”新聞後”どう生きる? 日刊スポーツ新体制の未来

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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わが国で最も歴史のあるスポーツ紙の日刊スポーツ新聞がポスト紙媒体を見据え、4月1日から新体制となった。日刊スポーツ新聞社は持ち株会社の日刊スポーツホールディングスとなり、新聞発行は関連会社の日刊スポーツPRESSから名称変更された日刊スポーツ新聞東京本社に任せ、取材・出稿は2021年設立の日刊スポーツNEWSが行うというもの。とどまるところを知らない発行部数の減少から、生き残りをかけてのデジタル媒体への移行とみられる。
◾️新聞発行は元の印刷社
日刊スポーツ新聞社は3月28日に臨時取締役会を開催、取締役辞任に伴う新任取締役を選任した上で、社名を日刊スポーツホールディングスに変更した。また、関連会社の日刊スポーツPRESSを日刊スポーツ新聞東京本社に変更し、日刊スポーツの発行元とした。取材・出稿は日刊スポーツNEWSが担当する(日刊スポーツ電子版・日刊スポーツ新聞社は4月1日に社名を日刊スポーツホールディングスに変更します)。
この大胆な組織変更は以前から計画されていたもので、日刊スポーツNEWSは2021年に設立され、関連各社からの出向社員で成り立っていたが、2024年度卒(2025年3月)採用で初めての正社員採用が行われた。2025年2月現在で従業員は301名(マイナビ2027・(株)日刊スポーツNEWS)、以前の日刊スポーツ新聞社の編集担当者はほぼ日刊スポーツNEWSに移っている(日刊スポーツ電子版・日刊スポーツの会社案内 日刊スポーツNEWS)。
紙の新聞の発行は日刊スポーツ新聞東京本社が行うが、元は日刊スポーツPRESS、2019年より前は日刊スポーツ印刷社と呼ばれていた会社である。もとの印刷社が新聞発行元になり、日刊スポーツPRESSは3月いっぱいで印刷事業を朝日新聞が100%出資する(株)朝日プリンテックに事業移管するなど、印刷事業から新聞発行事業への切り替えを準備していた(参照・日刊スポーツ来春に新聞印刷事業終了 朝日に委託)。
新しい体制の日刊スポーツは、筆者が在籍した当時は日刊スポーツ新聞社に1つにまとまっていたものが、(整理部を除く)編集・電子メディアは日刊スポーツNEWSへ、整理・広告・販売は日刊スポーツ新聞東京本社へ、企画は日刊スポーツクリエィションへ、総務は日刊スポーツビジネスサポートへと解体されている。
そして持ち株会社の日刊スポーツホールディングスのCEO(代表取締役会長)に支配株主の川田員之氏が就き、引き続きグループ全体の支配権を握る。No.2のCOO(代表取締役社長)に高田誠氏でこの2トップ体制は変わらないが、過去の日刊スポーツの歴史からして社長になってもしょせんは『雇われマダム』にすぎない(参照・日刊スポーツの歴史に残る社長解任劇)。
◾️「新聞発行」がない
この新体制から見えてくるのが、日刊スポーツを新聞”を”発行するメディアグループから、新聞”も”発行するメディアグループにする意向。このことは、社員募集のページを見ると明らか。「日刊スポーツNEWSには社会を明るくする力があります。取材陣は約300人、全国取材網を持つ日本一のデジタルメディアです。」(前出のマイナビ2027から)とあるように、新聞発行については一言も触れていない。
かつての日刊スポーツ新聞社(現・日刊スポーツホールディングス)編集局はほぼそのまま日刊スポーツNEWSコンテンツ本部に移行しており、同社の紹介にも「スポーツ、エンタメ、レースでの日本一の取材力をデジタル界で最大限に生かす。ニュース素材を中心にコラム、企画、連載を含むあらゆるコンテンツを配信する。」と、新聞発行とは書いていない(前出の日刊スポーツの会社案内 日刊スポーツNEWS)。
要は日刊スポーツNEWSは日刊スポーツ電子版(ニッカンスポーツコム、1997年開設)を中心にコンテンツを作成し、その一部を日刊スポーツ東京本社が新聞にして発行するという形。編集局を中心とする会社の中心が、新聞からネットに軸足を移したという見方もできる。筆者は2014年10月まで在籍していたが、当時は紙が圧倒的に主流で、ネット関連部署への異動は左遷扱いされていた。
実際にネット関連部署にいた筆者は、もはや紙の時代ではなく、ネットでより価値ある情報を出すことでしか生き残れない、媒体価値を高めるしか生き残る術はないと考えていた。ところが、当時の編集局は「空いている時間なら、ネットにも協力してやってもいい」といった、完全に見下す感じであった。
(この会社に未来はない)
そう感じたことも、筆者が会社を去る決断の後押しをした。
◾️残された時間は5年?
新体制の目的は、新聞発行に頼っていたら、いずれ立ち行かなくなるという危機感によるものであるのは確実。スポーツ新聞全体の発行部数は2020年以後、前年比でほぼ10%減が続いている。2024年は前年比12.4%減と過去最大を記録。2017年から7年で部数はほぼ半減となり、2000年を100とすれば26.6%と、市場はほぼ4分の1になっている(参照・スポーツ紙過去最大の12.4%減 廃刊ラッシュ間近)。
その結果、2022年に道新スポーツ、23年に西日本スポーツ、25年に東京中日スポーツが紙の発行を中止、電子版に切り替えている(参照・トーチュウの次を占うスポーツ紙消滅ラリー)。業界で1、2を争う日刊スポーツも既に発行部数は20万部程度と推定される。新聞発行から撤退した東京中日スポーツはおそらく発行部数は4万部程度であったと思われる。
現在の発行部数減が加速することは確実との前提で考えれば、日刊スポーツが新聞発行を続けられるとしても5年が限界ではないか。新聞に頼らなくて会社が存続できるようにするために、残された時間は5年程度ということである。
日刊スポーツが生き残るためには、ニッカンスポーツコムにいかに魅力あるコンテンツを掲載できるかに尽きる。確かに筆者が在籍した当時より、有料コンテンツが増えているが、個人的に食指は動かない(日刊スポーツ・プレミアム)。
メインのプロ野球自体にかつての人気がなく、そこでどんなに面白いネタを掘り起こしても、多くの人は「プロ野球に興味がない」と最初から目も向けないと思われる。
◾️最も有能な人材がそのポジション…
筆者は日刊スポーツNEWSの桐越聡社長とはスポーツ部で数年一緒だった。決して悪口ではないが、当時の桐越氏は典型的なサラリーマンに見えた。上司から言われたことは全力で、そしてソツなくこなすが、世間を驚かせるようなスクープや、世間を唸らせるような独自の見解を披瀝するタイプではなかった。
どういう社内力学で社長になったのか分からないが、従来の日刊スポーツの編集方針から、多くの読者を惹きつけるコンテンツを作成するように変える力があるとは思えない。会社が順調な時であれば、従来の成功パターンを踏襲して発展を継続させるのに適任かもしれないが、危機に瀕したこの時期に変革を完遂する役割を求められても荷が重いように思う。この言い方が失礼なら「時期的に適材適所ではなく、彼が今、力を発揮する場は他にあると考えられる」と表現すべきか。
ミスマッチという点では、日刊スポーツ新聞東京本社の吉田昌一社長にも当てはまる。吉田氏は筆者の1期前の労働組合委員長で、1年間、組合活動を共にした。日刊スポーツグループの取締役の中で、筆者が知る範囲において最も有能な人材である。勤め人として筆者は彼の足元にも及ばない。
しかし、吉田氏は業務畑を歩んできて編集経験がなく日刊スポーツNEWSの社長というわけにはいかず、先細りの新聞発行会社の社長を継続するしかない現状。勝手な想像であるが、新聞発行をスムーズに終えてソフトランディングさせることが彼に課されたミッションではないか。それは吉田氏にしか達成できない使命と思うが、そこに最も優秀な人材を投じるしかないのは日刊スポーツにとって苦しい選択と言うしかない。
◾️OBとしての願い
今回の日刊スポーツの新体制構築は、生き残りのために最後のギャンブルと言えるように思う。他のスポーツ新聞と異なり、一般紙の子会社ではなく独立性が保たれていることは、本格的な支援は期待できないが、逆に経営の自由度は保証される。
そうした自由な経営の利点を最大限に発揮して紙の発行をやめ、大幅にダウンサイジングしてニッチなメディアとして存在感を発揮することが唯一の生き残りの方法と思われる。
1人のOBとして会社の存続を願っているが、決して楽観はできない状況にあることは認めざるを得ない。
松田さんの仰るとおり、今回の変革は日刊スポーツにとっては最後にして最大の一手なのでしょうね。
しかしながら、これがダメならもう次がないということでもあり、かなり追い込まれた状況になっていると考えております。
紙の新聞発行が先細りとなる中、数年後に紙媒体を廃止するのは確実という状況でありますが、ではWeb媒体のみで経営が成り立つのかというと、それも難しいのではないでしょうか。
そもそもスポーツ新聞が凋落しているのは、その情報にニーズがなくなっていることが原因であると思いますので、コンテンツの質を高めていかない限りはネットでも見向きもされないことは明白です。
優秀な記者がいなくなり、人材不足となっていると思われる今の日刊スポーツにそれができるのかというと、やはり難しいでしょうね。
それ以上に私としては、今も元同僚が多く在籍しているはずの日刊スポーツ東京本社が捨て駒のような状態になっていることに悲しいものを感じます。
紙媒体をやめた後は切り捨てられてしまうのでしょうかね。
5年で現在の新聞と同程度の収益をネットで挙げる…まず、無理だと思います。現在、有料で公開している記者のコラム、全く食指が動きません。選手を取材する記者より、選手の直接の声(インスタ等で出てくる)を聞く方がよほどためになります。
>>今も元同僚が多く在籍しているはずの日刊スポーツ東京本社が捨て駒のような状態になっていること
これは本当にひどいと思います。新聞発行を元日刊スポーツPRESSの日刊スポーツ東京本社にするのは、新聞の発行をやめても、歴史ある日刊スポーツ新聞社を持ち株会社として存続させるための手段でしょう。そして、多くの記者が移籍した日刊スポーツNEWSは資本金900万円の小企業です。そこらの町工場より資本金が小さいのには笑いました。多分、会社設立時に現金を用意できなかったのだろうと思っています。見せ金は会社法で禁止されていますから。
表に出てきたデータを見るだけで、「終わりの始まり」を感じさせるものでした。
たしかに、近年はスポーツ選手が自身で情報発信することも多く、それがスポーツ紙の情報よりも正確で詳細なものであったりするわけですから、もはやスポーツ新聞に存在価値があるのかという状態ですよね。
今回のグループ再編はまさに「終わりの始まり」なのだろうと思います。
経営陣はこの困難をどう乗り切るつもりなのでしょうかね。
OBとしては辛いですが、はっきり言うと「悪あがき」にしか見えません。新聞から離れてもお金を取れる記者、たとえば増島みどり、島沢優子などはとっくにやめており、稼げる記者がいなくなってから記者の個人のブランドで稼ごうとしても無理でしょう(笑)。
おっしゃるように、もはやスポーツ新聞に存在価値がない状況と言うしかありません。OBとしてそのように言うのは心苦しいものがありますが、OBだからこそ言わなければならないと思っています。
5月から、デイリースポーツ以外の日刊スポーツを含む朝刊スポーツ紙の即売が20円値上げされ、180円となりました(関東)。各紙とも、前回の値上げから約2年で「スパンが早いな」と感じました。
また、社告が別の日ではありながら、「5月から」というのが「申し合わせ」のような気がします。ただ、20円の値上げでは、「焼け石に水」でしょうが。
一方で、「据え置き」したデイリーも「最後の賭け」のような気がしないでもありません。各紙の20円の値上げを逆手にとって「受け皿の役割を担おう」という思惑を感じます。ただ、巨人ファンが報知からデイリーに鞍替えするとも思えず、ご指摘のようにデイリーは、関東での「休刊」のカウントダウンなのだと思います。
随分と前ですが、東京中日スポーツが価格据え置きで頑張っていましたが、東京エリア朝刊6紙の中で真っ先に消えました。これはおっしゃる通り、デイリースポーツに紙廃止のフラグでしょうか(笑
それにしてもスポーツ新聞もペラペラの状態で価格だけは上がっていくという、誰が買うのかなという思いしかありません。OBとして悲しいことです。
いつも拝見しています。
4日のデイリースポーツを見て驚き。
1面と終面ともに
下スペースに広告がありませんでした。
小さいマメ広告があるだけで
ページを記事と写真で埋めてましたね。
意図的とも思えず
作り慣れてないのか
すごく大作りに見えました。
やはり苦しさを
物語っているのでしょうか。
1面、裏1面に広告なし?! それは重症ですね。広告セクションはほとんど機能していないのかもしれません。小さいマメ広告は、おそらく突き出しと呼ばれる3段、5段広告などの上にくっつくものでしょう。
酷い話です。デイリーも年内でさようならかもしれません。
デイリースポーツは本当に厳しそうですね。
デイリーのHPで記事を読もうとすると、広告はしつこいし、おまけにアダルトな広告は出るしで、デイリーのHPで記事を読む気がしません。
Twitterでもそのことに関して、ブーイングが多いです。
そこまでしなければ、経営が厳しいのか…と感じます。