日本人を入国制限するバーレーン 迅速なコロナウイルス対策とF1無観客開催

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海島 健🇯🇵 @バーレーン Bahrain🇧🇭

東京都出身。一橋大学社会学部卒業。1997年からバーレーンに在住し、国立バーレーン大学で日本語の講師を務める。2006年からスポーツ新聞のウエブサイトでサッカーのコラムを執筆。

 初めまして、海島健です。1997年にバーレーン王国に移り住んで22年、バーレーン大学で日本語教師をするとともに、スポーツ新聞のサイトでコラムを執筆していました。日本から遠く離れたペルシャ湾上の国からディープなバーレーン、中東情報をお伝えしようと思います。第1回は日本でも大変な騒ぎの新型コロナウイルス関連です。

■バーレーン初の感染者は2月24日、2日後に教育機関閉鎖

超五つ星ホテル、リッツカールトンホテル内のバーレーン国旗

 バーレーンと言っても分からない方が多いかもしれません。サウジアラビアとイランの間のペルシャ湾上に浮かぶ島国です。地図なら左がサウジ、右にイランです。日本で名前が知られるようになったのは、1987年の大韓航空機爆破事件ではないでしょうか。実行犯の金賢姫が身柄を確保されたのがバーレーンでした。

 さて、日本の外務省によると新型コロナウイルスの感染防止のため、世界で22の国と地域が日本に対するビザ発給停止などの制限措置をとっているとのこと。その22の国と地域の中に、バーレーンが含まれています。

 この国の場合、新型コロナウイルスに対する対応が迅速です。日本からの入国制限もその延長上にあります。ここでバーレーンにおける新型コロナウイルスに関する動きをまとめてみましょう。

2月24日:初の感染者が判明

2月25日:感染者17人

2月26日:全ての教育機関を2週間休校・休園に

2月27日:感染者33人

3月5日:休校・休園期間をさらに延長し3月29日までとする

3月6日:感染者56人

 最初に感染者が見つかった2日後には、教育機関を全部閉鎖しました。企業などは普通に活動しており、政府の「まずは若い人を守る」という姿勢は賞賛に値すると思いますし、この大胆で迅速な決断に文句を言う人は筆者の周りにはいません。

 日本に比べてスピード感がありますが、バーレーンは人口150万人程度の王制国家。トップの決定がすぐに全土に行き渡る体制になっています。また、通勤が日本と異なり、自動車であるため感染リスクが低く、打つべき手が少なくてすむという事情もあるでしょう。

■感染者の大半はイランへの巡礼・観光帰り

バーレーンの最新のアベニューモール

 そのような迅速な対応にも関わらず、3月6日現在で56人の感染者が確認されています(数字はその日までの総計)。

 ペルシャ湾上の島国、他国から海を隔てている国に、どうやってウイルスが入り込んだのか不思議に思えるかもしれません。実は感染者のほとんどが感染拡大が目立つイランからの帰国者で占められています。56人中48人は空港での検査で感染が確認されました。ただし、重篤化しているケースは1件のみ。経過の良い人がほとんどなのはせめてもの救いでしょう。

 現在でこそイランの感染爆発は知られていますが(3月6日時点で感染者4747人、死者124人=同国保健省発表)、2月中旬あたりまではそのような情報がなく、バーレーンのシーア派の住民の多くが巡礼や観光でイランを訪れていました。

 2月に入って、イランを訪問してバーレーンに戻った人が3000人ほどいたことが判明し、バーレーン政府はこの人達にコロナウイルス検査に応じるように呼びかけ、渡航者と彼らの濃厚接触者6000人ほどの検査が行われました。

 現在はイランとの往来は遮断され、世界の重度感染国(中国、韓国、イラン、イラク、タイ、マレーシア、シンガポール、イタリアなど)からのバーレーン入国は禁止もしくは制約付き入国許可となります。そのリストについに日本も加わった訳です。これによりバーレーン在住日本人でも、一時帰国して再入国する場合は14日間の自己隔離が必要となってしまいました。

■出始めたリラックスムード、3月20日からF1バーレーンGP

 バーレーンでは3月20日~23日にF1というビッグイベントがあります。世界のモーターファンの注目が集まるイベントは政府としても簡単には中止に出来ず、実施に向け全力で動いています。

 渡航制限のかかったイタリアや日本のチームやファンの扱いをどうするのか、観戦人数をどの程度制限すべきかといった細かい問題が沢山あります。開放空間とはいえ、さすがに観客がぎっしりだと感染のリスクはそれなりに高まります。不安がないとは言い切れませんが、ここまでのバーレーンの水際対策はかなりうまくいっていますから、その流れで円滑な開催ができると信じたいです。(※3月8日、バーレーン国際サーキットは史上初の無観客で実施することを発表しました

 2月下旬の緊迫した雰囲気から、3月上旬の今は少しリラックスムードが伺えます。レストランや喫茶店などでは10人単位での集まりをよく見かけますし、公園などでは子供たちが集団で遊んでいるのも見られるようになりました。個人的には嫌な胸騒ぎを覚えるのですが、杞憂に終わることを心より祈っています。

 中東の小さな島国、バーレーンの水際対策が今後もよい経過と結果をもたらし、世界の良きお手本となるよう願ってやみません。

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