誇れ台湾 世界の模範 蔡英文総統が示した自信

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

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京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。
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 台湾の蔡英文総統は4月24日、facebookにメッセージを投稿しました。「感謝醫護人員 在第一線保護台灣人民」というタイトルで、医療現場への感謝の気持ちを示すものですが、同時に17年前の4月24日の出来事に言及しています。世界一と呼んでもいい台湾の新型コロナウイルス対策は17年前の教訓が活かされたものであり、それが世界における地位向上につながるとの思いが伝わってきます。

■台湾の完璧防疫対策 累計感染者427、死者6

蔡英文総統が投稿したメッセージ(facebookから)

 台湾の新型コロナウイルス対策は世界的にも高い評価を受けています。4月24日現在、感染者数427、死者数6に過ぎません。感染者の累計が日本の1日の発症者数(4月24日は434人)とほぼ同じです(データは日本経済新聞 新型コロナウイルス感染者 世界マップ及びNHK特設サイト 新型コロナウイルス)。

 完璧と言っていい防疫対策はこれまで触れてきました(参考:コロナを圧倒 台湾の”鉄人部長”支持率91% ほか)。これほどうまくウイルスを抑え込めたのは、17年前のSARS(重症急性呼吸器症候群)騒動の苦い経験があったからです。

 そのSARS騒動の象徴的な出来事が発生したのが2003年の4月24日でした。それから17年、蔡総統は再び襲ってきた感染症の脅威の中、17年前の事件に触れたのです。

■2003年台北騒然 ロックダウンの噂

聯合新聞網2020年3月14日付より

 2003年2月、台湾で最初のSARS感染者が報告され、その後香港で感染した台湾人が台北市立和平病院で診察を受けました。これにより院内で接触したスタッフや患者が感染、病院側の措置が迅速でなかったこともあり、院内で150人以上が感染、7人が死亡する惨事となったのです。

 この事態を受け、4月24日、当時の馬英九台北市長(後に総統)は、突然、和平病院を封鎖、院内には1000名近くが取り残されました。突然隔離された人々が病院の窓に張り紙をし、外に向かって助けを求める姿が連日報道され、取り残された人の救助を訴える人たちが押し寄せるなどで現場は騒然としました。私も用事で付近を通りかかった時に実際目にしたのですが、和平医院一帯は異様な雰囲気だったのを今でも覚えています。結局、封鎖された約3週間で院内の154名が感染、うち31名が亡くなるというさらなる悲劇を生みました。

 その後、付近の台仁済病院も封鎖。近辺は官庁街に近いことも影響したのか、大通りから脇道にいたるまで封鎖されました。当時の台北は、あちこちで救急車のサイレンが響き、国民は常にマスクを着用、公共交通機関での感染者が発生しているためバスや地下鉄内は普段の騒がしさはなく、皆周りの状況を警戒している様子だったのを覚えています。

 街全体がピリピリとして、眼に見えない敵に対する恐怖心を抱いている状態です。テレビの討論番組では台北のロックダウンが議論され、ネットでも政府がロックダウンを検討しているとの噂が流れていました。当時、私がアルバイトをしていた職場では、アメリカ華僑の社長が台湾を脱出して米国に戻るため社長室に並べられていた趣味の骨董品をせっせと梱包、脱出の荷造りをするという笑えない光景も目にしました(最終的に社長は留まりました)。

 感染は都市部を中心に台湾各地へ拡大。同年7月の終息宣言までに約700名が感染し、80名以上が死亡と甚大な被害が生じました。現在各国が遭遇しているのと似たような状況を台湾は17年前に経験していたのです。

■蔡英文総統メッセージ「做世界的模範生」

 和平病院の封鎖から17年後の2020年4月24日に発出された蔡総統のメッセージは、当時の医療スタッフに賛辞を送るとともに、現在のウイルス禍で奮闘する関係者に感謝の意を表しています。そして、当時の政府(陳水扁政権)の対応の遅れや誤謬、中央と地方の意思疎通や決定に問題があったことを指摘。その上で、現在の状況を以下のように表現しました。

17年後,我們更有經驗,我們的指揮系統更清楚,第一線的醫護人員也得到更多的保護與支持,人民也具備充分的防疫觀念,並確實落實。 (17年後、我々には更なる経験がある。指揮系統は明確であり、前線に立つ医療関係者もより多くの保護と支持を得られている。人々には十分な防疫観念が備わっており、確実に実行できている)」

 総統が指摘するように、民間の防疫観念もかなり高いものがあります。1月下旬の春節期間から飲食店では自主的に入店時の体温検査とアルコールによる消毒及びスタッフのマスク着用が行われていました。また時期を同じくして公共交通機関では、乗客も自主的にマスクを着用、中には使い捨てのゴム手袋をする人もいました。多くの人がアルコールスプレーや水を必要としない消毒用ジェルなどを携帯し、常に消毒と清潔にすることに注意を払っていました。これこそSARSウイルス禍を経た人々の防疫意識の高さの表れです。このように現状の政府及び民間の対応を評価した上で、蔡総統は続けます。

中央和地方、政府和人民一起合作,我們才能攜手對抗疫情  (中央と地方政府、そして人々が一緒に力を合わせてこそ感染拡大に対抗できる)」

 官民一体の団結を強調し、この団結力が「我們的努力 (我々の努力)」 であり「還有能力可以幫助國際社會 国際社会を助ける力もある」ことを世界に知らしめ、今後も防疫を高いレベルで継続することで「做世界的模範生 (世界の模範生)」になれるとしています。

■感じる台湾の誇り 今こそ世界に発信

 このメッセージからは世界から評価されている台湾のウイルス対策に対する自信と、その高評価を維持しつつマスク寄付等による国際的貢献を続けることにより台湾の国際的立場が向上できるという台湾の誇り、プライドが感じられます。

 そして中国の地位や発言力が弱まっている今こそが、世界における台湾の存在を高める好機。そのために国民の団結の継続を呼びかける、そんな蔡総統の願いがストレートに表れたメッセージと感じました。

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