フジ港浩一社長の解任あるか 1/23臨時取締役会

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 フジテレビを傘下に持つフジ・メディアHD(代表取締役社長・金光修)が23日に臨時取締役会を開くことを21日に発表した。中居正広氏の女性にまつわるトラブルに端を発した一連の騒動で、フジテレビはスポンサーが次々とCM差し替えを行い、1959年の放送開始以来、最大の危機に陥っている。危機を招いたのは17日のフジテレビの港浩一社長の記者会見から。今回のフジメディアHDの臨時取締役会で解任される可能性もあるように思う。

◾️1月23日にフジ親会社の臨時取締役会

写真はイメージ

 フジ・メディアHDの社外取締役を務める文化放送の斎藤清人社長らが要請をしていた臨時取締役会の開催が23日に開催されることになった(讀賣新聞オンライン・フジ・メディアHDが23日に臨時取締役会…社外取締役らが要請)。

 文化放送はフジ・メディアHDの株の約3.33%を保有する大株主であり、斎藤社長は他の社外取締役6人と連名で開催を求めていたという。同社長は「社外取締役として日常的な経営やガバナンスをウオッチすることが大きな役割の1つと認識しています。フジテレビの発信するものに注目していましたし、先週の会見を受けてやはりまだまだ足りていないところがある、我々にもきっちりと説明がほしいということ。とにかくガバナンスの早急な立て直しが必要であると感じていますので…臨時取締役会の開催を申し入れしております」としている(日刊スポーツ電子版・フジ社外取締役で3%株主・文化放送の齋藤社長、フジ・メディアHDへ臨時取締役会の開催申し入れ)。

 21日には村上総務相が閣議後の会見でフジテレビ問題に触れ、「独立性が確保された形で早期に調査を進め、信頼回復に努めてほしい」と求めた(前出の讀賣新聞オンライン記事から)。「独立性の確保」は、港社長が会見で明らかにした第三者を入れた調査委員会による調査では不十分であることを意味しているのは間違いない。日弁連基準に準じた第三者委員会での調査をすべきとの指摘に等しい。

 中居氏の問題が週刊誌等に報じられた後は中居氏への批判が強かったように思えたが、17日の記者会見で世間の風向きは一変。テレビでありながら会見の動画撮影、配信を禁じた上に、出席できる記者を記者クラブ加盟社に限り、「回答は控えさせてください」を連発するという内容に世論が沸騰。それだけでなくスポンサーが次々とCMの差し替えを求める事態へと発展した。

◾️完全子会社の取締役の立場

 世の批判も、スポンサー離れも港社長以下、会見に出席したフジテレビの取締役が主要な原因を作っており、短期間で会社の存続すら危ぶまれる事態にした責任は大きい。

 そのような状況での臨時取締役会の開催である。港社長はフジ・メディアHDの取締役でもあるので当然、参加し、他の取締役に状況を説明することになるであろう。世の批判を鎮静化するための記者会見だったのに逆に火をつける結果となり、さらにスポンサーまで次々と降りることになったのであるから、港社長と取締役に事態を収拾する力があるとは思えない。

 そうなると港社長を解任して、フジテレビの経営陣をまとめて入れ替える可能性はあるように思う。取締役の解任には株主総会の決議が必要なことはよく知られている(会社法339条1項)。臨時取締役会で解任ができるのかという点について、フジテレビはフジ・メディアHDの完全子会社であることに注意が必要(総務省電波利用ポータル・地上系放送事業者)。

 100%の株式を有している場合、親会社の取締役会が子会社株主総会での意思決定を事実上コントロールすることになる。例えば親会社の取締役会で子会社の取締役を解任する方針を決定し、その後、株主総会または319条の書面決議で形式的に同意を与えればいい。

【会社法319条】

1 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

 親会社が完全子会社の株式を全て保有している場合、株主総会を開催せずに書面決議や合意で取締役解任が可能で、追加で株主総会を開く必要はない。親会社の取締役会と子会社の株主総会は法的には異なる機関であるが、完全子会社の場合、実務上は親会社の意思がそのまま子会社の意思決定に反映される。

◾️政府が言及し社外取締役が動く

 村上総務相がフジテレビの対応に不満を明らかにした、その日に社外取締役6人が連名で臨時取締役会の開催を求めたのは偶然ではないはず。また、これがフジ・メディアHDの社長らが開催を求めた場合には、港社長解任の可能性が取り沙汰され、経営のトップが強権で港社長を解任したと世間が見ると考えられる。

 それを避けるために多くの社外取締役からの求めがあって開催し、社外取締役も解任を望んだので、フジ・メディアHDの取締役会で港社長解任を決めたという形を考えているようにも思える。

 もちろん、勝手な推測に過ぎない。ただ、こうした役員の解任について言い出す役割を果たすのはトップではなく、部下や周囲の役員が提案する場合が多いように思う。

港浩一社長(フジテレビHPから)

 筆者が勤務していた日刊スポーツでも2011年に2期目を迎えると思われた三浦基裕社長が株主総会で事実上解任されているが、その時も支配株主であった川田員之氏ではなく、その仲間である少数株主が緊急動議を発している(参照・日刊スポーツの歴史に残る社長解任劇(1) 修正動議に散った三浦基裕氏)。トップから言い出す役割の人間に指示を出して実行される例はある。

 世論を鎮め、スポンサーに戻ってきてもらうには形式的な調査委員会ではなく、第三者委員会を設置して膿を一気に出し切るしかない。調査委員会で終わらせようとした港社長が数日後に「やっぱり第三者委員会にします」と言い出すのは、逆に状況を悪化させるもので「何で最初からやらないのか」という新たな怒りを呼ぶだけ。もう港社長は世間の前に出さない方がいいという判断は当然、有力な選択肢となり得る。

 こうなるとトップを入れ替えて一新するしかない、という判断をフジ・メディアHDのトップ(おそらく最も力があるのは日枝久取締役相談役であろう)が下す可能性はあるように思う。そうした意味でも注目の臨時取締役会となる。

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