親中派テレビ局停波 露骨な偏向報道の実態

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。

 台湾の放送事業を監督する「國家通訊傳播委員會(NCC)」は11月18日、中天テレビのニュースチャンネル「中天新聞台」に対して放送免許を再交付しないと発表しました。中天新聞台の放送免許の期限は12月11日までで、以降は放送を継続できなくなります。

■放送免許再交付せずに中天テレビ反発

 NCCがニュースチャンネルの放送許可を認めない事例は今回が初めてです。中天テレビは「言論自由也面臨前所未有地侵害 (言論の自由が曾て無い侵害を受けている)」「台灣人民的心聲不再被政府重視 (台湾国民の叫びが政府の耳に届くことはない)」と、強い反発を示しています(中天新聞 Facebookページ)。

 台湾では国民党政権が長年にわたって一党独裁体制を敷き,メディアを強くコントロールしてきましたが、1987年の戒厳令解除、その後の李登輝政権による情報の自由化推進とケーブルテレビの合法化によって台湾のテレビ事業者は劇的に増加、現在は100局以上のケーブルテレビ局が放送事業を行っています。大手ケーブルテレビ局は、 三立テレビ  東森テレビ  TVBS  八大テレビ  中天テレビ  年代テレビ、などです。

■色分けされる台湾メディア 緑=民進党、藍=国民党

台湾メディアの色分け(葛西健二氏の記事をベースに作成)

 台湾のメディアはよく「緑」と「藍」に分けられますが、この「緑」は民進党、「藍」は国民党を指します。台湾テレビ業界では、政治討論番組やニュース報道の内容に各局の視点や方向性が色濃く表れます。例えばケーブルテレビ局最大手の「三立テレビ」オーナー林崑海氏は民進党の一派である「湧言文化基金會」の幹事長でもあり、三立テレビの報道は民進党寄りの傾向があります。

 東森グループのCEO王令麟氏は曾て国民党員として立法院(国会)議員を務めたこともあります。東森テレビの政治報道は国民党寄りのものが多く見られます。

 「台灣女首富 (台湾最大の女性大富豪)」と呼ばれている王雪紅氏が運営するTVBSは中立的な姿勢を保ちながら時折、やや国民党寄りの報道を行う場合があります。そして今回ニュースチャンネル放送免許の再交付が認められなかった中天テレビは、旺中集團(旺旺中時メディアグループ) 傘下にあります。

 台湾の大手財閥の一つである旺旺グループは中国で食品事業を成功させ、台湾で最も親中的な企業グループとして知られています。旺旺グループは2009年に中天テレビと中国時報新聞を買収しました。そのため中天テレビの政治報道内容には国民党、さらには中国寄りのものが多いとされてきました。

■そこまで露骨に応援するか…

韓国瑜氏を露骨に応援?(中天新聞YouTubeチャンネルから)

 中天テレビニュースチャンネルでは、偏向と捉えられるような内容や、検証不十分なニュースが放送されるなど、その報道姿勢が問題となっていました。2018年11月の高雄市長選挙から約4ヶ月間、中天テレビは国民党公認で立候補した韓国瑜氏に関するニュースを大量に放送し、「韓天テレビ」と揶揄されました。

 ニュースサイト「端傳媒」の統計によると、2019年3月6日から3月15日の10日間で中天テレビが放送したニュースのうち約8割が韓国瑜氏に関するものであったということです。また韓国瑜氏に関して報道したニュース数をその他ニュースチャンネルと比較すると、中天テレビでは225、これは三立テレビ(民進党寄り報道)23の約10倍、比較的中立的姿勢のTVBSのニュース数 54の約4倍ということです(端傳媒)。

 2019年には検証不十分または視聴者に誤解を与える内容の報道が複数行われました。2019年2月18日放送のニュースでは、韓国瑜氏が出席したイベント会場上空に吉祥を表す雲が現れたと報道、NCCはこれを「特定の政治人物と非科学的現象を関連付けた」として罰金40万台湾ドル(約150万円)を科しました。

高雄市長選で会場を空撮、 「民眾驚呼:第一次看到 民衆の驚き:初めての光景」のテロップ付きで報道 (中天新聞 YouTuneチャンネルから)

 また2019年5月9日には政治討論番組内で「台南市の栽培業者が200万トンの文旦(ザボン)をダムに捨てた」と報道、NCCは「事実の検証をせず報道し農産品流通に大きな影響を与え業者に多大な被害を与える恐れがある」として罰金100万台湾ドル(約360万円)を払うよう決定しました。

 これ以外にも中天テレビはNCCから複数回の処罰を受けており、2019年1月から7月の間に科された罰金額は160万台湾ドル(約580万円)になりました(自由時報 2019年7月25日付)。また若者を中心に「轉台運動 チャンネルを切り替えよう運動(新聞頻道轉台運動 facebookページ)」が展開されるなど、中天テレビの報道姿勢に疑問を呈する少なくないようです。

 中天テレビは台湾総統戦の時も引き続き国民党から立候補をした韓国瑜氏推しを展開、総統選時の露骨な報道には私も疑問を感じていました。その後2020年6月に韓国瑜氏は高雄市長を罷免されましたが、高雄市長最終日の報道では「不捨告別 (別れたくない)」と書かれたテロップと涙を流す支持者の姿を流す等(中天新聞 YouTuneチャンネル2020年6月10日)、韓国瑜氏贔屓の報道姿勢を貫いたことに、私はある意味「潔いな」とも感じました。

■中天テレビ停波に中国の干渉?

 台湾では昨年12月31日、「域外敵対勢力=中国」が台湾に浸透介入するのを防ぐ「反浸透法」が成立しました(中央通訊社 2019年12月31日)。同法では、国外からの資金援助を受けて選挙運動を行うことが禁じられています。この法案成立の背景には、2018年の台湾地方選挙で海外(中国)から国民党に資金援助が行われた疑いがあること言われています。

 今回の中天テレビに対する放送不許可は、増加している中国軍の台湾防空圏進入=「外からの圧力」に加え、中国がメディアやネットを利用し台湾国内での情報操作=「内」からの干渉に警戒していることが関係しているのではないでしょうか。

 台湾とは異なり、日本では偏向報道で事実上の停波という事態は聞いたことがありません。それは日本の報道が偏向していないから…なのでしょうか? 私にはよく分かりませんが(笑)。

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