読売調査に信頼性 高市氏が総理の座へ

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 自民党総裁選挙が大詰めを迎え、石破茂氏と高市早苗氏の決選投票が濃厚となっている。各メディアが党員・党友票の調査・予測を行っているが、各社バラバラの状態。その中で調査対象や過去の実績から読売新聞の調査の信頼性が高く、それによれば石破氏と高市氏が決選投票へ進むことが予想される。

◾️各媒体の調査の信頼性

各メディアの党員・党友票の予測

 総裁選は国会議員票は27日の投票日まで流動的な部分はあり、また、1回目の投票で過半数を獲得する候補がいなければ決選投票になり、1回目で上位2位以外の候補者に票を投じた議員票がどちらに流れるかは直前まで分からない。

 その点、党員・党友票は事前に郵送され、1回目の投票で議員票と同じ368票が割り振られることになり、候補者が上位2人の決選投票に進めるか否かに重大な影響を及ぼす。この党員・党友票に関しては各メディアは取材や調査に基づく予測を公表している(参照・各メディアの党員・党友票の予測)。

 それによると、例えば小泉進次郎氏であれば、日本テレビの54票(3位)から、朝日新聞の88票(2位)まで非常に幅広い。高市早苗氏に至っては、産経・FNNが60票(3位)、日本テレビが110票(2位)としている。

 (高市:小泉)の比率をみると、日テレは概ね(高市2:1小泉)、逆に産経・FNNは(高市5:9小泉)と、ほぼ真逆の結論となっている。これでは一般の国民はどれを信頼していいのか分からない。

 各媒体における信頼性を比較すれば、読売・日テレに分があると見るべき。理由は①投票権のある党員・党友への調査であること、②読売新聞の前回2021年の総裁選での調査がかなり正確に党員・党友の票を当てていたこと、の2点である。それゆえ、当サイトも、高市氏と石破氏の決選投票が濃厚という記事を公開している(参照・今度こそ高市総理誕生へ 石破氏と決選投票か)。

◾️朝日などの調査の信頼できない点

 朝日新聞と産経・FNNの調査は電話による世論調査で自民支持層を対象にしている。自民党員・党友は全国に105万人ほどで、2021年の総選挙で自民党が獲得した比例の得票数は1991万余であった。両者はアンケートの母集団としては全く性質が異なる。

自民支持層と党員・党友のイメージ

 党費(一般党員で年額4000円)を納めて積極的に自民党を支持する党員、自民党支持団体(国民政治協会等)の会員である党友は、1900万人程度いると推測される自民支持層の中でも利益関係を持っていたり、自由主義を支えることに強い意識を持っていたり、という核心層と言っていい。

 図で示した濃い青の部分に聞く場合と、濃い青を含む水色の部分に聞く場合、答えが違ってくるのは当然であろう。後者に聞いて予測をしているのが朝日と産経・FNNであり、それらの数値が読売・日テレと大きく異なるのは回答する母集団の違いがそのまま現れたと言っていい。この数値を信じると、実態と大きく乖離する可能性があるため注意が必要である。

 毎日新聞に至っては、県連幹部等への取材で導き出された数値である。都道府県連幹部が地元にいる党員・党友1人ひとりの投票先を正確に把握できるわけもなく、(これぐらいかな)という漠然とした手応えを集合させて出した数値に信頼性などあるはずがない。

 その意味で朝日、毎日、産経・FNNの調査は無視すべきであろう。ちなみに産経・FNNの調査については、注釈として「党員票は、あくまで世論調査の自民支持層で試算しており、実際の動向と異なる可能性がある。」(産経新聞電子版・小泉氏58票でリード、党員票も優位 石破・高市両氏含め決選投票見通し 総裁選議員動向)と書かれている。媒体が「ウチの数値は信頼できませんよ」と言っているに等しい。読者も舐められたものである。

◾️30万人に聞いた?

 注目してほしいのは読売新聞の調査。対象についての説明があり「党員調査は14~15日、全47都道府県で実施し、総裁選の投票権を持つ党員・党友だと確認できた1500人から回答を得た。」(讀賣新聞オンライン・自民党総裁選で高市・石破・小泉氏が競る、決選投票の公算大きく…読売調査)とある。

 党員・党友は全国に105万人しかおらず、それに対して2020年度末の携帯電話契約数は1億9000万件余(総務省・令和3年情報通信白書)であるから、200件電話をしてようやく1人、党員・党友に遭遇できる計算となる。1500人から回答を得るには30万人に電話をかける必要がある。そうすると1日に15万人、仮に15時間オペレーターが稼働したとして1時間に1万人、1分間に166人に電話をしなければならず、およそ現実的ではない。

 おそらく読売グループは自民党の党員・党友の名簿を入手しているのであろう。それをベースに電話をかけて相手が出たら「党員・党友ですか?」と確認し、「そうです」という答えを得たら、アンケートを始めるという方法をとっていると思われる。そうすれば調査方法のところで「党員・党友だと確認できた1500人から回答を得た。」という書き方ができる。

 方法はどうあれ、党員・党友1500人から調査ができたのであれば、おそらく実数と大きく乖離することはない。実際、2021年の総裁選でも同様の手法で調査を行なっている。この時も「党員調査は全47都道府県で実施し、総裁選の投票権を持つ党員・党友だと確認できた1514人から回答を得た。」(讀賣新聞オンライン・総裁選の党員投票先、河野氏41%・岸田氏22%・高市氏20%・野田氏6%…読売調査)と、調査方法を明らかにしている。

 この2021年の際の調査結果に基づく予測は以下のようになっていた。( )内は実際の得票数である。河野太郎177票(169)、岸田文雄94票(110)、高市早苗86票(74)、野田聖子25票(29)

 前回の総裁選では、各候補の予想される党員・党友票の得票数は、実際の得票数の86.0%~117.0%の範囲に収まっている。母集団を絞ったことで、かなり正確に予測できていることがわかる。この実際の得票数との差異を今回に当てはめると、予想される党員党友票は以下のようになる。

石破(84~114)、高市(81~110)、小泉(51~71)

◾️ネット主導で高市早苗政権誕生か

 もちろん、前回の総裁選とは候補者数も、選挙戦の日数も、何より顔ぶれが違う。終盤の情勢によって前回の予想と実際の乖離が大きくなる場合もあるかもしれない。大きな情勢ということであれば、今回は当初トップを走っていたと思われた小泉氏が失速する状況であるが、前回はトップを走る河野氏が大きく失速したというわけではない。堅実な岸田氏が徐々に数値を伸ばし、泡沫候補と思われていた高市氏が終盤追い上げるという展開で河野氏は最初から党員・党友票に関しては上位安定という状況は変わらなかったように思われる。

決選投票はこの2人か(写真は自民党HPから)

 ところが、今回は当初、小泉氏に入るはずだった党員・党友票が激減しているように思われ、その分、追い上げる石破氏・高市氏に大きく積み増される可能性がある。いずれにせよ、読売(それに近い日テレを含む)の調査に信頼性ありという判断であれば、国会議員票で小泉氏が極端な多数を獲得しない限り、石破氏と高市氏の決選投票は間違いない。

 そうなると、決選投票で3位以下の候補に1票を投じた国会議員がどちらを選ぶかで勝負が分かれる。ここに来て麻生太郎氏が高市氏に与するかのような報道もなされており、国会議員に人気のない石破氏よりは、高市氏に分があるということになろう。

 こうしてみると、やはり高市早苗総理が誕生する可能性が高いように思われる。後世の評論家からは「ネットが主導して高市氏が勝利を収めたエポックメーキングな総裁選」という歴史的な評価となるかもしれない。

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