新型コロナ・キャバ嬢で台湾メディア暴走
葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼
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■もはや報道被害 基本的人権はどうなった?
また、Aさんが働いていた店のレシートの画像がネット上に出回ると、自由時報は4月10日の電子版でその画像を掲載。実際のホステスの名前はモザイクがかけられていますが、ピンクの罫線がかけられた上から4番目がAさんであろうとしています。
仮にこのレシートが本物であるとすると、Aさんは350台湾ドル(約1000円)のサービスをしていますから、これはいわゆる「顔見せ」と思われます。上から2番目の人が2万台湾ドル(約7万円)のサービスをしており、これが売春かもしれません。あくまでも可能性があるというだけの話です。
考えていただきたいのは、レシートが本物であったとしても、この記事が新型コロナウイルスの感染拡大の話題との関連性がほとんど見出せないことです。Aさんが働いていたキャバクラでは売春が行われていたことは推測できますが、Aさんがそのようなことをしていたかは分かりません。売春していたら濃厚接触があるということを報じたいのかもしれませんが、記事を見る限り、そのような視点ではありません。
そもそも新型コロナウイルスに感染したことで、(あなたの職場では売春をしていた人がいるように思われる)と真偽不明の書類(レシート)を根拠に報道しても基本的人権の侵害にあたらないと考えていることが大問題でしょう。これが台湾のメディアの実情です。
■台湾のニュースは“ワイドショー”
「台湾のニュースは、日本のワイドショーの位置づけ」。このことは在台の日本人の共通認識と言っていいと思います。
なぜ、このようなことが起きるのか。ひょっとすると、以下のような歴史的経緯を辿ったのかもしれません。
87年の戒厳令解除→メディア規制解除→規制なしに報道できる解放感→厳しい規制からの反動→欧米に倣って24時間専門チャンネル→人口2500万人程度の国で24時間もたせるほどネタが無い→とにかく何でも報道→ワイドショー化
こうしたことは、結果として国民にしわ寄せがいくことになります。今回の件ではAさんが心身ともに苦しんでいるであろうことを思うと、他人事ながら胸が痛くなります。早く病気を治し、心休まる時が訪れてほしいと願うのみです。
私にとって第二の故郷と言っていい台湾ですが、メディアの倫理観のなさだけは何とかならないのかといつも感じています。
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