日刊スポーツ来春に新聞印刷事業終了 朝日に委託
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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スポーツ新聞の日刊スポーツを印刷している(株)日刊スポーツPRESSが2025年春に新聞印刷事業を終了する。19日までに当サイトの調べでわかった。新聞印刷部門を朝日新聞社の関連会社に事業移管し、自社の新聞を他社に委託して印刷する形になる。既に群馬県の藤岡工場を同年春に閉鎖することは決まっており、日刊スポーツ新聞社を中核とするグループ存続の生き残りへ正念場を迎えている。
◾️藤岡工場2025年春に閉鎖
スポーツ新聞の日刊スポーツは、その印刷を関連会社の(株)日刊スポーツPRESS(代表取締役・吉田昌一)が行なっている。印刷拠点は本社・築地センター(東京都中央区築地)と王子工場(同・北区王子)、藤岡工場(群馬県藤岡市)の3か所。
このうち藤岡工場は2025年春に閉鎖が決まっている。同社はその事実をHP上で公開していないが、朝日新聞が「…25年春の藤岡工場(日刊スポーツPRESS運営)の閉鎖を控え、新たな生産体制を検討する中で、長野県全域に安定した基盤を持つ信濃毎日新聞社を委託先に選んだ。」(朝日新聞DIGITAL・朝日新聞社、信濃毎日新聞社に印刷委託へ 長野全域で来年春から)と関連する記事で今年2月1日に明らかにしていた。
このため2025年春からは築地センターと王子工場だけで印刷を行うことは決まっていたが、日刊スポーツPRESSの新聞印刷部門を朝日新聞社が100%出資する(株)朝日プリンテック(代表取締役・秋元隆史)に事業移管することになった。
当サイトでは関係者の話からこの事実を把握、日刊スポーツPRESSに問い合わせると、8月19日に同社管理本部では「25年春で印刷事業を終了することを決定しました。」と印刷事業の終了の事実を認めた。さらに印刷事業の移管について「部門ごと移管という形ではありませんが、弊社の印刷工場の運営を朝日プリンテック社にお願いすることになります。」とのことであった。
また、同社の印刷事業に関わる社員について「希望する従業員は朝日プリンテック社に受け入れてもらえるよう調整中です。」とのことである。もっとも、日刊スポーツPRESSの関係者は「いったん、退社という形をとって朝日プリンテックに入ることになると聞きました。ただし、移籍を拒否して辞める人も出るかもしれません」と話している。
◾️部数減少の傾向が続き決断
新聞社が自社で印刷することは、媒体としてのプライドに関わる。新聞印刷のためには印刷のための工場が必要で、1台数億円とも言われる輪転機が複数必要になり、それを管理する人を雇わなければならない。自社で印刷できるということは莫大なコストをかけても黒字になることが前提で、それに見合う部数があることを内外に示すことに他ならない。
今回、日刊スポーツがグループ全体として新聞印刷事業を終了させることは、もはや印刷事業を続けるだけの部数がないことを公言するに等しい。日刊スポーツPRESSでは印刷事業終了の理由について「新聞印刷部数の減少傾向は続いており、印刷工場の効率的な運営が求められています。そうした状況を踏まえ、朝日新聞社、朝日プリンテック社、日刊スポーツ新聞社、弊社で協議した結果、弊社の新聞印刷事業を朝日プリンテック社に移管することが決まりました。」と説明する。
同社も認めるように、日刊スポーツの急激な部数の落ち込みはここ数年、顕著になっている。筆者は30年近く日刊スポーツ新聞社に在籍し、1990年代末は東京本社だけで100万部前後の時期もあったことを知る世代であるが、退職した2014年秋にはその半分程度に落ち込んでいたことも認識している。
2022年末で発行部数は20万~25万部程度(参照・日刊スポーツ東京は25万部? 気になる行く末)で、2024年末には20万部を切る可能性はある。実際に日刊スポーツの関係者は「現在、20万部を切っているかどうか分かりませんが、少し前まで平日の築地センターの刷り部数は6万から7万部程度でした。後は王子と藤岡で刷りますが…」と厳しい状況を説明する。
少子高齢化が進展し、メインの読者層とされる団塊の世代(1947-1949年生まれ)は今年中にすべて後期高齢者(75歳以上)になり、2025年には大幅に読者が減ることが心配されている。そうした状況を踏まえ、当サイトでは2025年にスポーツ新聞は廃刊ラッシュとなるのではないかと予測している(参照・スポーツ新聞廃刊ラッシュ 2025年から?)。
日本新聞協会が発表したスポーツ新聞発行部数は2023年が191万6357部と200万部を切っている。2013年を100とすれば実に49.5%と半分以下にマーケットがシュリンクしている。2022年には西日本スポーツが、2023年には道新スポーツがそれぞれネットに特化して「紙」を廃止したのは記憶に新しい。
◾️事業移管と事業譲渡
ここで事業移管(業務移管)について説明しておく。事業移管は企業が手掛けている業務の管轄を他の部署へ移す、または、外部へ委託することを指す。
似た用語として「事業譲渡」がある。事業の譲渡は「会社が取引行為として、『事業』を他人に譲渡すること」(会社法 田中亘 東京大学出版会 P657)であり、会社法467条以下に規定されている。事業譲渡においては「譲渡会社が当該事業に関して有する権利・義務につき、権利については相手方(事業の譲受人)に譲渡し、義務(債務)については相手方がこれを引き受ける…」(同書、同頁)という通常の取引行為であるが、今回の日刊スポーツPRESSと朝日プリンテック間の事業に関する契約はそれに該当しないようである。
事業譲渡は通常、譲渡の対価が発生し、譲渡会社の権利・義務がそのまま移行する。譲渡会社に債務があれば債務ごと譲受会社に移る(免責的に引き受けるのであれば債権者の承諾が必要になる)。事業(業務)移管であれば事業そのものを譲渡するわけではないので基本的に対価は発生しない。
事業移管に関する売り手側のメリットとしては、事業の存続が図れることである。日刊スポーツは情報を提供する会社であり、メインの情報伝達手段は新聞(情報を紙に印刷して読者に届ける)であり、新聞印刷事業が立ち行かなくなれば、本体の新聞社も存続はできない。そうした危機的状況を打開する必要に迫られたことが、事業移管の主な理由と言っていい。
そのような点を、専門サイトでは以下のように解説している。
「事業移管を行うと継続させたい事業を守れます。つまり、事業に含まれる貴重なノウハウ・設備・雇用などを維持できるのです。たとえ債務超過などで赤字に陥り存続が危ぶまれている会社であっても、大切な事業を他の会社に移管できれば事業自体の存続が図れます。」(M&A総合研究所・事業移管とは?意味やメリット・デメリット、事業譲渡との違いを解説)
◾️日刊スポーツの正念場
今回、日刊スポーツPRESSの事業移管はそうした新聞社、とりわけスポーツ新聞の衰退の流れの上にあるのは間違いない。
前出の「2025年危機」を乗り越えることができるか、日本最古のスポーツ新聞のブランドを守れるかどうか、正念場に立っていると言える。
東京中日スポーツが年内で休刊すると、週刊新潮の報道がありましたね。事実上の廃刊のようです。
インターネット全盛の現代において、スポーツ新聞というメディアはすでに時代遅れになっているのでしょう。
日刊スポーツも苦しい状況であるのは間違いないでしょうから、いつ廃刊になっても驚きませんね。
朝刊スポーツ紙は東京中日が消えると、残るは5紙。どこも時間の問題でしょう。
2025年から廃刊ラッシュか、と書きましたが現実のものになりそうです。日刊スポーツは朝日の完全子会社というわけではなく、他紙とは少し事情が違いますが、逆に朝日からの十分な支援が受けにくいという点から、逝くのは早いかもしれません。OBとしては残念ですが、それも時代の流れでしょう。
ニッカンもトーチュウも印刷工場の輪転機更新にかかるコストが問題となり、工場閉鎖という判断になったようです。
要するにコストに見合う利益が得られないということなのでしょうね。
その通りと思います。
部数減少で販売収入が減り、それに合わせて広告主から媒体としての価値なし見切られて広告収入も激減ということなのでしょう。
中日新聞が自社の広告を出して助けていたのも限界に達したという感じと推測しています。
はじめまして。コメント失礼します。
過去記事含め、興味深く読ませていただきました。
シューツヴァイさんのコメントにあるように、トーチュウが事実上の廃刊で、最近はページ紙も少なく、中日が勝利したら掲載される「勝ったら買ってね」のロゴを送るともらえる賞品のクオカード(金額は不明)の当選者数が2人というのは、寂しくありました。
さらに先日は夕刊フジの「廃刊」の話があり、東スポも土日版は大幅値上げで部数も落ちているようです。
私も土日版の東スポを愛読していましたが、昨年春の20円の値上げで気持ちが離れ、今年春の250円への大幅値上げでさらに気持ちが離れ、毎週末購入していたのが、8月は1回も買うことはありませんでした。代わりにニッカンはじめ、朝刊スポーツ紙を買うようになりましたが。
東スポは「習慣」で買っていたところがあるようで、いったん離れると元に戻すのは難しいですね。
東スポの競馬は買う価値があると思いますが、250円出してまで買うか、と言われると厳しいですね。
東スポのトップは、競馬専門紙と比べると断然安いと考えたのかもしれませんが、今はJRAで出走馬のデータは全て見られますから、別に新聞を買わなくても、と考える人は少なくないと思います。東スポもかなり厳しいですね。餃子を売ったり、居酒屋をやったりで、どこまで生き延びられるかというところだと思います。
スポーツ紙ってそもそも数が多すぎませんかね。金太郎飴みたいな感じで私には違いがわかりません。取材先にもよくいますけど、数ばかり多くて正直邪魔です。大本の全国紙があるのですから、そのスポーツ部門に全員転籍させればよいのでは?と思います。閑話休題。
スポーツニッポン社も赤字10億近くで激ヤバですね。
直近の決算一覧
決算末日 売上高 純利益 利益剰余金 総資産
2024年03月31日 – △9億5,192万8,000円 37億2,463万6,000円 116億8,937万円
2022年03月31日 – △2億330万9,000円 47億7,855万8,000円 123億492万円
2021年03月31日 – △1億594万1,000円 49億8,186万7,000円 132億6,842万7,000円
おっしゃる通り、スポーツ新聞は数が多すぎると思います。
朝刊6紙に夕刊の東スポを入れて7紙ですから、飽和状態ですし、確かに取材現場も人が多すぎて困ります。スポニチも厳しい状況ですが、こちらはその前に毎日新聞が倒れるのではないかと思っています。
今後5年でスポーツ紙は半分ぐらいになると思いますが、最後まで残りそうなのは読売頼みのスポーツ報知でしょうか。それでもいずれ全て消え去る運命で、一般紙がどこまで踏ん張れるかという状況だと思っています。
この先、新聞業界自体がどうなんでしょうか?
読売、朝日、毎日にしても今は、読売の1社勝ち
に感じています。
スポーツ新聞については報じる内容にほとんどの人が興味を示さないため、遠からずなくなると思います。ネットで細々と生き延びるブランドはあるかもしれませんが、紙媒体としてのスポーツ紙は消え去る運命でしょう。
一般紙については、米国の新聞はネットに主軸を移して成功した例もありますが、日本では販売店との関係があるのでなかなか難しいものがあると思います。動画なども加えた総合的なメディアに転換するところが出てくるようなら、新聞のブランド名を冠したまま生き残るところがあるのかなと漠然と考えています。それは現行の新聞社ではなく、新たな起業者による場合もあるかもしれません。
おそらく10年後ぐらいには社会における新聞の在り方は一変していると思います。これから本格的な淘汰の時代であるのは間違いないでしょう。
新聞購読者に、なんの説明ないんですが、群馬県の日刊なくなるんですか?
群馬の工場を閉鎖したということです。群馬県民に届ける新聞は群馬以外の場所で刷るという話でしょう。
はじめまして。私は2022年2月まで日刊スポーツPRESSに在籍していた者です。今日日刊スポーツPRESSが番組表を配信していたTVステーションが東京ニュース通信社に買い取られていたのを知り古巣のことが気になりネットを見ていたら松田様の発信に辿り着きました。私が辞める頃には最後まで残ると思っていた週刊ザテレビジョンが真っ先に廃刊となりこれは辞めることにして正解と思っていました。その後道スボ、西スポ、夕刊フジ、トーチューどれも東京ニュースの配信とはいえ次々廃刊となりこんな状況ではまともな精神状態では仕事は出来ないなと今は全く別業種で働きながら思いを巡らせています。そもそも築地で仕事をしていたのを王子工場に事務所を作って2拠点で非常時に備えるというのも今から考えればビルの賃貸料削減だったのかなとか出勤人数を減らす取り組みとか完全に沈没船の様相でしたね。五億円超の赤字とか取り返しがつきません。親しかった元の同僚とは全く連絡を取っていませんがもう辞めているのかなと思いますし、むしろ辞めていてほしいと思うばかりです。新聞が無くなるスピードは予想より早かったですね。拙い思いですが長文になり誠に恐縮です。今後も読ませていだきます。
コメントをありがとうございます。
沈没船の様相という表現に、現状の厳しさが想像されます。吉田昌一社長の時代かと思いますが、彼は非常に優秀なのにその能力を沈没船の沈没を遅らせるためだけに使っていたのではないかと感じています。吉田氏とは入社が1年違い、彼が組合委員長の時代に僕が書記長という関係で(この男は出世するだろうな)と見ていました。
業績が好調な時には彼のような有能な官吏タイプの社長は力を発揮するのでしょうが、傾いた会社を革命的に立て直すという作業には向いていないという印象をもっています。ユタカ様が将来を考えて辞められたのは、おそらく長いスパンで考えれば正解だったと思います。
この後もスポーツ新聞関連の記事は出ますので、またお立ち寄りください。