友情のワクチン台湾熱狂「雪中送炭」「患難見真情」

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。

 日本から届けられたワクチンで、台湾が熱狂状態にあります。4日、およそ120万回分のワクチンが空輸される様子はテレビ各局がライブ中継しました。台北101や有名ホテルでは感謝を示すメッセージが灯され、国全体が歓迎ムードです。日本が貫いた台湾への友情に「お祭りのような騒ぎ」と言っても過言ではありません。

■ワクチン到着をライブ中継 大歓迎の台湾

日本からのワクチン到着を報じる台湾各紙(撮影・葛西健二)

 6月3日に新型コロナウイルスの国内感染拡大によりワクチンの確保が喫緊の課題となっていた台湾で日本からのワクチン120万回分提供決定が報じられ、翌4日台湾テレビ各社はワクチンを載せた飛行機の空港到着をライブ中継、ただ、飛行機が飛んできて着陸するだけの画を流し続けました。翌日の各紙もこのニュースを一面掲載で大きく報じています。

 自由時報は「日火速援台疫苗  (日本、台湾へワクチン迅速支援)」の見出しで特集を組み、日本政府が中国からの圧力を受けながらも台湾へのワクチンの迅速な提供に尽力したと伝えています(自由時報 2021年6月5日付)。中国時報は、日本からの「及時雨 (恵みの雨)」は台湾政府が一丸となって事に当たり、日本政府がこれに誠実迅速に応えた結果であると評しています(中國時報 2021年6月5日付)。

定例会見で日本への感謝と「台日友好」と記されたフリップが(中央流行疫情指揮センターYoutubeチャンネルから)

 また日本からのワクチンが到着した4日午後の中央流行疫情指揮センター定例会見では、日本への感謝と「台日友好」の言葉が記されたフリップが机の前に置かれ、陳時中指揮官は「有情有義  (人情と義理がある)」と感謝の意を表しました(中央流行疫情指揮センター2021年6月4日定例会見)。蔡英文総統はTwitter上で「言葉では言い尽くせないほど感謝しています」と日本語で謝意を示し(蔡英文Twitter 2021年6月4日投稿)、頼清徳副総統もFacebookに「日本は台湾の真の友人です」と日本語で記された画像を投稿、「日本對台灣的深厚情誼,我們珍惜且感動  (日本の深い情誼はとても大切なもので心を動かされる)」と喜びの気持ちを述べています(頼清徳Facebookページ 2021年6月4日投稿)。

 日本のワクチン提供に台湾は歓迎ムード一色となり、感謝と喜びの声が湧き起こっています。日本台湾交流協会(大使館に相当)の台北市のFacebookページ投稿には以下のような声が寄せられました。

日本是台灣永遠的朋友 (日本は永遠の友だ)

好感謝日本的雪中送炭 (手を差し伸べてくれた日本、本当にありがとう)

難以言喻我們心中的感謝,這份恩情我們永遠會記得(我々の心中を言葉でどう表せばよいか、この恩情は決して忘れない)

 6月7日現在で、およそ1万8000件もの感謝のメッセージが寄せられています(日本台湾交流協会 Facebookページ2021年6月4日投稿)。

■台湾熱狂の理由 義理と人情貫いた日本

台北101の感謝と絆を伝えるメッセージ(台北101 Facebookページ)

 人々の感謝は声だけに留まりません。台北市内にある当協会台北事務所には「謝謝日本」とメッセージが添えられたたくさんの花束が届けられています(日本台湾交流協会 Facebookページ2021年6月4日投稿)。

 台湾で最も高いビル台北101には「台日の絆と感謝」「台日友誼長存  (台日友情よ末永く)」など日本語と中国語で日本への謝意と日台の良好な関係を伝えるメッセージが(台北101 Facebookページ 2021年6月4日投稿)、また台湾を代表するホテルの一つである圓山ホテルには「カンシャ」と記されたメッセージが灯されました(圓山大飯店 Facebookページ2021年6月4日投稿)。

 私は1998年から台湾に在住し、今年で24年目になりますが、このような熱狂は見たことがありません。私のFacebookやLINEにも、しばらく連絡がなかった台湾の友人から「ワクチンありがとう」といった類のメッセージが寄せられました。私がワクチンを持ってきた訳ではないのですが、日本への感謝を示したいという思いからなのでしょうか。

 こうした熱狂的な状況がなぜ、起きるのでしょうか。一言で言えば「日本が勇気をもって義理と人情を貫いた」ということにあると思います。

 台湾を承認する国は世界でわずかに15か国です。国連加盟国(193か国)の10分の1にも足りません。その数少ない台湾と国交を持つ国に対して、中国はワクチン供給を餌に台湾との断交を迫るという非人道的な外交攻勢をかけてきました。さらに中国の介入により台湾のビオンテック社(独)のワクチン購入契約が妨害されたことを蔡英文総統が明らかにしています。

 14億人の人口を持ち、GDP世界2位の強大な中国からの圧力の前に、台湾は世界から孤立させられ、ドイツすらワクチン提供を断念したほどです。

 そういう状況の中、圧力を跳ね返して日本が台湾にワクチンを送ったことは、人命救助という以上の政治的な意味を持ちます。中国政府が日本の行為に対して「政治的なパフォーマンス」と批判したことは、いかに中国にとってこのワクチン提供が痛かったかを示しており、そのことがいかに台湾人を勇気づけたか想像に難くありません。

 台湾は義理と人情の国です。「人情味」という日本語が、そのまま中国語になって使用されているほどです。日本の勇気ある行動は、東日本大震災の時の恩返しという意味合いもあり、まさに赤い圧力に屈することなく「義理と人情」を貫いたと評価されたのでしょう。浪花節が好きなのは、日本も台湾も同じです。

■いずれは日本へ 次は台湾の恩返し

 日本のワクチン提供に対し、喜びや感謝と共に次のような声も多く挙がっています。

日本 我一定會再去貢獻我的新台幣給你們的 (次は私が日本へ行って台湾ドルで貢献するからね)

解封第一個出國旅行一定要選日本(渡航制限が解かれたら真っ先に日本へ行くよ)

等疫情結束準備去東京大阪沖繩北海道 好好的玩一玩(コロナ禍収束後には東京大阪沖縄北海道 思いっきり遊ぶんだ)

※上記コメントはFacebook、台湾Yahooニュース等から抜粋

 日本に対する好感度上昇と「次はこちらが恩返し」と考える台湾の人々の義理固さが表れた発言でしょう。これが義理と人情の国・台湾です。

 2019年度は約490万人が渡航、海外旅行の渡航先一番人気の日本(2019年度は約490万人と最多を占める ※交通部觀光局 108年1月至12月中華民國國民出國目的地統計)、コロナ禍のため長らく日本の地を踏めないでいる台湾の人々の渇望と、いずれはコロナ禍が収束する未来への希望、様々な想いが含まれているコメントのようにも感じられました。

 「患難見真情 (苦境のときこそ真情がわかる)」。台湾の人々は日本の援助をこのように形容し、称賛しています。今回の出来事を契機に、台湾と日本の絆はますます強まっていくのではないでしょうか。

    "友情のワクチン台湾熱狂「雪中送炭」「患難見真情」"に5件のコメントがあります

    1. MR.CB より:

      》》ジャーナリスト葛西様

      もちろん東日本大震災の時に、台湾はいち早く約250億円もの義援金と温かい有情の励ましをしてくれました。日本人として大変嬉しく感じています。今回、一応は台湾にピンポイントとしてではなく他の途上国などに対してのパッケージの中から、台湾政府の要請に応える形をとっています。なので北京政府も大声では日本政府を批判できませんね。
      民主主義陣営のとりわけ極東・東アジアの安全保障体制において日本と台湾は運命共同体と言えます。バイデン政権になってその意味合いは急速に加速しました。表現は良くありませんが、対中国政策から言えば台湾は我が国の『外堀』と言っても過言ではありません。
      問題は台湾情勢が今後一気に緊張した場合の日本のスタンスが重要ですね。場合によっては、憲法改正もいよいよ真剣に議論しなければならない状況にもなってくると思います。外交や対話だけではどうにもならないからです。何故なら中国共産党にとって、台湾問題は絶対に妥協することは許されません。揺るぎようがない核心であることは周知の事実です。
      私は先般の日米の共同声明(台湾明記)や今回のワクチン提供で、『日本はルビコン川を渡った』と認識しています。台湾問題はすなわち日本国の将来にとっても、避けることの出来ない最重点課題であるという覚悟が日本人に求められると思います。

    2. 葛西健二 より:

      MR.CB 様

      アメリカからもCOVAXを通じて台湾へのワクチン提供が決まったようです。
      日台米の協力関係(対中国 北京政府)が更に強化されていくと思います。

    3. アツシ より:

      葛西様 初めまして。
      こういう行為を水を差す連中が居ますのでお知らします。
      日本の夕刊タブロイド紙「日刊ゲンダイ」が「台湾中立系新聞前社長」名義で台湾に送られたアストラゼネカ製ワクチンを送るのは毒だと書いてました。
      この「台湾中立系新聞前社長」の記事には大陸への媚が滲み出る文言が散見され、さらに「台湾中立系新聞」と聞き慣れない文字、実際に存在してるのでしょうか?
      後日、この記事をRTIにも投稿し、台湾の現状を知りたいのと同時に仮にその存在がダミーあらば抗議すべきではないでしょうか?

      1. 葛西健二 より:

        アツシ様

        情報ご提供くださりあちがとうございます。
        興味深い内容です。この記者が在台邦人なら、狭い日本人社会ですので
        何かしらの繋がりがあるかもしれません。
        それとなく調べておきます。

        1. アツシ より:

          葛西様

          返信感謝致します。
          「日刊ゲンダイ」の記事は甘粕何某という「売文家」の朝日、毎日系の人らしくそこからの妄想文かはわかりません。
          自分なりに調べては見たのですが、民主国家なので「国民党寄り、民進党寄り」のマスコミが存在してるのは理解してますが、先日書いた「台湾中立系新聞」という存在は見当たらないのかそれとも自分の語学力が無いからの盲点か。
          けど、葛西様がこのような駄文に興味持ったのは意外でした。

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