記録はない」という、にわかには信じ難い言い分をすることとなり、真相は藪の中となっていた。

 2024年11月、当サイトは、たまたま調査報道ポータルサイト「フロントラインプレス」の高木哲哉氏の記事に、これに関することが掲載されていることに気が付いた。今でも全文はYahoo!で読むことができる。注目すべきは以下の点である。

 「石田さんの要求を受けた後、札幌市教委は計3回、教諭から事情を聴いている。開示請求によって得たそれらの関連文書によると、教諭は聴取に対し、『高校時代に進路相談やドライブに行ったことはあるが、性的な接触はない。性行為があったとしても大学以降のこと』と述べたという。…結局、市教委は教諭を懲戒処分にしなかった。なぜだろうか。…その文書によると、…『わいせつ行為を事実として認定することはできない』『(筆者註・石田さん側から)提示された資料を基に懲戒処分を行い、教諭から取り消し請求をされると裁量権の逸脱・濫用であると判断され、市教委が敗訴する』という考えだった。」(Yahoo!・「沈黙して生きていくことに耐えられない」教師による性被害を彼女が「実名告発」する理由

鈴木浩氏(2022年8月撮影)

 この文章を読む限り、高木氏は事情聴取の内容が比較的細かに書いてある文書を見たことがうかがえ、しかも、その文書は市教委が懲戒処分を行ったら、取り消し請求を提起された場合に敗訴するという考えを持っていたことが分かる内容であったのは間違いない。

 当該記事のフロントラインプレスでのタイムスタンプは2020年2月12日で、鈴木氏が免職される11か月ほど前。

 既に石田氏は札幌市と鈴木氏に対して損害賠償を求める訴えを提起し、一審で請求を棄却され(判決は2019年8月23日)、控訴審を戦っていた時期である。

(2)へ続く

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