「TVの嘘に気付く高齢者」5年前指摘の評論家が新著
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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経済評論家の渡邉哲也氏の新著「世界と日本経済大予測2025-2026」(PHP研究所)が28日に発売される。当サイトでは「世界と日本経済代予測2021」から5年連続で編集協力を行なった。新著の紹介をするとともに、過去の著書での指摘と5年後の今を見比べてみた。
◾️トランプ当選確実と読み準備
新著の注目は4年ぶりに大統領に返り咲いた第2期トランプ新政権の政策に関する分析、予測である。第2章「規制、規制、規制! 『トランプ・トレード』で再び世界が分断する」でトランプ政権によって発生する10のリスクを予測、解説している。
著書の準備は当然、11月3日の大統領選より前、夏の時期から始まっていた。その時点で2期目となるトランプ新政権の誕生は確実という前提で話が進められた。その頃は選挙戦の情勢を伯仲と報じる媒体が多く、9月中旬にはハリス氏がかなり優位とする報道もあった(例として、日経ビジネス・「米大統領選はハリス氏がかなり優位」 筆者が考えるその3つの根拠、時事通信・ハリス氏、激戦5州で優勢 米大統領選の世論調査)。
こうした報道がなされていた時期(前者は9月17日、後者は8月24日公開のタイムスタンプあり)に、トランプ勝利は確実と読み準備を進めていた事実は重い。実際の投票で獲得した選挙人はハリス氏226人に対してトランプ氏312人という圧勝。時事通信が報じたハリス氏優勢の激戦5州(ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア、アリゾナ、ノースカロライナ)は、全てトランプ氏が制している(NHK・アメリカ大統領選挙2024 開票結果)。
新著はそのような環境で執筆されたことを念頭に読んでいただきたいと、編集協力者としては思う。トランプ新政権のマニフェストはアジェンダ47で明らかにされている。これはビデオメッセージなどで五月雨式に明らかにされたもので、経済では中国の最恵国待遇の撤廃や米国企業の対中投資を阻止するなど、中国に対する厳しい姿勢が際立っている。
こうした困難と思われる政策を実際に実行するのがトランプという男で、実際に第1期政権ではTo Do リストの90%近くが実現しているという。米中の対立が決定的になることが確実な4年間をどうとらえるかはビジネスマンとして必須であろう。
トランプ新政権以外で注目したいのは原発問題に関する考察である。台湾の大手半導体メーカーのTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.=台湾積体電路製造股份有限公司)が熊本県の菊陽町に新工場を建設し、現地がバブルの状況になっていることは知られているが、半導体工場の運営には大量の電力供給が必要なことは案外知られていない。その絡みで原子力発電所の稼働が問題になる。同様に現在、北海道千歳市で日本のラピダスが半導体工場を建設中で、これを軌道に乗せるためにも電力がネックになる。その観点から原発問題を考えていくと、近未来が見えてくる。
そうした部分に興味がある方は一読されることをお勧めする。
◾️兵庫県知事選挙と高齢者のテレビ離れ
当サイトが渡邉氏の著書に編集協力するようになって7年ほどになり、「世界と日本経済大予測」への協力は5年連続となる。ここで2020年に発売された「世界と日本経済大予測2021」を読み返してみると面白い。
11月17日投開票の兵庫県知事選挙は、失職した斎藤元彦氏が当選したが、SNSでの世論形成が大きな力となったことは知られている(NHK・テレビ・新聞よりもSNS?兵庫県知事選挙で何が?)。Mr.サンデー(フジテレビ系)では高齢の女性がオールドメディアよりYouTubeの方が正確に伝えるという趣旨のコメントをして、それをテレビが流したことが話題になった。
こうしたオールドメディアへの不信について、5年前の著書でコラムで扱っている。
「テレビ離れ」は若者だけに限らない。じつは高齢者層もテレビを見なくなってきている。理由の一つに、偏った報道が通用しなくなったことが挙げられる。ユーチューブやSNSの視聴習慣が高まり、テレビの報道が偏っていることに気が付き始めたのだろう。…筆者もよく高齢の方から「いままでテレビや新聞しか見ていなかったから、『教えて、ワタナベさん』(筆者のユーチューブチャンネル)は目から鱗でした。私、騙されていたんですね!」と声をかけられる。テレビや新聞を支えていた団塊の世代以上の人たちが、目を覚ましつつあるのだ。(世界と日本経済大予測2021 p198-199)
この件(くだり)は編集協力した筆者も覚えているが、5年後にここまで明確に、しかもオールドメディアで報じられるとは予想しなかった。旧媒体も無視できない状況となった、同時に危機感を持ってきたということと思われる。
◾️5年前の著書での指摘
それ以外にも注目すべき5年前の予測がある。金(Gold)の価値上昇である。当時の日銀の金融緩和策によって金の価格の上昇は必然としている。
通貨の増量をすれば、株式は理論的に上がる。金(ゴールド)の場合は、絶対量が決まっており、通貨価値が希薄になれば(増量されれば)、金は相対的に通貨より強くなる。同じ貴金属でもプラチナはエンジンの触媒用途が多く産業界の景気動向に左右されやすいのに対し、金は資産運用のパーセンテージが高い。金本位制の流れからの資産性があるので、「通貨の希薄化=金の高騰」が起きている。田中貴金属のデータでは1グラムあたり小売価格がコロナ禍前の2020年1月には月平均5524円だったのが、9月には6597円にまで上昇した。(世界と日本経済大予測2021 p180-181)
2024年10月の月平均価格は1万2978円まで上昇している(田中貴金属工業・過去5年間 月次金価格推移)。金は長期保有が原則とされるが、2020年1月に購入した方は2倍以上の価格になっているのだから、さすがに売り時かもしれない。
バイデン大統領の老化の問題についての言及も覚えておきたい。2020年の大統領選挙はバイデン氏が勝ったが「一方、対立候補のバイデン氏は孫の数を間違えるなど認知症の症状が見えてきている…」(世界と日本経済大予測2021 p68)とその時点で警鐘を鳴らしていた。認知機能の低下が明らかなバイデン大統領が、次の大統領選に出馬しないことを表明したのは2024年7月21日。その4年前に認知機能の問題を取り上げていたことは指摘しておく。
◾️客観的な指摘にとどめた理由
当サイトでは編集協力しているだけに、渡邉氏の著書の売り上げが多少なりとも経済的な恩恵に繋がる部分があるのは確か。
とはいえ、令和電子瓦版としては客観的な報道を心がけており、そちらをより重視しているのは多くのユーザーの皆さんも分かっていただけていると思う。
そのため、同著の紹介に関しては可能な限り客観的な指摘にとどめた。恣意的な報じ方はせず、ユーザーの判断を一定方向に導かないように心がけた。どう受け止めるかは、あくまでもユーザーの皆さんの判断である。
本体価格は1550円(税別)。