免職教師の叫び(19)影なき闇の不在証明

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 写真家で、中学・高校時代に教師の性暴力にあったとする石田郁子氏がフジテレビに提供した写真の検証結果をお伝えする。3DCGソフトを用いて写真の状況を再現した実験の結果、元の写真には整合性が取れない部分が見つかり、合成された写真に間違いないという結論に達した。フェイク写真などを根拠に鈴木浩氏(仮名)は生徒へ乱暴した教師の汚名を着せられたことになる。

■あるべき影がない写真

写真①と3D画像①の比較

 前回の連載(18)オコタンペ湖写真を検証で、石田氏が鈴木氏とともにオコタンペ湖の展望台で撮影したとするショット(写真①)を3DCGソフト「Shade 3D ver.22 」(株式会社フォーラムエイト)で再現する検証を行ったことを伝えた。

 現場を再現した柵、看板に、石田氏と鈴木氏と同じポーズをしたバーチャルの模型を配した。場所はオコタンペ湖(千歳市)の展望台(北緯42.80189度、東経141.26547度)、太陽光の設定日時は1996年8月1日午後5時32分。太陽光と同じ無限遠光源が再現されたオコタンペ湖の展望台を照らしたのが3D画像①である。

 その3D画像①を写真①と並べてみよう。3D画像①は、支柱とその影の長さの比がほぼ1:4になっており、写真①の状況とほぼ同じであることは見て分かるであろう(参照:写真①と3D画像①の比較)。

3D画像②(製作・松田隆)

 この2枚を見比べただけでは何が問題なのかよく分からないかもしれない。注目していただきたいのは石田氏の右半身(向かって左)と、鈴木氏の右足(手前)。その上で向かって左方向(西側)に回り込んだ3D画像②を見ていただきたい。 

3D画像③(製作・松田隆)

 お分かりだろうか。石田氏の右頭部(顎付近)と、脇の下から胸部にかけて、臀部からふくらはぎ・脛にかけての合計3本のビーム(横棒)の影が確認できる。

 鈴木氏の右ふくらはぎと太ももにも2本のビームの影が映っている。もっと分かりやすい、真横(西側)から見た3D画像③を示す。

 これを見ると、石田氏と鈴木氏の体に映ったビームの影がはっきりと分かるであろう。

■あるはずの影がないのはなぜか 答は1つ

画像A(製作・松田隆)

 ちなみに石田氏の右腕、鈴木氏の右太ももに投影されているビームの影ではない影は、それぞれ支柱③と支柱②の影である。その点は後述する(ビームと支柱の呼び名は前回連載の画像Aを参照)。

 支柱は地面に対して垂直に立っており、3DCGにした場合、人物との水平方向の微妙な位置関係の違いで人体に投影されない場合はありうる。しかし、地面に水平方向に設置されているビームは、至近距離に座っている石田氏、そこからやや離れた位置の鈴木氏には確実にその影を届かせる。なぜなら、2人は最も上のビーム④の影より物体(ビーム④)に近い位置にいるからである。

3D画像①の一部を拡大した画像

  そのため、3DCGの設定が実際の状況と若干の違いがあっても、影の位置が多少、上下にズレることはあっても投影されないことはあり得ない。それは3D画像③を見れば感覚的にも理解できるであろう。

 写真①と3D画像①をもう一度、比較してみよう。今度は注目ポイントを拡大して示す。3D画像①で2人の身体に投影されている合計5本のビームの影が、石田氏提供の写真①では1本もない。石田氏の身体、特に下半身は直射日光がモロに当たって白いパンツが光り輝き、一筋の影もない。

 鈴木氏も同様に1本の影もない。しかもふくらはぎから太ももにかけて向かって左(西)からの太陽光に照らされている。ビームの影が投影されていれば、その部分だけ太陽光が隠れるはずだが、照らされている明るい部分(右足の向かって左端)が途切れることなく、足首から臀部まで連続している。影のように暗くなっている部分はおそらくズボンのシワであり、ビームの影なら、上記の太陽光に照らされている部分を影が横切っているはずである。

 鈴木氏も石田氏も、必ず投影されているはずの影が1本も投影されていないのはなぜか。導かれる解は1つしかない。

ーーシャッターが押された瞬間、オコタンペ湖の看板の前に鈴木氏と石田氏はいなかった。

 写真①は合成されたものであり、真正ではない。これ以外の解があるなら、写真を提供した石田氏には是非とも示していただきたい。

■石田氏の右腕の支柱の影とビームの影

3D画像④

  1点、補足しておく。上記の写真①と3D画像①の比較の画像で、石田氏のビーム③の影が脇の下の部分に投影されており、腕の後ろに隠れているから見えなくて当然と考える人がいるかもしれないため、その点を説明する。

 ビーム③の脇の下の影が腕にはないのは、3D画像①の石田氏の右腕に支柱③の影が大きくかかっているからである。支柱③の影が石田氏の右腕にかかっていない状態で、脇の下にあるビーム③の影がどうなるかは、太陽高度の変更、即ち設定時刻を変更することで実現できる。今回の再現時刻の17時32分から42分前の16時50分に設定したものが3D画像④である。

 支柱③の影が腕にかかっていない場合、脇の下にあるビーム③の影は腕まで伸びてきて、正面近い方向からも、その存在を認識できる。写真①の石田氏の脇の下にビームの影があれば右腕にも投影されるはず。それが右腕に全く影がなく、その上下にもないということは、石田氏の身体にビームの影は全くかかっていないことになる。

 また、鈴木氏の右足に支柱②の影がかかっているのは、真横からのショットである3D画像③から分かる。これがビームの影と交わって複雑な形になっているのはお分かりいただけるであろう。

■鈴木氏「気持ち悪さの正体が分かった」

 なお、今回の設定日時の8月1日17時32分から多少時間をずらして検証してみたが基本的に状況は大きく変わることはない。ビームの影の位置が上下し、支柱の影が左右に若干の移動をするが2人の身体からビームの影が消えることはなかった。

 「Shade 3D ver.22 」を使用してバーチャル空間で再現したことで、写真①が現実にはあり得ないものであることは証明できたと言っていい。写真①は石田氏が過去に自分が持っていた鈴木氏との写真を合成、本人が作出したものであることは間違いない。

 今回の検証結果と3D画像①~③を鈴木浩氏にメールで送り、その感想を聞くと、以下のようなコメントを寄せた。

 「もともと、写真①は全く身に覚えのない写真です。撮影したことが記憶にないのではありません。石田とオコタンペ湖に行ったこともなく、写真撮影もしていないということは記憶としてはっきりしています。ですから、最初に写真①を見た時に『気持ち悪いな』『誰が作ったんだろう』という感想を持ちました。今回、3D画像③を見て、『このように影ができるのか』と新鮮な驚きでした。石田がフジテレビに提供した写真①には、あるはずの影がありません。この検証結果で、初めて写真①を見た時の気持ち悪さの正体が分かった気がします」。

 石田氏は写真家である。北海道大学を卒業後、金沢美術工芸大学に入学し、写真を専攻していたと聞く。写真の加工技術は、一介のライターにすぎない筆者より遥かに上であろう。実際にフジテレビは写真①を全国放送し、トリミングしたと思われるショットを今でも同局のサイトに掲載している(参照:FNNプライムオンライン・性暴力を受けた少女は「交際」と信じた 教師のわいせつはなぜ裁かれなかったか)。映像のプロをも真正と信じ込ませるほどの出来栄えと言えよう。

 しかし、ビームの影の処理を忘れたことで、九仞の功を一簣に虧くこととなった。それは、見方を変えれば、オコタンペ湖の夕日が影なき闇を照らしたと言えるのかもしれない。

第20回に続く)

第1回に戻る)

※九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)に虧(か)く:物事を完成させる直前に、僅かの失敗のために不成功に終わることのたとえ。「仞」は、中国周代の尺で約1.8m。「簣」は、土を運ぶ竹かご。高い築山をつくるのに、最後の一杯の土を運ぶのを怠れば完成しない意から。出典は書経(故事ことわざ活用辞典p238 戸谷高明 創拓社)。

5 thoughts on “免職教師の叫び(19)影なき闇の不在証明

  1. アバター 月の桂 より:

    やりましたね!!
    松田隆の正義のペンは最強です!!

    この事件には冤罪を感じ、初回から記事の更新を心待ちにしていました。張り込みの刑事のごとく、チェックしていました(笑)
    鈴木氏にも朗報を伝えられて良かったですね。詳細な検証、お疲れ様でございました。

  2. アバター 真実 より:

    嘘はいつか剥がれ落ちますね。被害者だと主張される方には、何らかの出来事が要因となって、妄想や幻想を生み出すことはあると思います。ある種の病であって、それは仕方がないことです。
    ただ、私が許せないのは、このような方の支援団体です。本人を煽り、幻想を惑わし、公に出させて問題を大きくします。そして、加害者側の家庭や関係法人を破壊します。彼らは、被害者(と主張する方々)の心の傷を癒すことが目的ではなく、自分達のイデオロギーを通すことだけが目的なのです。
    この他にも、同様の事件など、取り扱っておられますが、もう一つ、取り上げられていない事件があります。これも支援団体は同じメンバーで、現在、訴訟中です。同様の事件が、今回のように明るみにでることは、私の関わる事件を解明する励みになります。
    札幌の事件は、きちんと落とし前を付ける必要があります。この加害者だとする教師の方のためだけでなく、社会の秩序を乱す行為に対して、NOを言っていく必要があります。

  3. アバター 名無しの子 より:

    松田さん。本当に素晴らしいです。感動しました。
    私は最近、ジャーナリストと聞くだけで「うさんくさい」と思っていました。真実を追求するのが目的ではなく、自分の主張を広めるのだけが目的の「活動家」や売れる為には人のプライバシーなど平気で踏みにじる「ゴシップ記者」ばかり、目についたからです。
    でも、ホッとしました。本物のジャーナリストも世の中に存在することを知って。
    ぜひ、これを公にしてほしいです。そして石田氏を、名誉毀損罪だけではなく、虚偽告訴罪で訴えて欲しいです。写真を偽造したり、メールを送って捜査を撹乱しようとしたり(これはまだ石田氏とは限りませんが)、間違いなく、悪意があった証拠ですから。
    この前も書きましたが、9月には、伊藤詩織氏の民事控訴審の口頭弁論があります。そして、もうすぐ検察審査会の結果も出ることでしょう。新井しょう子氏も、結局は、議員をやめさせられましたね。
    嘘をついて、他人を貶めようとするなんて、最低‼️最悪だ‼️絶対に許されない‼️嘘は必ず暴かれる‼️ということを、世間にしっかり知らしめて、二度と、このようなことをする輩が現れないようになって欲しいです。
    松田さん、本当にお疲れ様でした。そして、本当にありがとうございました。
    追伸 この後、この事件がどのように裁かれたのか、また、結果報告、どうぞよろしくお願いいたします。

  4. アバター MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    Good job! さすがです。読者冥利に尽きます。
    「相棒」で『免職教師の叫び』を制作してもらいたいですね。正義のフリーライターとして杉下右京さんを助けてください!

  5. アバター NA より:

    鮮やかな解析に感嘆します。普通なら、これだけの証明が為されたら素直に自分の非を認めるものでしょうが、石田氏やその支援者らは絶対に引き下がらないような気もします。”被害を受けた少女”が、数十年にわたり精神的な苦痛に苛まれ、こんなことをするまでに追い詰められただのと屁理屈こねて逆切れしないでしょうか。

    あるいは、加害者のしたことと比べたら、取るに足りない些細なことだと主張したり。NYのピアノバー(キャバクラ)で知り合ったキー局社員に暴行されたと訴える御仁の、存在しない「検事の叔父」についての記者会見での様子みたいに。

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