バーレーンは新型コロナで”準封鎖”状態

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海島 健🇯🇵 @バーレーン Bahrain🇧🇭

海島 健🇯🇵 @バーレーン Bahrain🇧🇭

東京都出身。一橋大学社会学部卒業。1997年からバーレーンに在住し、国立バーレーン大学で日本語の講師を務める。2006年からスポーツ新聞のウエブサイトでサッカーのコラムを執筆。

 新型コロナウイルスの猛威はバーレーン王国にも及んでいます。3月22日に予定されていたF1バーレーンGPは延期となり、学校は通知があるまで無期限の休校。そのような中、国立バーレーン大学ではオンライン授業を開始しました。中東の島国の近況をお伝えします。

■レストランは持ち帰りのみ、5人以上の集会禁止

開店休業状態のバーレーンのシティーセンター(ショッピングモール:撮影・海島健)

 2月24日にバーレーン初の感染者が判明してから政府は迅速な対応を行い、当然、国民に対する行動の制約も多くなってきました。3月下旬で”準封鎖”と呼んでも差し支えない状態です。レストランはテイクアウェイのみ、5人以上の集会は禁止、原則として他人とは距離を取るといった具合です。個人的な散歩などはできるのが、せめてもの救いでしょう。

 2月26日には、すべての教育機関の2週間休校が決定しました。この休校期間はさらに3週間延長。3月下旬の現在は「通知があるまで閉鎖=学習機会なし」とされており、夏までこの状態が続くであろうと言われています。

 私が勤務するバーレーン大学では、後期が2月11日にスタートしました。その時点では新型コロナウイルスの騒ぎは、まだ他国でのできごと、早い話が他人事でした。しかし、2万5000人ほどの学生が在籍する大規模な大学で、ウイルスと無縁のまま6月まで過ごせるとは思えません。

 案の定、後期開始から2週間ほど経った2月26日に休校となりました。もっとも最高学府、しかも同国を代表する大学と言っていいバーレーン大学が開店休業状態をいつまでも続けるわけにはいきません。3月第2週に「授業のオンライン化に向けた準備を進めよ。やり方がわからない先生は、講習会に出ること」という通知が来ました。最高学府で学ぶ学生には教育を続けなければならないという、国の強い意思が感じられるお達しが出たのです。

■オンライン授業に備え大学が教員に講習実施

海島健氏が教えるバーレーン大学の学生(掲載許可取得済み)

 オンライン授業開始に備え、大学の教員はEラーニングセンターで3時間あまりの講習を受けました。使用したプラットフォームはBlackboardというものですが、正直、良く分かりません。自宅に戻って復習を兼ねて習った通りにプラットフォームを動かそうとしても、授業の立ち上げ画面にたどり着くことさえできません。

 そこでオフィスが近いヤセル先生に教えを請うことにしました。優しいエジプト人教員は不慣れな日本人教員に対して嫌な顔ひとつせず、丁寧に教えてくれました。その途中でシステム上、私の担当する日本語コースが登録されてないことも判明。慌てて登録作業を済ませました。

 新型コロナウイルス対策が急だったこともあり、バーレーン大学としてはとにかく学生が授業を受けられるようにしようという考えだったのでしょう。多少の不手際は仕方がないと思うしかありません。

■元教え子がサポート役で3月17日からオンライン授業開始

 初のオンライン授業は3月17日。大学の日本語センターに出勤し、そこから発信しました。システム内のメモ機能に頼らなくてもいいように、絵カードや教室のホワイトボードを使うことにしました。いつもの講義を、学生は自宅で聴いているという状況です。

 初日は不安な点が多いため、同僚で元教え子のインド人の女性にサポートしてもらう事としました。システムから大きく外れた行動を取った時に指摘してもらうこと、席に着いて学生役をしてもらうことを頼みました。おかげで、学生がシステム内で挙手をしていたり、blackboardのMessengerを使って質問したりした時に、ドタバタしながらも対応できました。

 困ったのは、学生たちが全員、画面上に顔を出さないことです。会話の授業なので表情を見ながらレッスンを進めていきたいところなのですが、仕方がありません。それがバーレーンのグループのオンライン授業文化という事のようです。

■改良を重ねつつ進化するオンライン授業

学生の姿がないバーレーン大学構内(撮影・海島健)

 初めての授業から2週間、改良を重ねながら、今日までやってきました。今では以下のようなこともできるようになりました。

(1)学生を指名して答えさせる、繰り返しの読みを2、3人にさせる、学生に発音の訂正をさせる。

(2)授業が一段落したところで、たまった質問に答える。余裕があるときは、その都度、返事をする。

学生が提出した授業ノート(提供・海島健)

 逆に困ったことは、blackboardのシステムを使って板書をすると、スペルなどを間違えた場合に、部分的な訂正ができないことです。消すとメモの全てが消えてしまいます。この機能に関しては使わないようにして、紙に書いたり、ホワイトボードに書いたりすることとしました。

 宿題のチェックや授業ノートのチェックはwhat’s up(LINEのようなソフト)経由で実施。テストの作成や評価はさらに複雑で、今後も解決しなければならないことは山積しています。

 不慣れなシステムを使って遠隔授業を行うのは、新型コロナウイルスが生んだ困った状況と言えるでしょう。しかし、泣き言を言っても仕方がありません。学生のため、そして私自身が新しいことを学ぶチャンスと捉え、日々を過ごそうと思っています。

    "バーレーンは新型コロナで”準封鎖”状態"に9件のコメントがあります

    1. Mick より:

      凄い凄い素晴らしい
      このコロナ騒動の過酷な状況下で色々な工夫をしてオンライン授業を‼
      是非とも頑張って下さいね。

      1. ウミシマケン より:

        ありがとうございます。
        一気にオンライン化で対応するしかないのですが、
        危機を機会ととらえて前進しましょう。

        1. Mick より:

          来ましたよ〜コメント(笑)どうもありがとうございます♡

          1. ウミシマケン より:

            Mickさん
            ありがとうございます。
            反応があると励みになります。
            また、きじをだしますね

    2. ブドア より:

      バーレーンの現在の状況を説明していただきありがとうございます。大変な状況ですけどこんな時でも、明るい気持ちを忘れないようにしましょう。

      1. 匿名 より:

        ブドアさん

        コメントありがとうございます。
        バーレーン在住日本人が日本語でバーレーン大学の記事を書く。
        それを現地のバーレーン人が日本語で読んで、日本語でコメントって素晴らしいですねえ。
        アラビア語の翻訳ボタンもつけたので、
        日本語が読めないアラブ人でも読むことができるようになりました。

    3. ウミシマケン より:

      ブドアさん
      コメントありがとうございます。
      バーレーン在住日本人が日本語でバーレーン大学の記事を書く。
      それを現地のバーレーン人が日本語で読んで、日本語でコメントって素晴らしいですねえ。
      アラビア語の翻訳ボタンもつけたので、
      日本語が読めないアラブ人でも読むことができるようになりました。

    4. マリアム(モモ) より:

      現在バーレーンでの状況まとめを分かりやすくて書かれた記事ですね。政府が早いうちに手を打ったおかげさまで、バーレーンの近況はたくさんの国々より安定性が高いと思います。

      このような厳し時でも、教育を始め、会社、事業などが工夫して続いて、先生や生徒とともにオンライン授業で一生懸命頑張っています。大事なことは自分から責任を持って、身体を守って、政府の新ルールを従うべきこと。いつも家にいることはつまらないかもしれないけど、この長い暇な時を趣味や好きなことに使う機会が増えていますね。

      止まない雨はないので、この状況は永遠に続くわけがない。その時まで、皆さんと協力したら必ずなんの困難を乗り越えるでしょう。

      1. 海島健 より:

        マリアム様

        記事をお読みいただきありがとうございます。バーレーン政府の対応のはやさにはただただ感謝ですね。

        家にいる時間が増え、生活のパターンがかなり、いや全面的に変わった人もますね。暗い気持ちになるのではなく、深く考え、今後のための絶好のチャンスにしたいです。
        好きなことに没頭するのもまた良しですね。

        「雨がやんだ」ら、この時期の生活が懐かしくなります。

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