社長会見という名の茶番 スポンサー逃げ出す
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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中居正広氏の女性トラブル等に関して17日、フジテレビの港浩一社長が同局で会見を行った。動画撮影は禁止、記者クラブ加盟社以外の機関は排除、事実上のノーコメント連発と、会見を開く意味が感じられない内容と伝えられている。大株主である米投資ファンドのダルトン・インベストメンツからの要望や、収まらない世論の怒りの声に対応するためにアリバイ作りのような会見はもはや茶番とでも言うべきもので、直後に日本生命やトヨタ自動車など大手クライアントもCMを見合わせる事態になっている。同社長のトップとしての資質の欠如は明らかで、もはや退陣は必至の情勢と思われる。
◾️内容はスカスカの会見
テレビ局の社長の会見というのに同時配信なし、映像なし、記者クラブ加盟社以外は締め出すという報道を生業とするメディアとは思えない対応で始まった会見は、予想通り内容もスカスカと言っていいものであった。
以前にコメントを出したとおり、中居氏の案件は社員の関与がないこと、また第三者の弁護士を入れての調査委員会を設置すること明らかにした以外は、実質ノーコメントを連発したようである。
「日刊スポーツ調べでは会見でのフジテレビ幹部の答弁で、『先ほど(冒頭に)ご説明した以上のご回答はございません』が11回、『お答えできない』が7回、『(調査前で)回答は控えさせてください』が19回、『これ以上は控えさせていただきます』の回答が11回。計約50回にのぼった。」(日刊スポーツ電子版・フジ社長会見で「答えられない」が約50回 ほぼ全ての質問に具体的な説明なし)とのことで、報道によれば、何のための会見なのか全く理解に苦しむ内容である。
中居氏のトラブルは2023年6月の時点で把握し、中居氏側からも報告があったとされるのに、そこから会見が行われるまでに1年半の月日が経っている。公表が遅れたことについては「当事者2人の場に起きた極めてセンシティブな内容でした。極めて秘匿性の高い事案と判断していました。心身の回復とプライバシーの保護を最優先にしていた」(日刊スポーツ電子版・フジ港社長が謝罪、23年6月に中居正広めぐるトラブル把握していた「極めてセンシティブ」)とのことであるが、実質ノーコメントの連発の内容を見ると、週刊誌での報道があって世の批判が集まったから仕方なく対応したと考える者がほとんどであろう。
もし、週刊文春等の報道がなければ、おそらく真相は闇の中に葬り去られていたに違いない。それを公表が遅れた自らの瑕疵を被害者の女性のプライバシーを理由に正当化しているとしか思えない。
ホテルのスイートルームで飲み会を実施し、騙し討ちのように女性アナをそこに呼び出して、わいせつな行為の対象とされるような行為をさせるという、女性アナの人権を著しく侵害する行為がフジテレビの社員によって行われた疑いが濃厚であるのに(参照・中居氏”新たな被害者”報道 問題の根源フジの体質)、そのトップが「女性の人権を最優先で考えて公表しませんでした」というのは出来の悪い冗談としか思えない。
そのようなエクスキューズ自体信じ難いが、それが一般社会で通用すると考えているテレビ局のトップが存在することは、さらに信じ難い。
◾️報道の自由を享受しながら…
また、テレビ局のトップが会見をするというのに動画撮影は不可、同時配信不可、記者クラブ加盟社のみの参加としたこともメディアとしてのあり方を考える上では見逃せない。フジテレビを含む産經グループは、企業の不祥事などでは正義の使者の如く振る舞っていたのではないか。朝日新聞の慰安婦報道に関して報道のあり方について厳しく問い糺していたのは多くの人が認識している。
スポーツニッポンの競馬面が、産經グループの競馬専門紙の掲載記事(関係者のコメント)を盗用していた1997年の事件(参照・諭旨解雇スポニチ記者 雉も鳴かずば打たれまい)では、産經グループの多数のメディアを挙げてスポニチ叩きを行った。勝ち馬に乗った時の産經グループは、相手が動かなくなっても叩き続ける峻烈さを感じさせる。
その産經グループのフジテレビが自社の不祥事となると真実を明らかにするどころか、真実を明らかにしようと取材する人々を会見上から締め出す、質問をさせないというのであるから驚かされる。
メディアの人間であれば、博多事件の最高裁決定は知らなければならない。
「事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあることはいうまでもない。また、このような報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する」(最高裁決定昭和44.11.26)
憲法で保障された報道の自由、取材の自由を行使して社会に貢献すべきマスメディアが、多くのマスメディアの報道の自由、取材の自由を制約して自らの立場を有利にしようというのであるから、もはやフジテレビにはマスメディア、報道機関としての資格はない。
今、政党の会見などで話題となっているフリーランスの記者の締め出しは会見の円滑な進行を妨げることが確実な者を排除する目的からやむを得ない部分はあるが、フジテレビはマスメディアの多くを締め出し、その理由の1つとして会場のキャパシティを挙げるというのであるから、とても同一には語れない。
港社長が報道畑出身ではないことから、このあたりの機微に疎いのかもしれないが、それはが理由になると思っている人など皆無に等しいのではないか。
◾️港社長退陣は不可避か
この茶番劇にスポンサーの動きは素早かった。日本生命と明治安田生命は当面の間、フジテレビでの自社CMの出稿を見合わせ、トヨタ自動車あ18日からフジテレビで放映している自社CMをACジャパンに切り替えた(讀賣新聞オンライン・日本生命と明治安田生命、中居正広さん問題でフジテレビのCM見合わせ…トヨタはACジャパンに切り替え)。
フジテレビの幹部は、これらのスポンサーの動きが会見に対する社会の評価であることを理解すべきであろう。
一連の動きを見る限り、港社長がメディアのトップとしての資質に欠けるのは明らか。自らも調査委員会の調査対象となっていることも含め、もはや退陣は避けられない状況と思う。