雀卓に仕切り板 ポン・チー禁止の台湾麻雀?
葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼
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落ち着きを取り戻した台湾国内の新型ウイルス感染状況に伴い、政府は9月27日から生活制限措置の段階的な緩和を開始しました。10月5日からはカラオケ店等が4か月ぶりに営業を再開します。しかし今回の緩和策については、本当に考えて決めたのかと疑いたくなるようなものがあります。その一方で社会には安心感が漂い始めており、気の緩みが懸念されます。
■段階的規制緩和、娯楽施設の再開
5月に台湾国内で急速に拡がった新型コロナウイルス感染は、8月以降、1日の感染者数が減少傾向となっています。直近の9月21日から9月30日の10日間では国内感染者数は4人と、感染状況が落ち着いてきています。台湾では警戒レベル「第2級」が依然継続され社会活動に制限が加えられていますが、政府は制限措置の段階的な緩和を進めています。
中央感染症指揮センターは9月27日、国内での新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いている傾向にあることから、制限措置の一部緩和を実施すると発表しました。同日から実施される緩和策では、台鉄(在来線)と高鉄(新幹線)ではソーシャルディスタンス維持を条件にホームや改札内での飲食が可能となりました。
展覧会場や劇場での公演、スポーツイベントでは屋内の入場人数制限が設けられなくなり、球場など屋外施設では収容人数25%までの制限が最大50%までに引き揚げられました(但し飲食不可)。観光バスも定員の上限まで搭乗することができるようになりました。10月5日からは、5月以降営業が禁じられているカラオケ、ゲームセンター、インターネットカフェ、カラオケ店、雀荘等の施設も営業再開可能となります。
■バーやナイトクラブは引き続き休業措置
制限緩和が進む中、バーやナイトクラブ、ダンスホール等には引き続き休業措置が執られます。強制休業に対する政府からの適切な補償がなされず経済的に困窮するこれら職種は「孤児」とも称され、休業を強いられる人々からは大きな不満の声が挙がっています。
営業再開されるカラオケやインターネットカフェでは、飲食禁止です。台湾のカラオケ店は専門のシェフによる食事の提供など、歌うこと以外のサービスにも注力しているところが多くあります。「○○カラオケ店は牛肉麵」、「××カラオケ店はスペアリブ」と看板料理を持つカラオケ店もあります。
私の妻などはカラオケ店へ行く目的が歌うことより食べることだったりします。あるカラオケチェーン店の責任者は、「レストランでの飲食が可能なのになぜカラオケ店での飲食が禁止なのか」と不満を示しながら「飲食禁止のカラオケ店では人を惹き付けられないのでは」「お客もあまり来ないのでは」と懸念を表しています(中国時報 2021年9月28日)。そして、たとえカラオケ店であっても、店内ではマスクを終始着用しなければなりません。このことに、人々からはネットを中心に以下のような声が出ています。
戴口罩唱怎麼會好聽 (マスク着用でどうやったらうまく歌えるんだよ)
唱到高音會不會喘死 (高いキーで窒息するんじゃないか)
このように、疑問と多くのツッコミの声が挙がっています。
最好真的會每個都乖乖戴口罩 (皆がマスクをしっかり着用してくれるといいのだが)
包廂內誰管得到 (カラオケルーム内のことはどうやってチェックするんだ)
就是每天請警察臨檢 (毎日警察に見回りに来て貰わないと)
マスク着用が徹底されるのかに疑問を呈する声も多く挙がっています(コメントは 批踢踢實業坊 PTT及びYahoo!台湾ニュースコメント欄)。台湾のメディアもこの点を指摘しており、4か月を超える営業休止が解かれたことを喜ばしいこととしつつも、室内の通気性やマスク着用が徹底されるのかに疑問を投げかけ「會不會因此爆出防疫漏洞、全台灣都在關注 (防疫の落とし穴が大発生しないか、台湾中が注目している)」としています(華視新聞 2021年9月28日)。
■規制緩和は雀荘も対象 雀卓に仕切り板?
今回の規制緩和策は雀荘も対象に含まれています。ただし営業再開に際し仕切り板の設置と各人手袋の着用が義務づけられます。9月27日に行われた中央感染症指揮センター会見の質疑応答では「雀卓にどうやって仕切り板を設置するのか」という質問が記者から投げかけられました。
これに対し鉄人部長の異名を持つ陳時中指揮官は手で牌を交ぜる仕草を行いながら、「打麻將我是沒有試過,不過我相信應該是可以 (麻雀については試していないが、設置できると信じている)」と回答、記者達の間から笑いが起こる一幕がありました。この光景にネットでは、
笑不出來 (笑えないよ)
有什麼好笑的 (何が面白い)
と呆れる声も出ました。
先丟出來 然後其他人自己想辦法 (とりあえずやってみました、あとは他の人が考えてください、か)
完全沒有配套欸 就嘴巴說個開放就好了 (全然しっかりと対策できていないじゃないか 開放なんて口先だけ)
このように厳しいコメントが多く見られました(コメントは批踢踢實業坊 PTT及びYahoo!台湾ニュースコメント欄)。
まさかポン・カン・チーは禁止、門前だけで手を仕上げるルールでやれというわけではないと思いますが、陳時中氏の真意は私にも分かりません。
■漂う安心感 防疫の落とし穴への懸念
台湾のワクチン接種事業は順調に進んでおり、9月22日には1回目の接種完了者が人口の50%を超えました。国内感染状況の落ち着きに伴う生活規制の段階的緩和とワクチン接種率の向上で、人々の間には安心感や楽観ムードが漂い始めています。
知人の話では、小さなオフィスでは昼食休みは社員がマスクを外して食後の休憩をしているところもあるとのことです。私も最近夜間の公園等でマスクを外して散歩をしている人(規則違反、見つかると罰せられます)を複数回、目にしていますし、少々「気が緩み始めているな」と感じています。
先週末には台北市内で約4か月ぶりに屋外イベントが開かれました。「食」をテーマにしたこのイベントには私もたこ焼き屋台を出店しました。ケータリングカーを含め30店以上が出店した久しぶりの屋外イベントということで多くの人が訪れとても有り難かったのですが、食べ歩きしなければ会場内のどこでも飲食が可能ということで、至る所でマスクを外した「密」が発生していました。
私の屋台横でも複数人がお酒を飲みながらおしゃべりに興じていました。イベントの盛り上がりは嬉しいのですが、マスクを外した密の中での仕事に不安を感じるとともに、場内の規制の緩さが「万が一」に繋がらなければいいのだが、と思いました。
警戒レベル「第2級」による生活制限が実施されて以降、サービス業は大きな打撃を被ってきました。1日も早い対策の実施を求める声が日増しに強くなっていく中、台湾政府は生活規制を緩和する方向で防疫対策を進めています。今回の緩和策が見切り発車とならないことを、また社会に漂う「安心感」が気の緩みとなって再びの感染拡大に繋がらないことを願うのみです。