渡邉哲也氏の新著に編集協力 発売直後に重版

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 筆者(松田隆)が編集協力した「世界と日本経済大予測 2024-25」(渡邉哲也、株式会社PHP研究所)が11月2日に発売され、直後に重版(増刷)が決定した。渡邉氏のこのシリーズの編集協力は毎年の恒例となっているが、今回は発売直後から反応が頗るいい。

◾️株価4万円 2024年に実現化

渡邉哲也著「世界と日本経済大予測 2024-25」

 渡邉氏の新著のメインテーマは、端書きにあるように「ビジネスの潮流」である。ここで同氏は大胆に2024年の早い段階に日経株価が4万円台に突入する可能性を示唆している。

 そもそも1989年12月29日の3万8915円87銭を34年も更新できていないことが、日本経済の停滞を如実に示している。まさに失われた30年、株価4万円となれば、そうした鬱屈した思いを払拭するだけのパンチがある。

 11月20日の東京市場の終値は3万3388円4銭と前日から下げたものの、一時バブル崩壊後の最高値となる3万3853円46銭を記録した。渡邉氏は急激な利上げがなければ日本株は当面上がると予想している。果たして4万円台はあるのか。個人的にも気になるところであるし、もちろん、期待もしている。

 日本経済の復活のポイントはいくつかあるが、外的要因の1つは米中のデカップリング。半導体をめぐる米中の対立は深刻で、日米で世界最大の半導体メーカーTSMC(台湾積体電路製造)の工場を誘致(アリゾナと熊本)し、ドイツもドレスデンに工場を誘致している。また、千歳市には日本の半導体メーカーのラピダスが新工場の建設を決めており、産業の米・半導体の大型製造拠点が日本にも誕生する。

 TSMCの工場誘致で熊本県菊陽町は不動産バブルの状態が発生しているという。過疎化が進む他の地方都市を横目に人口も右肩上がり。東京にいるとなかなか感じることは少ないが、こうした勢いのある地方が日本復活の原動力となるのかもしれない。

◾️インドの州を共産党が支配?

 編集協力している中で(こんなことあるの?)という部分もあった。この点は読者にもアピールする部分ではないかと思う。渡邉氏は投資のプレゼンテーションで駐日インド大使館に呼ばれることが多いそうで、インドの事情には詳しい。

 同氏によるとインドはEUのような国家の連合体のような性格の国家であり、各州によって政治も文化もかなり異なる。現在の駐日インド大使の出身地はケーララ州(最南部、インドの逆三角形の頂点の付近)で、この州は共産党が支配しているとか。インド共産党マルクス主義派がトップに君臨しているというから驚きである。

 こうした事情を考えると、国連安保理でインドがロシアのウクライナ侵攻の非難決議を棄権したのも何となく分かってきそうな気がする。

 今、QUADで日米豪印の結びつきが強まり、中国包囲網を形成しつつあるが、インドを簡単に引き込めると思わない方がいいのかもしれない。

◾️各章の終わりにオススメ映画コラム

メディアの未来は?

  今回の新企画で、各章末に映画紹介のコラムを設けた。本文で触れた内容に関するものがチョイスされており、連続性をもって読めるようになっている。

 インドに関する第3章でのおすすめ映画は日本アカデミー賞の優秀外国作品賞を受賞した『RRR』。1920年の英領インド帝国の時代の物語で、派手なアクションと主人公2人が披露する高速ダンスが売り物の娯楽性の高い作品である。GDPで日本に迫っているインドの勢いを感じさせる元気の良い仕上がりとなっている。

 新聞社出身の筆者としては、第5章の中にあるマスメディアの未来が興味深い。既にオワコンの評価も出ている新聞というメディアがこの先どうなるのかは気になる部分。ジャニーズや電通の問題は瀕死の新聞業界に止めを刺すことになるのではないか。

 渡邉氏はメディアをめぐる縦糸と横糸の双方が従来果たしていた役割を果たすことができなくなっている点、読者が主に高齢者である点などから新聞業界の未来は暗いとする。日本経済の復活は、瀕死の産業に市場から退場していただき、あらたな分野の産業にとって代わられる過程の中で実現するのではないかと思わされる。

 そうしたさまざまなことを考えさせてくれる渡邉氏の新著である。定価1485円(税込)。

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