免職教師の叫び(36)出ない•答えない石田郁子氏

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 中学3年時から性的被害に遭っていたとする写真家の石田郁子氏(44)は、証言台に立たない見通しとなった。28年前の事件を理由に免職された元教師の鈴木浩氏(仮名)が審査請求をしている件で、札幌市の人事委員会での審理に証人として出席する可能性があったが、14日までに出席しないことになったもよう。これにより石田氏の証言が反対尋問に晒される可能性が消え、人事委員会の裁決に影響を及ぼすことが濃厚となった。なお、石田氏は当サイトの出席の可否を問う取材に対し、期限までに回答しなかった。

■市教委の意図は「瑕疵の治癒」

画:鈴木浩氏(仮名)

 札幌市教委が石田氏に証人としての出席要請をしようとした意図は「瑕疵の治癒」にあったと見られる。つまり、石田氏の性的被害を受けたとする証拠・証言を何の検証もせず、反対尋問にも晒さずに、鈴木氏を最も重い免職処分をするという現代の魔女裁判のような方法で処分をした瑕疵と取られかねないことへの対策であるのは間違いない。

 この事件で市教委が2021年の免職処分に先立ち、2016年の時点で鈴木氏を免職できなかったこと等に関する検証結果「平成28年当時の札幌市教育委員会における対応についての検証報告書」(2人の弁護士による検証委員会が作成)では以下のように指摘されている。

・市教委の担当職員は、過去に懲戒処分に関する手続きを担う職務に就いたことがなく、事実認定の理論や手法を学ぶ機会もなかった。処分対象者が否認した場合の事実認定の手法も学べず、参考となる前例も極めて乏しかった。

・石田氏の供述に虚偽が含まれること等を想定しておらず、その供述の信用性を検討する意識自体が希薄であった。

 このように市教委は素人以下と認定されたに等しい表現で、その手法を厳しく非難されているのである(連載(34)札幌市教委の魔女裁判)。

 第三者である検証委員会にこのように断罪された以上、市教委はその失敗をカバーすべく、極めて抽象的に表現すれば「石田氏の証言はやっぱり本当だった、だから処分は正しい」と主張するしかない。こうした方法を行政法上「瑕疵の治癒」と呼ぶ。これは「瑕疵ある行政行為がなされたが、事後的に当該瑕疵が追完される場合」(行政法第5版 櫻井敬子 橋本博之 弘文堂 p95)という意味。

 こうした瑕疵の治癒は、裁判で認められる場合もあれば(最判昭和36・7・14)、認められない場合もある(最判昭和47・12・5)。本件は裁判ではないものの準司法手続きであり、こうした考えに則って裁決がなされる。その場合、石田氏の証言が反対尋問に晒されても、なお、合理性を失わなければ、行政処分、即ち、鈴木氏の免職処分は正しかったとされる可能性はあった。

 逆に、石田氏の証言で虚偽が明らかになれば、その証言を疑うことなく処分の根拠としているのであらば、不当もしくは違法な処分であるとされる可能性がある。その意味で、石田氏が証言台に立つかどうかは、市教委にとって極めて重要であるのは間違いない。

■石田氏からの回答なし

 検証委員会の指摘を受け、市教委としては石田氏を審理の場に呼び出すことを検討したもよう。それは当の石田氏サイドから明らかにされた。石田氏を支援するツイッター「SCHOOL ME TOO 学校での性暴力にNO!」では、石田氏が市教委から受け取ったメールを公開している。

なお、今後の審理において、証人尋問の出席要請をさせていただく場合は、審査請求に関し市教委が選任した代理人弁護士から、別途、ご連絡いたします。

札幌市教育委員会教職員課長

(2022年4月12日午後4時46分投稿

 SCHOOL ME TOO内では当初、カンパの呼びかけがなされ、石田氏が札幌に行く費用がかかることなどもその理由とされていた。証人として出席する場合、市教委が札幌までの交通費を負担すると思われ、何とも先走った呼びかけであると思われるが、それは後日削除された。さらに石田氏は証言するために札幌に行くことを最近では一切言及していない。

 当サイトの取材では、石田氏の証言はなくなったもようである。これが市教委が証人尋問の出席要請をやめたのか、それとも、石田氏が出席要請を断ったのかは分からない。そこで石田氏が鈴木氏らへの損害賠償請求をかけた際の弁護士を通じ取材を申し込み、「審査請求の審理の場に証人として出席するか」「出席要請を受けた上で出席しないのであれば、その理由を示されたい」など4つの質問を投げかけたが、締切時間までに回答はなかった。

 いずれにせよ、石田氏の証言が得られないのであれば、前出の検証委員会が示した「供述の信用性を検討する意識自体が希薄であった」まま、処分をした瑕疵は治癒されないことになる。このことが人事委員会の決定に少なからず影響を及ぼすことは想像に難くない。

■なぜ出てこない石田氏

オコタンペ湖の展望台で撮影したとされる写真。合成されたものと思われる(フジテレビ画面から)

 石田氏はこれまでに自らが受けたとする性被害を公表し、鈴木氏を攻撃し続けてきた。石田氏が鈴木氏の行為を許せないと考えるのであれば、事後であっても自らの証言の正しさを審査請求の審理の場で証明し、鈴木氏の復職を許さなければいい。

 ところが、石田氏はその貴重な機会を利用することはなかった。これまでの石田氏の言動からは、合理性に欠ける行動(不作為)である。なぜ、石田氏は証言から”逃げた”のか。一言で言えば、刑事罰を恐れたと想像する。

 鈴木氏サイドは審理の中で、石田氏が市教委に申し出た証言、証拠には多くの虚偽が含まれていることを指摘しているものと思われる。この連載でも指摘したように、オコタンペ湖での写真は合成されたものであること(連載(19)影なき闇の不在証明)、交際期間について実際より1年早く終わっており、それを証言する共通の友人の証言と食い違っていること(連載(12)CAN YOU CELEBRATE?)、1994年8月2日、塩谷丸山の山頂付近でフェラチオをさせられたという指摘に対しては、鈴木氏は当日、アリバイがあること(連載(5)まるでAV元教え子の証言)など、数え上げればキリがない。

 証人として出席すれば「法律により宣誓した証人」に該当し、その上で虚偽と思われる事実を述べた場合、偽証罪(刑法169条)が成立する可能性がある。同罪の法定刑は3月以上10年以下の懲役。もはや虚偽を言い連ねることはできず、かといって自らの虚偽を認め、真実を語ることもできない。結局、札幌まで行って、審理でずっと無言を通すよりほかなく、それならば出席しない方がいいという考えに至ったのであろう。

■鈴木氏「コメントできない」

 鈴木氏は当初、「証拠と証言で真実が明らかになるのは、私としても歓迎です。」と、石田氏が出席することを望んでいた(連載(35)押し込まれる”被害者”)。これは審理の場で追及することを望んでいたものと思われる。しかし、結局は石田氏は出てこないことになったと思われる。

 なお、鈴木氏は「審理の進捗状況やその内容に関わることのため、石田氏の出欠に関することにはコメントできません」としている。

(第37回に続く)

第35回に戻る)

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