自民大敗 自爆スイッチ押した岸田前首相らの愚

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 衆議院総選挙(10月27日投開票)が行われ、自民党が公示前の247議席から56議席減の191議席と惨敗を喫した。単独過半数の233には遠く及ばず、24議席だった公明党と合わせても過半数に到達しなかった。石破首相は国民民主党に秋波を送るが先行きは見通せない。歴史的大敗を喫した原因は、9月27日の自民党総裁選で石破茂首相を勝たせた岸田文雄前首相ら、自民党国会議員の政治センスの無さ、先を見通せない政治家としての資質の欠如にあると思われる。

◾️国民民主党に秋波

応援演説中の石破首相(同氏Xから)

 自民党は200議席を割る惨敗で、現役閣僚である牧原秀樹法相、小里泰弘農相が落選、丸川珠代元五輪相、武田良太元総務相、甘利明元幹事長らの大物議員も議席を失った。いわゆる裏金問題に関連した46議員のうち、当選したのは僅かに18人に過ぎなかった。公明党も公示前32議席から4分の3の24議席と激減した。与党の過半数割れは2009年の総選挙以来15年ぶり。

 逆に大勝したのが立憲民主党で公示前98議席から50議席増の148議席、国民民主党は7議席から28議席と4倍増となった。

 自民党大敗の予兆はあった。石破政権誕生後に行われた時事通信の世論調査では支持率28.0%と、2000年以降の内閣発足時で最低を記録した(JIJI.COM・石破内閣支持28%、発足時最低 比例投票先、自民26%・立民10%―時事世論調査)。岸田内閣では40.3%、その前の菅内閣は51.2%と、それなりの”ご祝儀”相場の数字を記録したが、発足後いきなり2割台という、滅多に見られない不人気ぶりを示していた。

 それにも関わらずに、総裁選からちょうど1か月後の10月27日に総選挙に打って出た。素人が見ても”それは悪手”という手を打って、この惨敗である。石破総理は選挙前は自公で過半数を目標としていた(朝日新聞DIGITAL・自民・公明、15年ぶり過半数割れ 石破首相の目標議席に届かず)が、それに届かなかったために当然、責任をとって身を引くと思われるが、28日午前の段階で、その気配はない(日本経済新聞電子版・首相ら「続投」意向、責任論は必至 首相指名選へ波乱含み)。

 それどころか国民民主党に協力を呼びかける意向と報じられている(讀賣新聞オンライン・石破首相、辞任せず国民民主に協力呼びかけ政権維持図る意向)。国民にNOを突きつけられてもなお、権力の座に恋々とする様子は見ていて痛々しい。

◾️自爆スイッチ押した岸田前首相

 9月の自民党総裁選では、第1回の投票でトップだった高市早苗氏に対し、決選投票では石破氏が189の議員票を集めて総裁の座を射止めた。最終的に勝敗を決したのは、岸田文雄総理であったと言われる。投票日前に石破氏の訪問を受け、岸田政権の路線を引き継ぐ確約を得たこと、また、高市氏では公明党との関係が危うくなること、靖国神社参拝で中国との関係がおかしくなることなどから、石破支持に動いたとされる。

写真はイメージ

 岸田氏は総理として最後の内閣支持率は、前出の時事通信の調査では18.7%と2割を切っていた。自らが解散総選挙をしていたら、惨敗を喫するのは自明で、そのために身を引いたのであろう。岸田内閣のやり方そのものが国民の支持を失っていたわけで、それを引き継ぐと約束してくれたから石破氏を支持するのは、国家国民よりも、自らの3年に渡る政権の仕事を否定してほしくないということだったと思われても仕方がない。

 そこで自分は大敗する選挙の責任者の役割から降りて、石破氏に押し付けたという見方も可能であるし、実際、そう考える人も少なくないと思われる。

 いずれにせよ、自民党は石破首相の責任の下、選挙戦を戦い、その結果の目標未達であるから、当然、石破首相、森山幹事長は責任をとって身を引くべきだが、どうやらそうした世間の当たり前の感覚も理解できないようで、残念と言うしかない。

 石破首相は2009年、農水大臣という現役閣僚でありながら、当時の麻生首相に退陣を迫ったとされる。他人に責任を求めるのであれば、当然、自らも責任を全うすべきが政治家というよりも人間として当然の務め。

 総裁選勝利後、麻生元首相に党最高顧問という役職を復活させて就任を依頼した。自民党の顧問の役割は「総裁又は党執行機関の諮問に応じて意見を述べるものとする」(自民党則70条)というもの。それならば、まず、石破首相は麻生最高顧問に党総裁としての責任についてどうすべきかを諮問するのが筋である。それをしないのであれば、何のための最高顧問就任依頼なのかということになる。

◾️勝負事の鉄則

 結局、今回の事態を招いたのは総裁選で最後に石破支持に動いた189人の国会議員であり、当時の岸田首相と言っていい。政治の世界に生きる人々に政治のことを語るのも烏滸がましいが、よく考えていただきたいのは、民主政治・政党政治は国民から支持を受けるという絶対的な戦いであるが、同時に、限られた議席を野党と争うため、対野党という相対的な戦いでもあるということである。

 岸田政権が支持率2割を切る惨状では、まともに選挙をしても勝ち目がないのは目に見えている。そうであれば、相対的な勝負という点に重きを置き、野党が最も嫌がる相手をぶつけるべき。

 勝負事で相手が「この人は与し易い」と感じる者をわざわざぶつける指導者などいない。「この人だけは勘弁して」という相手をぶつけてこそ、相対的な勝利を得られる。選択的夫婦別姓制度など野党の主張に迎合する石破氏なら野党からの反発も少ない、政権運営もしやすいという程度の認識なのか、石破氏に投票した189人の国会議員の絶望的な政治センスが今回の事態を招いたと言っても過言ではない。こうなることも分からずに自爆スイッチを押したと思えば、勝ち馬に乗った議員らが責任をとって落選したことは納得がいく。

 可哀想なのは高市氏を支持して、結果、落選した人たちである。しかも、小泉進次郎選対委員長は責任をとって辞意を表明している(JIJI.COM・自民・小泉選対委員長が辞意 石破首相、政権立て直し急ぐ)のに、直接の責任者である総理総裁、幹事長は権力の座にとどまろうとしている。

◾️地位に恋々とする政治家

麻生太郎氏(公式サイトから)

 政治家が地位に恋々とするのは、その後の評価を著しく毀損する。麻生太郎元首相が今でもキングメーカーの地位を保っているのは、大敗の予想を前でも地位を投げ出すことなく、最後まで指揮をとることが責任を全うすることという覚悟があったからこそ。

 負けても責任を取らない石破首相、負けそうな選挙を前に逃げ出し、大敗する総裁を誕生させた、一度も責任を取っていない岸田前首相、まともな議員なら、彼らについていこうとは思わないはず。

 当サイトでは石破新総裁が誕生した2日後に以下のように書いている。

 「個人的な見解であるが、政治センスも政治家としての確固たる信念にも欠ける岸田総理が『高市より石破がベター」』という判断をした時点で、石破政権は国民の支持は得られないように思う。」(高市氏惜敗も”次”は間近? 刷新できない自民党

 もちろん、高市首相の下での解散総選挙でも今回ぐらい、あるいは今回以上に負けた可能性はある。それはあくまでも可能性の問題で、可能性のみを論ずれば大勝した可能性も、また、ある。

 しばらくは政局に目が離せないが、ウクライナとイスラエルで戦争状態になっている緊迫の国際情勢の中、総理が椅子取りゲームの椅子にしがみつこうとしている状況には絶望感を抱くしかない。

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