巨人公式チャンネル 中居氏動画削除せず沈黙

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 プロ野球・巨人がYouTubeの公式チャンネルで元タレントの中居正広氏(52)が登場する動画の公開を続けている。昨年末から今年1月にかけて、フジテレビの女性アナウンサーとのトラブルが報じられると、CMはもちろん、出演する番組でも登場シーンがカットされる対応が続いたが、巨人の公式チャンネルは騒動にもかかわらず一貫して公開している。その真意はどこにあるのか。

◾️CM2社は素早く動画を削除

動画の舞台となった東京ドーム(撮影・松田隆)

 中居氏が登場するのは2020年11月8日、東京ドームでのヤクルト戦で巨人・坂本勇人選手が2000安打を達成した際の映像。バックネット裏の特別席と思われる個室から中居氏が応援しているもので、全編7分56秒。

 第1打席で坂本選手が2000本目の安打を放つと、中居氏は「やったー」と右手を挙げて喜ぶ姿を見せている。タイムスタンプは試合から1週間後の2020年11月15日になっている(読売ジャイアンツ・勇人2000安打を中居くんと観戦してみた!)。

 昨年末から今年初めにかけて中居氏の女性とのトラブルが週刊誌で報じられると、CMで起用している会社はただちに中居氏の動画や画像を削除した。昨年12月末にはソフトバンクが、CM動画を同社のギャラリーサイトから消した。

 これに対してソフトバンクは「今後予定しているCMは非公開です。また、今回の報道について、コメントする立場にありません」と取材に対して答えている(Sponichi Annex・中居正広CM動画削除のソフトバンクがコメント「今後予定しているCMは非公表。今回の報道について…」)。

 さらに単発のあるバイトの求人サービスを手がけるタイミーも同社のYouTubeチャンネルのCM動画一覧から削除した(Sponichi Annex・中居正広「タイミー」CM動画消えた ソフトバンクも削除 理由記載なく示談金トラブルとの因果関係不明も)。タイミーは「個社との契約に関する内容のため、回答を差し控えさせていただきます」としている(スポーツ報知電子版・中居正広がCM出演していた「タイミー」 中居の声明を受け「コメントする立場にございませんので差し控える」)。

 こうした動画の削除は、CMではそれほど珍しいことではない。起用したタレントの行為が法に触れないものの社会から批判を浴びると考えれば、企業イメージを考え、契約解除を含め動画や画像を非公開にする場合が多い。

◾️巨人は質問に答えず

 CM以外でも、中居氏が引退を表明する今年1月23日より前には、中居氏が出演したテレビ番組は、中居氏出演部分をカットして放映するなど苦しい放映体制を余儀なくされている。巨人と関係の深い日本テレビも1月7日放送の「ザ!世界仰天ニュース」で中居氏の出演シーンを全てカットして放映した実績もある(サンスポ電子版・中居正広の出演場面全カット 日テレ「ザ!世界仰天ニュース」、本人からも申し出)。

 一般的に巨人はこうしたスキャンダルを嫌う傾向が強く、2000年に所属するS捕手が強制わいせつ致傷(当時)で逮捕された際には逮捕前に解雇し、「巨人の現役選手が逮捕された」と報じられるのを避けたこともある。それが、こうした状況にありながら、読売巨人軍は公式チャンネルから動画を削除していないのは異例の対応(あえて削除しないという選択)に映る。

 1つには騒動の前の動画なので削除の必要はないという考えがあるのかもしれない。とはいえ、これだけ騒ぎになれば、何も発表しないまま削除しても特に批判を受けることはないどころか、当時の世間の反応はむしろ好意的だった可能性もある。

 当サイトでは株式会社読売巨人軍に対して、中居氏の動画について質問状を出し、回答を求めた。その質問は以下の2点。

Q01:当該動画を削除するお考えはありますでしょうか、理由があればご記載ください

Q02:当該動画を削除しないお考えはありますでしょうか、理由があればご記載ください

 おそらく何の回答もないと予想した通り、設定した締切時間までに何の反応もなかった。巨人は「ノーコメント」すら言わずに沈黙したのである。

 Q01に対する答えは、おそらく「削除する考えはない」で間違いなく、その理由は犯罪を犯したわけではなく、第三者委という民間人の集まりがWHOの広範な定義を持ち出して「性暴力」と認定したに過ぎないからといったものになるであろう。そうなると、巨人は第三者委の出した調査報告書を軽視しているという評価とされかねない。そこで、コメントを出すことで新たな批判を招くことを避けた可能性もある。

◾️動画を下ろすのは逆に不自然

 もう1つ気になるのは、日本テレビ放送網の福田博之社長が中居氏に「感謝の気持ち」を呼びかけたことである。

 2月17日の会見で同社長は「こういう形でもう引退されたわけですから、番組の出演っていうのはかなうものでもないですし、もう1度出てほしいということをご本人にお伝えするつもりはないですが、長い間頑張っていただきましたので、これに対する感謝の気持ちというのはそのままストレートにお伝えしたい」と述べた(スポーツ報知電子版・日テレ福田博之社長、引退の中居正広氏へ「長い間頑張っていただいた。感謝の気持ちはストレートにお伝えしたい」、参照・『中居正広氏に感謝』日テレ新社長発言の意味)。

写真はイメージ

 この日本テレビの福田社長の話は2月17日の記者会見でのもの。こうしてみると、日本テレビや巨人は総じて中居氏に好意的であるように見える。

 そもそも中居氏は犯罪を犯したわけではなく、確認できる限り刑事告訴すらされていない。フジテレビが設定した第三者委の公正性・中立性も、中居氏側の反論によって疑問の声も出ている。そういう時期に巨人が5年前の動画を下ろすのは逆に不自然である。

 中居氏の代理人は5月12日に第三者委の認定について反論し、関連する証拠の開示や釈明などを求めた。第三者委サイドが謝罪することなどは考えられず、そうなると中居氏側は名誉の回復を求めて今後、訴訟提起に至る可能性もある。巨人が変わらず動画を下げないのは、そうした背景があるのではないかと思われる。

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