高梨沙羅&独選手狙い撃ちか ポーランド検査官

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 北京五輪のジャンプ混合団体で高梨沙羅選手がスーツの規定違反で失格となった件で、ポーランドの機材検査官の存在がクローズアップされている。同国のメディアなどが報じたもので、スーツの違反がひどく、それに対抗するための措置であったという。その結果、ポーランドが有利に競技を進める結果になっているように思える。高梨沙羅選手とカタリナ・アルトハウス選手を狙い撃ちしたのではないかという疑惑が生じる。

■機材検査官はポーランド人女性

写真はイメージ(大倉山シェンツェ)

 2月7日に行われたジャンプ混合団体は、波乱の結末となった。1回目で高梨沙羅選手、ダニエラ・イラシュコ選手(オーストリア)、カタリナ・アルトハウス選手(独)が失格。2回目ではアンナオディネ・ストロム選手、シリエ・オプセト選手(ともにノルウェー)が失格した。

 最終的にスロベニアが金メダルを獲得し、銀メダルはROC(ロシア五輪委員会)、銅メダルはカナダと失格者が出ない国が上位を占め、1人失格の日本とオーストリアが4位、5位となり、以下、失格者なしのポーランドとチェコが6位、7位で、2人失格のノルウェーが8位という結果となった。ドイツは2回目に進めず9位。

 試合結果よりも次々に失格となる選手の方に注目が集まったが、10日になって、失格にしたポーランドの機材検査官の話が出てきた。

 女子選手を担当した愛称”アガ”こと、アグニエスカ・バチコフスカ氏(女性)で、ポーランドのニュースサイトのFACTなどが9日までに報じたという。記事の中でアガ氏は以下のように語っている。

 「違反者は全員、スーツのサイズが大きすぎた。それも5ミリや1センチという程度でなく、もっと大幅にオーバーしていた。今年はみんな(スーツのサイズが)本当にひどかったから、それに対抗しなければならなかった。決断には一切、疑念を抱かなかった。」(以上、東京中日スポーツ電子版・高梨沙羅ら5選手を失格させた検査官「今年はみんなスーツのサイズが本当にひどかった、それに対抗した」決断に胸を張る から)

 これによると、アガ氏の検査官として、選手にルールを守らせ、競技を公正公平に実施するという正義感ゆえの行為のように映る。しかし、五輪という大舞台でいきなり5人も失格にすることがジャンプという競技のためになるかと言われると首を捻らざるを得ない。もしかすると、アガ氏には別の目的があったのではないかと勘繰る人が出てきても不思議はない。

■勝手な推測ですが…

表1:個人NHの1本目成績

 僕はスキーのジャンプには特別詳しいわけではなく、しかも取材もしていないので、詳細は分からない。ここから先のことは、表に出ている記録をもとにした、勝手な推測である。そして、ポーランドやポーランド人に対する偏見や差別ではないことを予めお断りしておく。

 まず、読者の皆さんには、自分がポーランド人で、女子選手のスーツ検査をして失格にできる権限があり、そして、ポーランドチームを2本目に進めたい、できればメダルを獲得させたいという思いがあると仮定していただきたい。そのような状況にあれば、いつ、誰を失格させるのが一番効果的かと考えるであろう。

 ジャンプの混合団体は、今回から採用された新競技である。出場は10チーム、まず1本目を飛び、ポイントで下位2チームが脱落し、残った8チームで2本目を飛び、最終的な順位を決める。メダルを獲得するためには、1本目で8位以内の入らないといけない。

 今回の10チームで開催国の中国はずば抜けて弱く、1本目10位はほぼ決まりと言っていい。問題は9位がどこのチームになるかである。出場10チームの力はどのようなものかを知るには、直前に行われた男女の個人ノーマルヒル(NH)の結果が参考になる。今回の団体戦で出場している選手はほとんど個人戦に参加しており、彼らの1本目の記録を集計したのが「個人NHの1本目成績(表1)」である。男女の選手で最終成績が良かった方を男1、女1としている。

 ご覧のようにポーランドは8位で、2本目に進めない可能性は十分にありそう。数字上、当面の敵はカナダであるが、カナダの「女2」のA.ルティ選手は個人戦の第1ラウンドで脱落しており、1本目を飛んでいない。もともとA.ルティ選手はそれほど弱い選手ではなさそうで、混合団体では1本目で84.0mを飛び87.6ポイント、2本目には90mで101.4ポイントを挙げている。個人戦は大失敗ジャンプだったものと思われ、団体戦では巻き返してくる可能性がある。

 一方、ポーランドの女子選手2人は個人戦38人中、35位と36位という正真正銘の弱い選手。ところが、男子の2人の選手D.クバツキ、K.ストッフは個人戦で3位と6位という強豪。男子の個人戦のポイントを出場チームで比較すると、オーストリアの528.9ポイントに次ぐ526.8ポイントで2位と、日本はもちろん、優勝したスロベニアをも上回る。

 このような状況から、順当に行けば中国と共に脱落するのはポーランドという予測はつく。当然、”アガ”氏も検査官でありながらもFISの職員として自国の心配をしていたに違いない。

■2本目に進むために

 自国チームはメダルはおろか、2本目に進めない危機。しかし、男子はトップを争う実力者2人とあれば、(何とかしたいな)と思うのが人間というものであろう。そこで、ライバル国の女子選手を失格にできる権限が自分にあることに気付き、実際にスーツの違反があまり取られていないことから、ルールを厳格に適用して失格にさせようと悪魔の囁きが聞こえることもあるのかもしれない。

 メダルを獲得するには、2本目に進まないといけない。そのために、どの国のどの選手を失格にするのが効果的か。下位を争うチェコやカナダの選手を失格にすれば確実に2本目に進める。しかし、 弱いチームを失格にしても、メダル獲得には遠い。スーツの規定違反で失格という手段を使うなら、強いチームの選手を失格にした方がいい。2本目に進んだ時に、自国のメダル獲得の可能性は高まるからである。1本目は2人を失格にする必要はない。1人で十分である。ただし、弱い選手は獲得ポイントも少ないため、強い選手、ポイントを稼ぐ選手を失格にしなければ、僅差で自国が敗れるリスクはある。

 あらためて表1を見ていただきたい。ポーランドより強いと思われる国で、女1、女2の差が大きいチームはどこか。もうお分かりであろう、ドイツと日本である。

女子を失格させた場合の順位の変化

 ドイツの団体出場選手は個人戦で2位のK.アルトハウス選手と22位のS.フライタク選手であり、日本は同4位の高梨沙羅選手と13位の伊藤有希選手。女1を消せば、残る女2は22位と13位と一気に戦力ダウンとなる。

 一方、スロベニアは女1が個人戦優勝、女2が同3位であり、一方を消しても残る1人が得点を稼ぐので失格にする旨味がない。表1から高梨・アルトハウスを失格させた場合のチーム得点を表2で示した。ドイツには16.4ポイント差をつけ、日本とは10.9ポイント差と僅差になる。

 僕がポーランドの悪徳機材検査官であれば、(これでドイツか日本を落とせる)と考え、アルトハウス選手と高梨選手を狙う。ちなみに高梨選手は1番手で飛び、アルトハウス選手は3番手で飛んでいる。失格の順番としては高梨ーイラシュコ(オーストリア)ーアルトハウスの順。なぜ、オーストリアの選手を間に1人挟んで失格としたのか。

 高梨ーアルトハウスと連続で失格させたら、女子の有力選手を狙い撃ちしたことがはっきりしてしまう。そこでノルウェーかオーストリアのどちらかの選手を間に挟むことを考え、結果的にイラシュコ選手を選択したのではないか。イラシュコ選手は女2ではあるが、オーストリアの女1のL.エダー選手は個人戦8位で、イラシュコ選手は12位と実力差はそれほどない。女1ばかりを失格にしていないというエクスキューズ、そして、メダル獲得を目指すために上位チームの選手を失格にするためのオーストリアの女2の失格ではないか。

■大きく変わった1本目の順位

表3:失格で変わった順位

 このように日・独・墺の3選手を失格にしたことで、1本目の順位は大きく変わった(表3)。狙い通りにドイツを1本目で落とし、かつ、日本とオーストリアより上に立つことができた。目標とするメダルは手の届くところまで来ていると言っていい。 

 上にいるのはスロベニア、ノルウェー、ROC、カナダ。スロベニアは男女共に強豪揃いで別格として、残る3チームのうち、2つを負かせばメダルに手が届く。実際に勝てるとしたらカナダであろう。ノルウェーかROCの選手を失格にして、カナダに勝てばメダルに手が届く。

 ただし、ノルウェーとは1本目で71.3点、ROCとは62. 7点の差をつけられており、2本目も同じような戦いぶりなら120点~140点以上の差をつけられることが予想され、1人を失格にしただけだと逆転は不可能とは言わないが、かなり難しく、2人を失格にしないと抜くことはできない。ノルウェーかROCか。ポーランドという歴史的・政治的立場を考えると、ノルウェーを落とす方に気持ちが行くのかもしれない。

 そのように考えると、ノルウェーの女1、女2と続けて失格にすることの合理性はある。

■4か国5人の女子選手失格の合理性

 こうしてみると、4か国5人の女子選手が失格したことは偶然でも何でもなく、どれも合理的な説明がつきそうである。スーツの規定よりも、ポーランドの結果を優先してチェックが行われたのではないかという疑念は誰しもが持つのではないか。

 しかし、最終的にポーランドは6位に終わり、メダルを獲得することはできなかった。その要因は男子の不振である。1本目はD.クバツキ選手がグループ7位、K.ストッフ選手がグループ8位と精彩を欠いた。2本目はそれぞれ4位、2位と巻き返したが、時すでに遅く、1人失格の日本とオーストリアの後塵を拝する結果(6位)となった。

 ポーランドの男子選手が1本目に7、8位と低迷したのは不思議と言うしかない。特に1本目の4人目に飛んだK.ストッフ選手は3人が失格した後のジャンプで99.5m。4人目に飛んだ10選手のうち100mに届かないのは同選手の他には、明らかに格下の中国とチェコの選手のみ。個人NHで6位の実績からすれば、信じ難い失敗ジャンプと言うしかない。

 それがジャンプというリスクの大きな競技の特性なのかもしれないが、他方で、K.ストッフ選手の「そんなメダルはほしくない」という気持ちの表れなのかという気もしてくる。

■後は皆様の推理にお任せ

 以上がデータからの推理であるが、あくまでも勝手な推測にすぎず、たまたまそういう結果になっただけなのかもしれない。ただ、ポーランドが2本目に進むため、メダルを獲得するためには極めて有効な5人の失格であったとのは確かである。それが偶然なのか、故意なのかは分からない。

 冒頭で書いたように、ポーランドやポーランド人に対する偏見や差別ではないことをもう一度確認しておく。ただ、女子選手を失格にする権限を持つ人がポーランド人で、その失格のさせ方がポーランドにたまたま有利に働くようなものであった、と言っているにすぎない。

 後は皆様の推理にお任せしたい。

    "高梨沙羅&独選手狙い撃ちか ポーランド検査官"に5件のコメントがあります

    1. 月の桂 より:

      選手の皆さんから、オリンピックには魔物が住んでいると聞くことがありますが、本当にそうなのかもしれないな…と感じます。

      この検査官には、違反を見逃してはならないというプロとしての正義感があったと思います。また、自国を応援したい気持ちは誰にでもあります。検査官も人間です。自国の一生懸命な選手のことが心にあり、ほんの少し揺らいだ心の隙間に、魔物が入り込んだのかもしれませんね。真相はわかりませんが…。

      金メダルを期待された羽生結弦選手ですが、もしかしたら彼も魔物に嫉妬されたのかもしれません。ショートで、滑るラインがほんの少し違っていたら、氷の穴に影響されることも無かったでしょう…(*T^T)
      まさかのアクシデントに8位と出遅れたものの、誰も成功したことのない大技に果敢に挑戦し、4位まで巻き返しました。彼の今までの努力と自分に厳しく常に上を目指す姿勢には心を打たれます。メダルには届きませんでしたが、それ以上に大きな功績を残してくれたと思っています。彼は、宮城県や仙台市に何度も賞金を寄付してくれました。自分にはスポンサーがあるから大丈夫です…って。
      私達は何度も何度も、ゆづ君に助けて頂きました。優勝パレードでは、ずっと手を振り続け、時折、競技での決めポーズを披露してくれたりとサービス精神も旺盛です。
      どこから見ても「王子様」でしたね~(*^^*)
      黒子に撤して、ゆづ君を支えていらっしゃるご家族にも頭が下がります。

      高梨沙羅選手の失格は、ご本人のせいではありません。どうぞ、顔を上げて胸を張って帰って来て下さい。メイクはそのままで!!メイクすると気持ちが上がりますもんね!!

      まだまだ競技は続きますが、外野はメダルメダルと言い過ぎです。もっとおおらかに応援しましょう。選手の皆さんには、オリンピックを楽しんで頂きたいです。

      がんばれーにっぽん!!q(*・ω・*)pファイト!

    2. オーバーカッセル より:

      実際にこの競技をライブで見ていた立場として、非常に違和感を感じました。全選手の中の第1ジャンパーの高梨選手が良いジャンプをしたのに第2グループのジャンプの後に解説者のコメントで失格が判明、一体何が起きたのか「スーツ規定違反」も初めて聞いた話、その後も次々に有力選手しかも女性のみが失格となって行く。私自身も初めて体験するスポーツ観戦の領域を超えた異常な状況でした。

      その後多くの情報が寄せられ何が正しい話か分からない中ですが、少なくとも通常とは異なる検査が行われた事、通常1人が3人しかも男性も入っていた、個人戦と同じスーツなのになぜ団体戦では違反となるのか等々。

      とかく日本人は性善説的な美徳の下ですぐ謝り御涙頂戴の方向に向かってしまいますが、私は間違っていると思います。過ちや疑問点をしっかり主張すべきです。一つ一つの声が正しい正しくないに関係なく国際世論や新しい規定の形成に繋がって行くからです。

      例えば車の走行で首都高60km制限の中で制限速度が守られているかと言えば否です。実際は運用的な要素が多分にあります。スポーツ競技でも今回のスーツ規制の様な部分にはアナログな要素で暗黙の慣習もあったのではないかと思われます。その点も明らかにした上で今回の違反摘発が公正、平等に行われたのか明らかにしてもらいたいものです。もしそこに明らかな恣意的な問題がある事が分かればこの競技の不成立の可能性も出て来るかも知れません。

      但し、金メダルのスロベニアは文句なしの素晴らしい内容でした。その点に関しては敬意を表したいと思います。

    3. 匿名 より:

      松田記者、いつもお疲れ様です。
      今回もデータに基づく検証をとても興味深く読みました。現地で取材していないことを差し引いても、“中らずと雖も遠からず”な可能性はある気がします。

      それでなくても今回の五輪は、中国によるチベット・ウィグル・モンゴル・香港・台湾の各諸問題+コロナウィルス撒き散らしのことで、中国の開催する資格のなさを痛感する一方、参加している選手に罪はないことから、なんとか頑張って観戦・応援している状況です。
      そんな中でのスーツ規定違反問題は、頑張っている選手と新種目に大きな水を差すだけになってしまい、非常に後味の悪い結果を生むだけとなりました。W杯とは違い4年に1度にピークを持ってきて競技している選手が気の毒でなりません。

      五輪やW杯はスポーツの形を借りた、国同士の戦いの部分が大きいと改めて感じます。
      こういうところがスポーツと政治を完全に切り離して考えるのが難しい部分なのでしょう。

      選手の頑張りに敬意を持って、後半の競技も見守っていきたいと思います。

    4. 通りすがり より:

      今回失格にされた国は団結して提訴した方がよさそうですね。
      その時に着用していたスーツという証拠は残っているので、物的証拠は十分なはず。
      ましてや競技前のチェックではパスしているのに、競技後のチェックで違反が発覚したという点も疑わしい。

      素人考えで申し訳ないが、こういう競技用スーツというものはなるべく選手の身体にピッタリとフィットするように作られるものではないんでしょうか。
      少しでもダブついていたらそこが余計な空気抵抗を起こすように思われますが。
      それをわざわざ数センチもダブつかせるなんて。

      1. BADチューニング より:

        >少しでもダブついていたら
        >余計な空気抵抗

        この競技の場合、『ダブつき』は“ 帆 ”となって、『空気抵抗』は“揚力”に変わり有利になってしまうからです、悪しからず。

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