中居氏反論と当サイト主張の一致 筆者の思い

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 元タレントの中居正広氏が12日、代理人を通じてフジテレビなどが設置した第三者委員会(以下、フジ第三者委)の認定について反論し、関連する証拠の開示や釈明などを求めた文書を公表した。その内容は、当サイトがこれまで主張してきた点とほぼ一致している。あらためて、フジ第三者委による調査報告書と当サイトの記事の比較をしてみた。

◾️当サイトの公開質問と反論文の関係

公開された調査報告書の一部

 当サイトではこれまでフジ第三者委が公表した調査報告書が公正さを欠き、中居氏の名誉を傷つけるものであるという趣旨の多数の記事を公開してきた。一連の記事の現時点で最後になったのが、中居氏に対し、フジ第三者委側へ訴訟を提起すべきとする内容(4月26日公開)。「自身の名誉のため、さらなる被害者を出さないように、社会のため、そして、中居氏を信じているファンのためにも起つべき時が来ているのではないか。」という文言で締めた(参照・中居氏反撃か 社会のためファンのためにも行動を)。当該記事公開から16日後に中居氏は目に見える形で初めて具体的な行動を起こしたことになる。

 中居氏の弁護団が公開した反論(以下、反論文)は、ネットでも全文を読むことができる(日刊スポーツ電子版・【全文】中居正広氏の代理人弁護士が送付した「受任通知兼資料開示請求及び釈明要求のご連絡」)。これを見ると、当サイトが指摘した点が主張の重要なポイントを占めていることがわかる。

 法的な思考をすれば、調査報告書への攻撃点は多くの人が同じになるのは当然かもしれないが、ここまで一致するのには正直、驚きではある。

 中居氏の反論は大きく2つに分かれており、第1は開示請求であり、第2は調査報告書の疑問点と釈明の要求である。

【反論文】

第1:開示の請求

<1>報告書作成に用いられたヒアリング記録とその他の証拠

<2>性暴力があったとの認定に用いた証拠と、認定と証拠との対応関係がわかる資料

<3>一部ないし全部の開示ができない場合の理由

 注目すべきは<2>。フジ第三者委はWHOの定義を用いて、中居氏は性暴力を行い、(相手の元女性アナウンサーに対して)重大な人権侵害があったと認定した。その定義は「強制力を用いたあらゆる性的な行為、性的な行為を求める試み、望まない性的な発言や誘い、売春、その他個人の性に向けられた行為をいい、被害者との関係性を問わず、家庭や職場を含むあらゆる環境で起こり得るものである。また、この定義における『強制力』とは、有形力に限らず、心理的な威圧、ゆすり、その他脅しが含まれるもので、その強制力の程度は問題とならない。」(報告書p27)としている。

 この認定に対して、当サイトでは中居氏は一般的に用いられる暴力の行使を否定しており、「第三者委の事実認定は『中居氏は暴力は用いていないが、性暴力は行った』という、一般には理解不能なものであろう。」と疑問を呈した(参照・フジ第三者委による中居氏の「性暴力」認定に疑問)。

 その上で、フジ第三者委に公開質問を投げかけた。

【当サイト記事】

「中居氏による性暴力とされた行為は、報告書にある(ア)あらゆる性的な行為、(イ)性的な行為を求める試み、(ウ)望まない性的な発言や誘い、(エ)売春、(オ)その他個人の性に向けられた行為、いずれに該当すると判断したのか」(参照・中居氏嵌めた”acts to traffic”の罠 報告書に疑義

 結局、この公開質問と、反論文の「<2>性暴力があったとの認定に用いた証拠と、認定と証拠との対応関係がわかる資料」は、同様の説明を求めていると言っていい。

◾️伝聞証拠排除の原則も

 続いて、反論文では公正な証拠原則に基づかずに事実認定をしていることを批判している。

【反論文】

「第二 1 <1>公正な証拠原則に基づかずに一方的に伝聞証拠等を基に詳細に事実認定しています。これはGL違反ではないのでしょうか。中立性・公正性に反しないのでしょうか。…相手方女性と中居氏へのヒアリング以外の調査方法(CX関係者のヒアリング及び関係資料)は直接当該行為を現認したものではありません。伝聞証拠として証明力に疑問があるのにそれらに基づき事実認定が行われています。こうした不当な事実認定は中立性・公正性を欠いていると言わざるを得ません。」

 この伝聞証拠による事実認定の危うさについては、当サイトは以下のように指摘していた。

【当サイト記事】

「第三者委は事実認定にあたって『CX関係者のヒアリング』も用いていることを明らかにしている。しかし、それは以前にも書いた刑事訴訟法上の伝聞証拠に過ぎず、その信頼性は高くなく、刑事訴訟であれば原則、証拠から排除される(参照・冷静になろう中居正広氏案件 伝聞証拠と守秘義務)。女性AがCX関係者に『中居正広氏に同意なき性行為をされた』と話すとしたら、それは同意がなかったように話すであろう。その真偽を確認しようとしても当該CX関係者は『そう聞きました』としか言えず、女性Aに聞いても『守秘義務があるので言えません』となる。それをそのまま事実として認定するとしたら、もはや公平公正な事実認定とは言えない。」(参照4月4日公開・フジ第三者委による中居氏の「性暴力」認定に疑問

 また、WHOの定義を用いて中居氏に「性暴力」の汚名を着させたことについて、反論文は強烈な批判を行っている。

 WHOの性暴力に関する極めて広義な定義を用いて、性暴力であるとしたことを指摘。その上で、日本弁護士連合会の「企業等不祥事における第三者委員会のガイドライン」で事実認定に関する指針として、法律上の証明による厳格な事実認定に止まらない認定をする場合には「その影響にも十分配慮すること」が脚注4に記載されているにもかかわらず、そうした配慮が全くないことを示した。

【反論文】

「『性暴力』(Sexual violence)という表現に関してはいろいろな理解が可能にも関わらず、WHOの極めて広義な…定義を用いています。しかし、『性暴力』とは普通の日本人にとっては肉体的強制力を行使した性行為として、凶暴な犯罪をイメージさせる言葉です。ところが、貴委員会はこの『性暴力』という言葉を使用するに際して、日本語の凶暴な言葉の響き・イメージとは大きく異なるハラスメント行為まで性暴力に含めるWHOの広義な定義を何らの配慮もしないまま漫然と使用しました。…このような言葉の選定が中居氏の名誉等に多大な影響を与えることについての配慮が全くなされておりません。」

 これに対応するのは当サイトの以下の部分である。

【当サイト記事】

「…WHOの性暴力の定義を読んでいただければわかるが、その範囲は極めて広範である。…わざわざ外国の法律でもない定義を持ち出して『性暴力』『重大な人権侵害』と断ずるのは、最初から結論ありき、中居氏を性暴力を行う卑劣な人間と断じたかったからと邪推されても仕方がない。」(参照4月4日公開・フジ第三者委による中居氏の「性暴力」認定に疑問

◾️第三者委員会の信頼性について

 反論文は以上のような事実を指摘し、今回の調査報告書は第三者委員会の権威そのものが揺らぎかねないと反論文は警告している。

【反論文】

「中立性・公正性を欠いた本調査報告書の公表により…調査に協力した個人である中居氏が不当な社会的非難に将来にわたり継続して晒され続ける状態は看過されるべきではありません。こうした事態を貴委員会が放置することは、第三者委員会制度の今後のあり方が問われる課題であり、当職らは、これまでに築かれた第三者委員会制度の社会的信用をも失墜することになりかねないのではないかと憂慮しております。」

 この点は当サイトも同様の見解であり、中立性・公正性を欠く第三者委員会が、今後、多くの人々の人権を侵害しかねない事態を懸念する内容を示した。

【当サイト記事】

「こうした訴訟を提起しないと、第三者委による人権侵害の被害者が続くことになりかねない。逆に第三者委は批判されることのない絶対的な権力を握ったと勘違いしたまま、無辜の民を性暴力呼ばわりする事態が頻発するかもしれない。」(参照4月26日公開・中居氏反撃か 社会のためファンのためにも行動を

◾️隠されたメッセージ?

 このように見ていくと、当サイトのこれまでの指摘と、反論文の共通点がお分かりいただけたと思う。

 執筆者としては(自分の言っていたことを、中居氏の弁護団は肯定的にとらえてくれた)という点では光栄であり、(書いてきたことは、少なくとも全くの的外れではなかった)という安堵感もあるのが正直な感想である。

写真はイメージ

 ただ、ここまで内容が一致していると、ひょっとすると中居氏や弁護団は当サイトを見てくれていたのではないかという思いもしてくる。実は1月中旬に中居氏のマネジメントの会社のHPに対して、当サイトからメッセージを投げかけた。詳細は明らかにできないが、「これまでの経験から、参考になるようなお話ができるかもしれません」という趣旨。

 その10日ほど後に中居氏が引退を発表し、結局、返事はいただけなかった。その後、当サイトは上述した数々の記事を公開した次第である。

 以下は筆者の勝手な思い込みであるので、読み流していただきたい。

 ーー今回の反論文を読んだ時に(お前の記事は読んでるよ)という、中居氏からのメッセージが隠されているように思えた。

 繰り返すが、筆者の勝手な思い込みに過ぎない話である。

    "中居氏反論と当サイト主張の一致 筆者の思い"に1件のコメントがあります

    1. 匿名 より:

      今後フジテレビはドラマで性行為するシーンがある場合は必ず事前に同意のサインをするシーンか同意の録音等をするシーンを入れる事を義務付けるべき。

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