報ステ失態 早すぎた立花党首の発言打ち切り
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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NHK党の立花孝志党首が16日の報道ステーション(テレビ朝日系)にオンラインで出演したが、途中退席した。番組プロデューサーから事前にテーマから逸脱した発言をした場合は必要な措置を取ると警告を受けていたとし、大越健介キャスターに発言を遮られ、退席した。17日にはテレビ朝日を提訴することを自身のYouTubeチャンネルで明らかにした。表現の自由への侵害という声もあれば、テレビ局の編集権の範囲内という声も出ている。テーマにそぐわない話を止める権限はテレビ局にあると思われるが、今回の件に関してはテーマから逸脱する前に発言を遮っており、報ステの失態と言われても仕方がない。
■「ここで打ち切らせていただきます」
番組は9つの党の党首が集まり、来る参院選に向けて討論を行うというもの。ロシアによるウクライナ侵攻に関連して、日本の安全保障を巡る議論をする時に事件が起きた。立花氏は以下のように発言した。便宜的に(1)、(2)のパートに分ける。また( )内の赤い文字で示した部分は大越氏の発言である。
(1)テレビをご覧の皆さん、テレビは核兵器に勝る武器です。テレビは国民を洗脳する装置です。テレビは国民が知るべき真実を隠しています。本日お昼過ぎ、テレビ朝日のプロデューサーの方からお手紙を頂戴しました。このお手紙にはテーマから逸脱する発言は控えていただくようお願いいたします。(はい。)万が一そのような発言があった場合、然るべき対応をさせていただくことがあると(その通りですね)、ご承知おきください。(はい。立花さん、今の発言は討論のテーマに沿ったものとはおっしゃる通り認められません。)
(2)これについて電話で話したところ、(発言を止めてください。)スタジオから追い出されますと言われましたので、追い出される前に自ら、(いや、発言を止めていただきましょう。)YouTubeで私の発言をさせていただきます。(趣旨に則った発言をしてください。)はい、あのう、政治家の発言をテレビ局の方が事前に(安全保障の話をしています。)あれをするな、これをするなというような、(申し訳ありません。その発言は認められませんので、ここで打ち切らせていただきます。)介入はやはり恐怖を感じます。はい、ありがとうございま…
以上が立花氏の全発言である。この後、CM明けに小木逸平アナが「先ほど、NHK党の立花党首が発言中でしたけれども、今回の党首討論のテーマから逸脱していると判断しました。立花党首は自ら退席されましたが、このまま8党の党首のみなさんと議論を続けていきます」とアナウンスした。
■テレビ局の編集権
立花党首は自身で退席したと小木アナは語ったが、事前に「追い出す」ことを告げ、大越キャスターも打ち切りを宣言しているのであるから、仮に立花党首が退席しなくても発言を止められていたのは明らか。自ら退席したという事実のみで報ステが排除した事実がなくなるというものではない。
その上で、今回の報ステの措置はどうだったのかを考えてみる。まず、この種の政治家の発言は軽々に排除するようなものではないという考え方がある。1983年の参院選で雑民党の東郷健氏が身体障害者を揶揄する表現をしたところ、NHKが音声を削除。東郷健氏は不法行為に基づく損害賠償請求をして最高裁まで争われた。結果はNHKによる音声の削除は不法行為に当たらないとして、請求は退けられた(最高裁平成2年4月17日判決)。
公職選挙法150条1項は、衆参の選挙において「録音し若しくは録画した政見をそのまま放送しなければならない」と定めている。もっとも、今回の番組は政見放送ではない。ニュース番組における討論番組であるから、公職選挙法の規定が適用されることはない。
問題になるのは放送法であり、3条で放送番組編集の自由が定められている。
【放送法3条】
放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
政党の党首を呼んで討論番組を作成し、あらかじめテーマに沿って議論を求めるのはテレビ局の編集の自由に属する範囲であろう。その意味では、全く関連性のない話を始めたら、番組の進行を妨害するものであり、特に時間が限られている中、9人の党首が集まる討論会では、そのようなテーマに沿わない話をするのは、重大な妨害行為となり得る。
その意味では、芸能人のスキャンダルについて言及するとTwitterなどで明らかにしていた立花党首に事前に警告したことは当然のことと言える。
■疑問が残る大越キャスターの判断
もっとも、今回の立花党首の話を直ちにテーマに沿ったものではない、と断言した大越キャスターの判断には疑問が残る。(1)のパートの最後の部分で大越氏は「今の発言は討論のテーマに沿ったものとはおっしゃる通り認められません。」としているが、果たして討論のテーマに沿ったものではないのか。
この時のテーマは日本の安全保障について。冒頭の「テレビは核兵器に勝る武器です」という発言は、たとえば、憲法9条を死守すべきであるというプロパガンダを流すようなテレビは、日本の敵国にとっては核兵器を保有するのと等しいような効果が期待できるという話の枕とも受け取れる。テレビという媒体が一国の安全保障を危機に陥れる可能性を指摘したものと考えるのはそれほどトリッキーな解釈ではない。
実際に事前のアンケートの「国民の安全 どう守る?」という問いに対し、立花党首は「NHKをぶっ壊す」と答え、それが画面に示されているのであるから、それも合わせて考えると、まさにテーマに沿った話と考えられる。
その上で場合によっては然るべき措置をとることがあるという警告を受けた事実は、自らの発言がそのような危険な立場での発言であることが前提、即ち、完全に自由な状況での発言ではないことを事前に視聴者に示すものである。それも「テレビは核兵器に勝る武器です」の1つの理由と考えられる。
仮にそのことがテーマとは直結はしないと考えたとしても、(テーマについて論ずる場合にはそのような前提での発言であることを理解してほしい)、(場合によっては自らの真意と異なる)というものであるから、全く的外れなことを語っているとは言えない。
(2)については、追い出されるという可能性を指摘し、その場合はYouTubeで発言の続きをするということを伝えるもので、テレビ局の判断で真意が伝わらないことがあった場合にはYouTubeを見てほしいというもの。そして、そのようなテレビ局の姿勢を批判したところで、大越キャスターの(ここで打ち切らせていただきます。)との宣言になっている。
■放送法4条に抵触か
大越キャスターの打ち切り宣言の後に、安全保障の話が始まる可能性はあったように見える。そこまでは警告に止め、その後、予告されたように芸能人のスキャンダルの話になるなどした場合にはスイッチを切るのであれば、それは妥当な判断であると言えよう。
しかし、その前に打ち切りを宣言してしまうのは、テーマに沿わない話と判断するには早すぎる。
結局、立花党首に発言の機会を与えないことを事前に決めていて、テーマに沿わない話をしていないのに、テーマに沿わないと一方的に宣言し、事実上、発言を打ち切ったと見られても仕方がない。その場合、放送の公平性などを定めた放送法4条に抵触するように思う。
【放送法4条】
放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
2 政治的に公平であること
4 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
こうしたことがあるため、2人の弁護士が立花党首にテレビ朝日への提訴を勧めたのではないかと想像している(立花孝志のターシーch【NHKの裏側】・【裁判します】テレビ朝日を提訴する事になりました。昨夜の報道ステーションのNHK党の発言を制止した件で)。
■損害賠償請求の行方
以上のように、報ステ(テレビ朝日)には立花氏の発言を打ち切る権限はあったと考えていい。しかし、テーマに沿わない話をする前に打ち切ってしまったこと、即ち、編集権を濫用したことは、政治的公平性を失する大問題と言っていい。
大越キャスターもプロデューサーの指示に従って打ち切りを宣言したものと思われるが、せめて相手の話をよく聞いてから打ち切りを宣言すべきであった。その意味ではテレビ朝日に対する損害賠償請求が認められる可能性はあるように思う。
NHK党の立花孝志党首は20日、テレビ朝日の「報道ステーション」で行われた与野党党首9人の討論途中で発言を打ち切られたとして、テレ朝などに慰謝料10万円を求める訴訟を東京地裁に起こしましたね。テレ朝はどう出てくるのか楽しみですな。
松田さんの感想である「編集権を濫用したことは、政治的公平性を失する大問題と言っていい。」はヌエの巣窟テレ朝はどう思っているのでしょうね。また、司法の場に引っ張り出されたらどう言い訳するのでしょうか。立花氏のただのパフォーマンスで終わったらシンウルトラマンより面白くないかも。