6年ぶり復活 調布野川の夜桜ライトアップ

松田 隆
@東京 Tokyo
調布市を流れる野川で8日夕、桜のライトアップが行われた。コロナ禍で2019年に行われたのを最後に途絶えていたが、今年6年ぶりに復活。多くの市民が訪れて夜桜見物を楽しんでいた。
点灯の6時前から人の波
野川沿いの遊歩道に沿って植えられているソメイヨシノをライトアップするイベントは、調布市民にとって欠かせない存在となっている。コロナ禍で2020年に中止になってから5年、ようやく復活する日が来た。
同市佐須町付近の約850メートル区間でライトアップがされるが、点灯前から人の波ができ、午後6時の点灯後、遊歩道は一方通行となって反時計回りに制限された。
警察官も警備にあたっており「立ち止まらないでください」と呼びかけ、多くの人は歩きながら動画や静止画を撮影していた。例年数万人の人出があるとされ、その人数が両岸850メートル、合計1700メートルの遊歩道に集結するのであるから、相当な人口密度となる。
ライトアップはこの日だけ、しかも午後6時から午後8時30分までの2時間半となっていることから、復活したイベントを見逃したくないと考えたであろう人たちが暗くなるのを待ちきれないかのように押し寄せた。
照明機材を扱う会社が無償で開催
このイベントは地元の株式会社アーク・システム(代表取締役・武藤光哉氏)によって行なわれている。同社は1990年の設立、ホームページによると「TVCM、PV、映画撮影等の照明機材レンタル及び製作、販売、消耗品販売、全国一円でのロケーション対応」を業務内容とする。同社に聞くとライトアップのイベントは「20年以上前から開催している」とのこと。今では調布市も手伝いをしており、民間で始めたイベントが行政を巻き込む形で盛んになってきた。
このイベントを始めたきっかけについて「旧社屋、野川に咲く一本の桜を従業員の花見用にライトアップしたのが全てのはじまりでした。」と同社のホームページで説明されている(アーク・システム・【5年ぶりに開催決定】野川の桜ライトアップ 2025)。
その後の経緯については地元メディアが「同社が2002年に移転となりライトアップを見送る予定だったが、惜しむ同市民らが『野川の桜ライトアップを楽しむ会』を結成。同社が無償協力し、地域ボランティアの協力を得て継続している。」と紹介している(調布経済新聞・調布「野川桜ライトアップ」開催日決定 一夜限りの幻想的な夜桜)。
イベント実施の理由
社員の花見で始まったライトアップが、今では数万人を集めるイベントに成長しただけに、開催も簡単ではない。「関連する役所、調布警察署や、調布消防署など、全てに(必要な)許可をいただいております。野川の河川敷は建設事務所(東京都建設局)の管轄になりますが、そちらの許可もいただいております」と同社は説明する。
こうした手間と費用をかけてイベントを行う理由は「地域住民の方への日頃の感謝ということです」と話した。
調布市は角川大映スタジオ、日活調布撮影所があり、約40社の映画・映像関連企業が集まっている(調布市・映画のまち調布)。このため、同市は「映画のまち調布」をキャッチフレーズにして地域振興を図っている。映画「花束みたいな恋をした」(2021年、土井裕泰監督)では有村架純さんらが、今回、ライトアップをした現場から数百メートル上流の地点にある御塔坂橋横断歩道でロケを行なっている(調布観光ナビ・映画「花束みたいな恋をした」ロケ地)。
アーク・システムも映画関連の業務を行なっており、自社の有する技術を利用して地元への貢献を考えているのであろう。
人口増加が続く調布市
昨今、日本では人口減が続いているが、調布市は2000年に19万6065人だったものが、2025年3月1日現在で23万9167人(住民基本台帳から)と、20%以上増加している。
京王線で新宿から特急で20分と便利な場所ということもあって居住地として人気が高まっていることが背景にある。
6年ぶりに復活したイベントに多くの人が集まり、その賑わいから市の勢いのようなものを感じさせられる。