「選挙帰省ラッシュ」始まる 若者の台湾人意識の高揚と総統選
葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼
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台湾の第15代総統・副総統選挙が1月11日(土)に迫っています。直前の状況では蔡英文総統(民進党)の再選が有力で波乱は起きそうにありません。それでも台湾の人々は選挙の前に熱狂を隠せません。選挙の風物詩と言ってもいい「民族大移動」も始まっています。第2回は総統選を待つ人々の様子、思いをレポートします。
■台湾特有の現象「選挙帰省ラッシュ」
日本では在外投票制度や不在者投票の制度があり、利用された方は少なくないと思います。ところが台湾では在外選挙制度も事前投票制度もありません。有権者は自身の本籍地で、当日、投票する必要があります。そのため4年に一度の総統選挙では投票前から故郷へ向かう人々で各交通網は大混雑です。日本にはない「選挙帰省ラッシュ」とでも呼べばいいのでしょうか。
今回の総統選は例年以上の混雑が起きると予想されています。実際、1月10日夕から11日午前の新幹線指定席券は1週間前にほぼ売り切れました。高速道路も渋滞緩和のため投票当日は路肩を車両通行帯として開放する予定と、当局も大混雑を予想しています。
私の身近な所でも、その傾向が見えます。東京在住15年の台湾籍の友人は、今回の投票のため本籍地である高雄に戻ります。初めて投票のため帰国するということです。またアメリカ在住30年になる私の妻の親戚も、アメリカで生まれ育ち一昨年成人した娘を連れ、投票のため一時帰国しています(台湾は二重国籍可)。娘は初めての台湾総統選での投票です。
このように海外在住台湾人も今回の総統選には大きな関心を寄せています。それは自国の将来に対する国民としての責任でもあるのかもしれません。日本で次に選挙があれば、野党は「桜を見る会」を争点にするのでしょうか。少なくとも台湾はそんな暢気な選挙ではありません。それこそ、有権者にとっても生きるか死ぬかの戦いなのです。
■Tシャツに「台湾人」「独立」の文字
今回の総統選を「独立と統一の分かれ目」と言うとさすがに大げさですが、台湾として中国とは明確に一線を引くのか、それとも一国二制度に近づくのかという選択です。国の未来を決めるのが国民の1票となれば、それは多少のことがあっても帰国するのではないでしょうか。
私が台湾に来たのは1998年、もう22年前のことです。この20年で台湾の人々の意識も変化しているように思えます。一言で言えば、「台湾人意識の高揚」です。実際に、最終的に台湾独立を目指す民進党が政権の座に就いているのが何よりの証拠でしょう。
台湾の人は普段はあまり政治のことは口に出しません。ただ、最近の若い人を見ていると、たとえばTシャツに「台湾人」「独立」などと描かれているのが目につきます。口には出さないものの、若い人の間でそういった意識が芽生えつつあるのかもしれません。「私は台湾人」というバッジをつけているのも結構目にします。
蔡英文総統が有利に選挙戦を進めているのも、香港情勢に加え、そうした事情とも無縁ではないように思います。
■台北で迎える6度目の総統選、しっかりと見極める
私にとって最初の総統選は陳水扁候補(民進党)が勝った2000年です。あれから20年、6度目の総統選を台北で迎えることになりました。台湾では外国籍の人間に選挙権はありません。総統選の熱気を見て楽しみながらも、外国人としてそこに参加できない寂しさも同時に感じます。
今回の総統選挙は、今後のアジア情勢を占う上でも重要なポイントになるのではないでしょうか。私の第二の故郷と言っていい台湾の人々がどのような選択をするのか、そしてこの国がどこへ向かおうとするのか。しっかりと瞼に焼き付けたいと思います。
台湾や香港のような大規模なUターンは無いですが、日本共産党さんは地方選挙などで住民票を移して、組織的な運動をされていますよね。
さておき、1/11の選挙結果は中国共産党も織り込み済みだと思います。香港情勢と合わせて今後は注視したいです。
「近隣のために尽くす人は、同時に、人類のために
尽くしている」。ガンジーの言葉です。
日本、そして私たち日本人の意識も問われることになるかも知れません。「傍観者」は一般的には法律では罰せられ
なくても、歴史にはその行為を永遠に残すことになるのですから。
>>MR.CB様
コメントをありがとうございます。
選挙のために住居地を移すのは公職選挙法の規定に反しない限り合法なのですが、従来の住民にとっては迷惑な行為と言えるかもしれませんね。オウム真理教の事件では転入届を不受理という自治体があったように記憶しています。それとは異なる事例なのでしょうが。
台湾の選挙結果、現職再選なのでしょうが、大差がつくようなら、さらに事態は流動的になるかもしれませんね。その点でも注目したい選挙です。