スポーツ紙過去最大の12.4%減 廃刊ラッシュ間近

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 2024年のスポーツ新聞の発行部数が2001年以降最大の前年比12.4%減を記録した。24日に日本新聞協会が公開したもので、昨年の10.9%減を上回る大幅な部数減となった。コロナ禍の2020年から始まった年10%減のペースは落ちるどころか加速。既に2025年1月末で東京中日スポーツが電子版のみへの移行が決まっており、新聞発行からの撤退はさらに進むと思われる。

◾️7年で半分にシュリンク

12.4%減、1年で8分の1が消滅

 日本新聞協会は2024年10月現在の新聞発行部数を公開した。それによるとスポーツ紙が167万7822部で、前年同月の191万6357部から12.4%の減少。コロナ禍の2020年に10.1%減と大幅減少が始まり、2022年こそ9.2%減と二桁減は避けたものの、その後は10.9%、12.4%と再び二桁減が続く結果となった。日本新聞協会が発表しているデータ(2000年以降)では、対前年比では最大の減少幅となっている(日本新聞協会・新聞の発行部数と世帯数の推移)。

 2017年の336万4548部と比較すると50.1%減になり、7年で市場は半分以下にシュリンクした。2000年を100とすれば26.6と、4分の1近くにまで落ち込んでいる。

 2025年1月末には東京中日スポーツが紙面発行を終了することが決まっており、その部数はおよそ4万部と推測される(参照・トーチュウ休刊へ ”金欠紙面”断末魔の呻き声)。つまり2025年は同紙の推定4万部分の減少は確定している。167万7822部ー4万部=163万7822部で、残るスポーツ紙の減少幅が今年と同レベルの12.4%だったとすると、全体で143万4732部となる計算。その場合、前年比14.5%減となる。十分に予測できる数値であろう。

 当サイトでは団塊の世代(1947-1949年生まれ)がすべて75歳以上となる2025年からスポーツ紙の本格的な撤退が始まると予測した(参照・スポーツ新聞廃刊ラッシュ 2025年から?)。それは東京中日スポーツの撤退で、まずは1紙は的中したことになる。日刊スポーツ、スポーツニッポン、スポーツ報知、サンケイスポーツは2023年5月から6月にかけて価格改定し1部160円へ、月決めは3353円から3700円に値上げした。2024年の部数減はそれも多少は影響していると思われるが、この価格でいつまでも我慢できる保証はない。

 次の値上げのタイミングで1部10円アップすれば1か月で300円増であり、月額4000円に達するのは確実。一般紙と同時に購読すれば8000円から9000円程度になるため、年間では10万円前後に達する。そうなると、スポーツ紙は簡単には値上げはできない。その状況に陥れば(もう、刷るのやめた)と決意する可能性は十分にある。

◾️一般紙は1年で173万部減

この光景もいつまで…

 当サイトの予想では紙面をやめる順番としてデイリースポーツ関東版、サンケイスポーツと予測をしている(参照・トーチュウの次を占うスポーツ紙消滅ラリー)。産經新聞は夕刊フジを2025年1月末で休刊すると発表した(参照・さようなら夕刊フジ 来年1月末で休刊)。こちらは電子版も残さない事実上の廃刊で、産經新聞本紙がいかに苦しいかを示している。

 すでに産經新聞自体が全国紙でありながら100万部どころか90万部も割り込み(RTB SQUARE・産経新聞、ABC部数で90万部下回る)、スポーツ紙に構っている余力はなさそう。そうなると、2025年にサンスポは紙面から撤退、電子版のみ存続となっても不思議はない。

 なお、一般紙を見ると合計2493万8756部で、前年の2667万4129部から6.5%減を記録した。減少率ではスポーツ紙よりは緩やかではあるが、母数が大きい分、減少した部数は大きい。実に173万5373部減った計算で、これはスポーツ紙全体の部数よりも多い。

 毎日新聞は8月に150万部を切る149万9000部を記録(RTB SQUARE・毎日新聞、ABC部数で150万部を下回る)。一般紙の1年間の減少幅は毎日新聞1社分の部数を上回っており、その勢いには驚くしかない。毎日新聞は三大紙の一角であるが、それが1年で吹き飛んでしまう市場縮小、全国紙も我慢の限界は近い。

◾️新聞衰弱の理由

 こうした現象は情報を文章化し、印刷して宅配、即配という伝達の手続きの煩雑さ、情報の受け手に届くまでタイムラグが大きすぎるというのは今まで言われていたことではあるが、理由はそれだけではない。

 マスメディアが国民の信頼を失っているという点も大きい。NHKから国民を守る党の立花孝志党首がよく口にするが、新聞の掲載スペース、テレビの放送時間枠は有限であり、大きな情報については記事も放送も都合のいい部分だけ切り取って対応していたために真実が伝わらないことが少なくなかった。

 ところが今はYouTubeなどで情報発信者が自らの手で全ての情報を開示することができる。立花党首は、テレビや新聞は都合のいい編集をするから会見に来てもらっても仕方がない、それならYouTuberに来てもらった方がいいという趣旨の発言をしているのは、強がりではなく本心から思っているのであろう。兵庫県知事選挙でSNSの力がオールドメディアを凌駕したことからも、容易に想像がつく。

加速する減少率

 マスメディアよりSNSに頼るという政治家が出ているわけで、この流れは政治の世界だけにとどまらないと思われる。特にスポーツ新聞は記事を読むより、試合のダイジェスト映像と選手インタビューを見た方が事実を正確に掴める。わざわざ新聞を買って読むまでもなく、ネットに溢れる情報を超える情報がスポーツ新聞にあるかと言われると、ほとんどないというのが現状であろう。

 2024年1月から10月までの新聞販売店の倒産件数は40件で、10月の時点で過去最多だった29件を上回っている(東京商工リサーチ・1-10月の「新聞販売店」倒産40件で年間最多を更新中 部数減や折込み広告が減少、人手不足とコストで逆風続く)。全国で1か月に4件の新聞販売店が倒産している計算で、こうしたことがスポーツ新聞にはボディブローのように効いているのは想像に難くない。

 2025年の今頃には5紙体制も維持できなくなっている可能性は十分にあり、予想通り廃刊ラッシュが始まると予測している。それを確信に近い状態にさせる、日本新聞協会の発表であった。

    "スポーツ紙過去最大の12.4%減 廃刊ラッシュ間近"に8件のコメントがあります

    1. シューツヴァイ より:

      今回の部数減にまったく驚きはなく、スポーツ紙の厳しい現状を表す当然の結果であると受け止めています。
      かなり甘く見積もっても、今後5年以内にすべてのスポーツ新聞は紙媒体での発行がなくなると見て間違いないでしょう。
      一つ疑問なんですが、新聞協会が発表しているスポーツ紙の発行部数に東スポ、夕刊フジは含まれているのでしょうかね?
      一応どちらも新聞協会に加盟はしているようですし、167万部というスポーツ紙全体の発行部数から考えると、両紙を含まないと数が合わないのではないかと思っているのですが。
      松田さん、教えて下さいませ。

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        正直なところ、僕は部数減少は鈍化するのではないかと思っていました。

        発行部数が減り続けると、残っている読者はスポーツ紙にこだわりがある人ばかりが多くなると考えられるからです。しかし、結果は減少率としては過去最大ですから、シューツヴァイ様がおっしゃるとおり、5年以内(2029年まで)に紙としてのスポーツ紙消滅説もありそうです。

        あらためて減少率を見ると、10,1%-10,1%-9.2%-10.9%-12.4%ですから、大幅な減少が続くというよりも、全廃に向けてのカウントダウンが続いているという感じですね。

        ちなみに東スポ(大スポ等も)はスポーツ紙に入っているはずです。夕刊フジは入っていないと思います。一般紙の括りではないでしょうか。詳細までは分からず申し訳ありませんが。

        1. シューツヴァイ より:

          やはり東スポは含まれていますよね。いまは東スポもだいぶ部数が落ち込んでいるようですが。
          ここ数年の減少率は鈍化どころか加速しているところを見ると、スポーツ新聞の読者離れは深刻なものであると言えるのではないでしょうか。
          まあ価格に見合う情報を得られないのであれば、読者が離れるのも当然です。
          紙の新聞には情報伝達速度が遅いという欠点がありますが、それでもいまだにスポーツ新聞の紙面作りは速報性を中心としたものであるように見受けられます。日刊新聞である以上は仕方がないとも言えますが、それがインターネットの情報と比較されてしまう要因でもあり、逆立ちしても勝てない土俵で勝負をするという致命的な失敗をしていると言えます。
          そうしたことに作り手は気づかないのでしょうかね。速報性ではなく読み物としての付加価値を高めていかないと、スポーツ新聞が生き残る道はないと思います。

          1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

            >>速報性ではなく読み物としての付加価値を高めていかないと、スポーツ新聞が生き残る道はないと思います。

             これはその通りと思います。僕は在職していた当時から大胆に変化させないとダメだ、紙の売り上げが上がらないのは、情報伝達手段だけが問題ではなく、伝える情報の質に問題があるのだと言っていたのですが、皆、聞く耳を持ちませんでした。

             今までやってきたことを守っていけば会社は発展すると考えたのか、変化を好まず、人当たりだけが取り柄という人間が出世していく会社に未来があるのかと、2000年以降ぐらいからずっと感じていました。それで今はフリーになっているという状況です。OBとしては、今からでも改革に取り組み、生き残ってほしいと切に願っています。

    2. メル・レゾン より:

      日刊スポーツには、広告代理店にいた時に記事広告を出す機会があり、お世話になりました。プライベートでも日刊スポーツとスポニチは年間10回前後は買っていて馴染みがあったのですが、直近5年くらいは購入していないです。2024年10月のスポーツ新聞の発行部数は167万部ということでだいぶ減ってしまった印象はありますが、各社の内訳って分かりますか?日刊とスポニチが一番で次が報知というのは分かるのですが、その辺りのおおよその数字を算出することは可能なのでしょうか。
      例えば夕刊紙の場合、40.2万部となっていますが、昨年のデータからある程度予測ができます。加盟10紙のうち、十勝毎日新聞と苫小牧民報が併せて10.7万部、夕刊三重1万部、紀伊民報2.8万部、宇部日報4.0万部、夕刊デイリー3.3万部と仮定すると、18.4万部。夕刊フジは1〜4万部程度と元産経の記者が言っていたので、東スポ系(大スポ、中京スポ含めて)は14.4〜17.4部くらいしかないと思います。
      日経新聞などの専門紙や一部の地方新聞、一部の競馬新聞は残りそうですけど、他はネット記事の支払いの仕組みを変えるなど構造そのものを根本から変えないと生き残れないと思います。

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        東京日刊スポーツは2022年末の時点で多くて25万部程度でした(https://reiwa-kawaraban.com/media/20230403/)。この数値はほぼ間違いないと思います。そこから他紙と同じ減少率だとすると10.9%、12.4%の減となり、2024年10月時点で20万部前後でしょう。

        スポニチもほぼ同程度と思われます。スポーツ報知はその7掛けから8掛けではないでしょうか。この辺りの予想は僕が日刊スポーツに在籍していた当時の数値から導き出したものです。当たらずとも遠からずといったところではないでしょうか。

        あくまでも個人的な予想ですが、2025年末か2026年初頭までにデイリーの関東とサンスポが紙から撤退すると思っています。いつまでも引っ張っていると神戸新聞、産經新聞という本体まで危うくなるので、案外、早めに決断するのではないかと。

        ここ5年ほどの年10%前後の減少率は、減少傾向にあるというより、終わりへのカウントダウンが続いているという状況を示していると思います。

    3. ハマ より:

      デイリーはそんなに厳しいんてすか…
      確かにドラゴンズファン御用達のトーチュウがなくなるのだから阪神ファンしか買わないであろうデイリーがなくなるのも時間の問題ではありますよね。
      もちろん関東ではドラゴンズファンよりも阪神ファンの方が多いでしょうけど、阪神ファンがみんなデイリーを買って読んでるかと言うとそうではないでしょうし、若い阪神ファンのSNSとか見てるとスポーツ紙に対する批判も根強いですし。

      あと不謹慎ですけど、もし5年以内に紙のスポーツ紙が無くなれば、超大御所の元スポーツ選手や芸能人が亡くなった時にスポーツ紙の紙面でその記録を残す事が出来なくなるのはかなり寂しいですね。

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        デイリーは相当早い時期に関東から整理部をなくして、東京は大きな支局、総局みたいな感じになっていると、知人のデイリーOBが言っております。

        関西のコアな阪神ファンならデイリーを買うのでしょうが、関東にコテコテの阪神ファンというのも想像がつきませんから、もう先が見えている感じです。整理部がないというのは身軽であるため、東京中日よりは長生きできたのではないかと思いますが、いずれにせよ時間の問題でしょう。

        ただ、紙はなくなってもしばらくはネットで生き延びるところもあるでしょうから、スポーツや芸能などに関してはそれなりに記録は残ると思います。

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