完売”日本に感謝マスク” 逆にありがとうだよ
葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼
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台湾の新型コロナウイルス対策の司令塔・中央感染症指揮センターの陳時中指揮官はしばしば特製デザインマスクを着用し定例会見に臨みます。マスクを活用しメッセージを伝えようとする演出、秀逸なマスクデザインに注目が集まっています。ワクチンを提供した日本への感謝の思いを伝えるマスクは完売する人気となりました。
■聴覚に障害を持つ人への配慮 透明マスクで壇上に
12月1日に行われた中央感染症指揮センターの定例会見のライブ中継、壇上に登場した陳時中指揮官以下4名のマスクに視聴者から驚きの声があがりました。
這口罩是怎麼回事 (このマスク、一体何があったんだ)
新造型? ( 新スタイル?)
蝙蝠俠! (バットマン!)
彼らの着けているマスクは、「バットマン」を彷彿とさせる口元が透明になった形状のものでした(コメントは中央感染症指揮センター YouTubeチャンネル 12月1日定例会見中継のチャットから抜粋)。陳指揮官は着席後もマスクについては一切触れず、いつもと変わらぬ冷静な態度で当日の国内感染者数及び入国感染者数を発表、透明マスク着用については12月3日の「国際障害者デー」に呼応したものであると説明しました。
陳指揮官は、聴覚に障害を持つ人がマスクによってコミュニケーションに支障を来すこと、口の動きがわかる透明マスクを用いることがこの問題解決の助力になるよう望んでいると述べました(中央感染症指揮センター YouTubeチャンネル 12月1日定例会見)。当日はこの透明マスクが話題のニュースとして紹介されました。台湾ネットユーザーの多くは、
手語有時要配合觜形 (手話では口の動きも合わせないといけないからね)
聽障者看得到嘴型,方便溝通 (聴覚に障害を持つ人が口元を見ることができるのは、意思の疎通に便利だ)
有嘴形對聽障朋友很重要 (唇の動きは聴覚に障害を持つ人にとって重要だ)
と、透明マスクの重要性に同意を示しています。ただ「口罩會有蒸氣怕看不到 (マスクが曇って見えなくならないか)」といった実用性に疑問を示すコメントも複数見られました(コメントはFacebook、台湾Yahoo!から)。
■マスクにメッセージを込める指揮官
12月1日と2日の定例会見で着用された透明マスクは国際障害者デーに合わせたものでした。陳指揮官らは以前から白いマスクだけでなく、色や模様の異なるマスクを着用することもありました。彼らのマスクが注目を集めたのは、2021年6月19日の定例会見です。
当時台湾では国内の新型コロナウイルス感染が拡大の一途を辿っており、警戒レベルの引き揚げにより社会行動制限が敷かれ、社会の不安や緊張感が増している最中でした。当日の会見に姿を現した陳指揮官達の口元には黒地に金色で「請保持距離,把口罩戴好 (距離を保ち、マスク着用を)」と大きく記されたマスクが。
これには多くの人が反応を示し、ネットの掲示板には定例会見終了後から早速「請保持距離口罩搶眼 (距離保持マスクが目を奪う)」のタイトルのスレッドが建てられ、「哪裡買 (どこで買ったんだろう)」「好帥 (格好いい)」「真的會有人在路上戴這種口罩嗎 (街中でこのマスク着けている人いるかな)」と、陳指揮官着用マスクの話題で盛り上がりました(批踢踢實業坊スレッド)。
メディアでも連日取り上げられ多数の人が目にする機会の多い定例会見の場、特に寄りのカメラでフォーカスが当たる自身の顔にメッセージ入りマスクを添え、人々の注意喚起を促す方法は粋な演出と感じました。
以後、中央感染症指揮センターの定例会見でのマスクがニュースとして取り上げられることが増えていきます。 折しも台湾は当時国内の備蓄ワクチンが底を突き始めており、ワクチン購入確保が喫緊の課題となっていました。この状況を受け日本とアメリカ合衆国は台湾へのワクチン緊急供与を開始します。両国からの支援に陳指揮官は感謝の意が記されたマスクを着用し中央感染症指揮センターの定例会見へ臨みました。
■富士山と鳥居と「ありがとう」
6月25日の会見で指揮官は、上部にワクチン提供を表明した日本とアメリカの国旗、下部に中華民国の国旗があしらわれ、中央に「ありがとう」「Thank you」と記された特製マスクを着用しました。
続いてアメリカ提供のワクチン250万回分が到着した2021年7月1日の定例会見では、中華民国旗のスカーフを首に巻きたなびく星条旗の下に凜と立つ黒猫が描かれ「Strong Together (共に強くあれ)」と記されたマスクを着用。
日本提供ワクチンの第二弾113万回分が到着した同年7月6日の定例会見席上で着用のマスクには、上段に日本と中華民国の国旗、中央に悠然と聳える富士山、下段に鳥居が描かれ、日本語で「ありがとう」の言葉が。
また陳指揮官は同日の会見で「有情有義 (情義)」に厚い日本からのワクチン提供は、「對台灣的防疫有相當好的幫助 (台湾の防疫に相当な助けとなっている)」と謝辞を述べました(中央感染症指揮センター YouTubeチャンネル 7月6日定例会見)。
指揮官らが着用し日本やアメリカへの謝意を示したマスクは「感謝口罩 (感謝マスク)」と名付けられました。感謝マスクはデザインの秀逸さも相俟って大きな反響を呼び、ネットでは「怎樣很好看啊 我也想買 (とてもいい、欲しいんだけど)」「是非賣品嗎 (非売品?)」「哪裡買得到 (どこで購入できるの)」と、購入を希望する声が多く挙がりました(コメントはFacebook、台湾Yahoo!から)。
人々の要望を受け、指揮官達が着用していた日本・アメリカの「感謝マスク」数量限定販売が決定、大手コンビニエンスストアにて199元(約800円)以上の会計をした人に限り、 一人1枚1元(約4円)という無料に近い形で購入可能となりました。販売開始直後から多くの人が記念として購入、日本・アメリカ版は9月前に完売したとのことです。
■各国への感謝マスクも販売
陳指揮官らはその後も各国からのワクチン提供に対し感謝マスクを着用し謝意を示します。リトアニア(7月31日会見)、チェコ(8月29日会見)、ポーランド(9月5日会見)、スロバキア(9月26日会見)からのワクチン提供に対し各国の言語で感謝の意が記された感謝マスクを着用。
これらも市販を要望する声が高まったことから、現在は上述の日本・アメリカ版マスク以外にも各国の感謝マスクがスーパーやドラッグストアで購入できることになりました。小売価格は一箱10枚入り200元(約800円、1枚あたり20元=約80円)、こちらも数量限定のため現在は完売状態となっています。
口頭での呼びかけや謝辞だけでなく、カメラに映し出されるマスクを用いて視覚に訴えかける陳指揮官のマスク演出。私は粋で効果的な方策だと感心した次第です。何より、ワクチンを提供した日本に対し、このような形で感謝の気持ちを伝えようとしてくれる台湾の人々の思いを、多くの日本人にも知っていただきたいものです。
葛西様、いつも心温まる台湾でのエピソード、ありがとうございます。今回のマスクの件も、日本人として、とても嬉しく微笑ましいお話ですね。ありがとうございます。そんな葛西様に、ぜひお聞きしたいことがございます。
私は、台湾の方々のことを、東アジアにおける無二の親友だと思っております。周りは、中国、北朝鮮、韓国と、あまり関わりたくない国ばかりの中で、唯一、心から信頼できる国だと。
だから先日の安倍元総理の「台湾有事は日本有事」のスピーチには、涙が溢れました。さすがは安倍さん、と感動したものです。
ところがその後、このような記事を見つけました。
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20211206-00271381
台湾では、安倍さんのスピーチを、あまり歓迎せず、できるだけ報道しないようにしていること。台湾の方々は、尖閣諸島を自分たちの領土だと思っていて、安倍さんが日本の領土だと発言したことに不快感を持っていること。台湾の方々のそのような思いを知らなければ、日台関係はうまくいかないこと。
大変なショックを受けました。でも他にそのようなことが書かれた記事を見つけることはできませんでした。
台湾の方々は、先日の安倍さんのスピーチについて、どのように感じられたのでしょうか?もしも不快感を持っていないのならば、なぜあまり報道されないのでしょうか?台湾の方々は、尖閣諸島のことをご自分の領土だとお考えなのでしょうか?
ぜひ、ご返信いただけますよう、心よりお待ちしております。どうかよろしくお願いいたします。
匿名希望 様
いつもご覧くださりありがとうございます。
感謝マスクもすぐに完売、
義理堅い台湾の人々の性格が表れた例だと思います。
ご紹介の記事で「安倍氏のオンラインスピーチをできるだけ報道しないようにしている」
とのことですが、私が知る限りそのようなことは起きていません。
勿論民主主義国家ですので報道規制もされていません。
安倍氏のスピーチに関するニュースの取り扱いは台湾マスコミの立場によって
変わりますが、話題のトピックとして紹介されています。
(台湾の既存メディアはおおまかに「藍 国民党寄り」「緑 民進党寄り」「中立」
に分かれ報道姿勢も異なります。詳しくは過去記事 https://reiwa-kawaraban.com/international/20201127/に)。
なお尖閣諸島問題ですが、これは国家としての領土問題ですので、
安倍氏の発言に不快感を持った人も少なくないと思います。
近日中に安倍氏のオンラインスピーチに対する台湾の反応を
紹介する予定です。
葛西様、返信、どうもありがとうございます。
私は、令和電子瓦版の記事が、他のどんな記事よりも一番信頼できると思っております。ですから、葛西様がきちんと返信してくださり、大変光栄です。そして、領土問題についての記事も、次回にご紹介してくださるとのこと。お待ちしておりますね。
ただ、次回はあまり、喜んでばかりもいられないような。でも人間関係と同じで、国と国との関係も、全てうまくいくとも限りませんよね。お互い譲り合い歩み寄りながら、絆を深めていくことも大切かと思います。
ですから、次回の葛西様の記事は、少しばかりつらいものになるかもしれませんが、台湾の方々と、本当の意味での良い関係になれるために、わきまえなければならない大切な内容になるかと思います。
期待しております。どうかよろしくお願い申し上げます。