NHKアナを逮捕 住居それとも邸宅侵入?
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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警視庁中野署が2月20日午後、NHK札幌放送局に勤務するアナウンサー・船岡久嗣容疑者(47)を邸宅侵入の容疑で逮捕、同22日に送検した。報道によると船岡容疑者は17日夜に20代の女性が住むマンションに侵入。中にいた女性の知人男性と揉み合いになり、逃げようとしてマンションの3階のベランダから飛び降りて負傷し、2日間、入院していたという。各媒体によって報道内容は微妙に異なっており、事件の実態が見えてこない。ここは冷静に事実関係を整理する必要がある。
■「邸宅」侵入はどこに入ったのか
船岡容疑者の逮捕について、NHK広報局は21日に「職員の逮捕について」というお知らせをリリースした。「2月17日の夜、都内のマンション内に無断で侵入したとして、邸宅侵入の疑いで逮捕されました」と事実関係を明らかにした上で、「職員が逮捕されたことは遺憾です。事実関係を確認し、厳正に対処します」というコメントを掲載した。一方、警視庁は22日正午の時点で被疑者の認否を明らかにしておらず、何が起きているのか事実の把握が難しい。
特に、一連の報道を眺めても、容疑者が20代の女性の部屋に入ったのか、それとも共用部分にとどまるのかが分からない。部屋に入る、入らないでは犯行の悪質さという点で大きく異なる。
たとえば、読売新聞は「アナウンサーの20歳代女性が住む東京都中野区のマンション敷地内に不法に侵入した疑い。」(読売新聞オンライン・NHKアナウンサー逮捕、女性アナのマンションに侵入容疑…逃走時に飛び降り負傷、2023年2月22日閲覧)としている。テレビ朝日は「船岡容疑者は17日深夜から18日にかけて、同じNHKの20代の女性アナウンサーが住む東京・中野区内のマンション敷地内に侵入した疑いが持たれています。船岡容疑者はマンション3階の共有部分で女性アナウンサーの知人男性ともみ合いになったため、逃げるために3階の共用部分から地上に飛び降りました。」(テレ朝news・【速報】NHKの男性アナ(47)逮捕 NHK女性アナのマンション敷地に侵入か、2023年2月22日閲覧)と速報した。ともに共用部分のみの侵入としているように読める。
一夜明けた22日、スポニチは午前5時過ぎに公開した記事で、以下のように報じた。「捜査関係者によると、船岡容疑者は出張のため札幌から上京しており、通常通り業務を終えた後に女性宅に侵入。居合わせた女性の知人男性ともみ合いになる中で3階の共用部分から飛び降りて負傷した。」(スポニチ Annex・NHKアナ逮捕「スポーツ中継のエース」船岡久嗣容疑者 同僚女性アナ宅侵入か 3階から飛び降り…、2023年2月22日閲覧)
本文が「女性宅に侵入」、見出しが「女性アナ宅侵入か」としており、室内に入ったという判断のように読める。
また、日刊スポーツも22日午前11時過ぎに「住居侵入の疑い」で逮捕されたという記事を公開した(日刊スポーツ電子版・「信じたくない…」「混乱」NHK船岡久嗣アナ逮捕に相撲ファンからショックのツイート相次ぐ、2023年2月22日閲覧)。こちらも室内に入ったかのように「住居侵入」としている。
■侵入は室内か共用部分か
室内に入ったのか、共用部分だけなのか、どちらも管理者の意思に反して侵入すれば刑法130条に抵触するものの、犯行の性質を考える上でどちらなのかは非常に重要である。これを解く鍵は、NHKのプレスリリースにある。NHKのリリースでは「邸宅侵入」という聞き慣れない言葉が入っている。この「邸宅」は実際に条文に含まれている。
【刑法130条】(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
このように刑法130条は住居、邸宅、建造物を使い分けている。そして過去の判例などから「邸宅」には2種類ある。
①マンションの共用部分など
②住居用に作られたが、日常生活に使用されていない状態にあるもの
NHKは①の意味で使用しているのは間違いないと思われる。20代の女性アナは当該マンションの一室を衣装部屋などの物置ではなく、住居にしていたのは間違いなく、それゆえ知人の男性も部屋にいたのであろう。
自衛隊宿舎の敷地内でビラを配布した「立川ビラ配布事件」では、各号棟の1階入口から各室玄関前までの部分を「人の看守する邸宅」と判断している(最高裁判決平成20・4・11)。おそらくその流れからNHKもマンションの共用部分への侵入ということで「邸宅侵入」と発表したものと思われる。女性アナの部屋へ入ったら何の迷いもなく「住居侵入」とリリースに書けばいい話で、それを聞き慣れない「邸宅」としたのはそのような理由があると思われる。
ただし、上述の判例は侵入の対象が自衛隊の官舎での話であり、民間のマンションの共用部分への立ち入りで検挙された例では「住居」「邸宅」「建造物」のいずれに該当するかは明言していない(最高裁判決平成21・11・30)ことは付言しておく。
なお、警視庁中野署に出向き取材を申し込んだが「取材は警視庁の広報担当を通してください」という返答で、現時点では上記に示した以上の情報は得られていない。
■邸宅侵入の罪だけで終わるのか
邸宅侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金である。もっとも、今回は女性の知人の男性と揉み合いになっていることから、男性に対する暴行罪(刑法208条)や傷害罪(同204条)も成立する可能性がある。法定刑は前者が2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料で、後者は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金である。
これらと邸宅侵入の罪との関係は状況が分からないので断言できないが、暴行罪もしくは傷害罪が成立すれば、邸宅侵入罪と併合罪(同45条)となる可能性がある。その場合、重い方の罪の1.5倍までを長期とするため、特に相手の男性が負傷していたら、重い刑罰を科されたとしても不思議はない。
もちろん、これらはすべて可能性の問題、いわば講学上の問題であって、アナウンサーである女性やもみ合いとなった男性との示談が成立し、起訴猶予となって刑事責任は追及されないこともあり得る。
また、その女性との関係は分からない。札幌放送局勤務の容疑者が都内の女性に日常的にストーキングすることは不可能と言っていい。すると何が目的で、何をしようとしたのか、罪が成立するかは現段階では分からない。ただ、部屋にいた男性が出てきたとされているのであるから、女性が男性の存在に気付いて大声を上げるなどの状況があったと想像される。
そのような状況が発生し、同じアナウンサーで、47歳の男性が20代の同じ放送局に勤務する女性が住む場所にやってきて、無断でマンションの敷地内に入るというのは普通に考えれば怨恨の類ではないと思う。どちらかと言えばそれとは逆の思いにかられての行動と考える人が多いのではないか。実際、ネット上ではそのような根拠のない推測が次から次へと流れている。
■女性の詳細を伝える必要性はあったのか
一連の報道を見て感じるのは、捜査関係者の話として「同じNHKの20代の女性アナウンサー」(前述のテレ朝news)とまで伝える必要があったのかという点。
NHKは巨大組織とはいえ、20代の女性アナの人数は限られるため個人が特定されやすく、当該女性アナもそれを決して望んではいないはず。そう考えると捜査関係者が言ったから、そのまま女性の情報を流すのは人権侵害に繋がりかねない。特に邸宅侵入容疑であれば被害者はマンションの管理者であり、女性は犯罪被害者とは言い難い。
当サイトでもそれを書くかどうか判断に迷ったが、多くの媒体に出て、それらの報道が引用されている以上、意図的に報じないのは情報を発信する者としては不適切であると考え記載した。
■東京五輪開会式実況を担当
船岡容疑者は「スポーツ中継のエース」(前述のスポニチAnnex記事)と呼ばれているそうで、容疑者のツイッターのプロフィール欄には「東京五輪開会式実況、平昌五輪・北京五輪フィギュアスケート実況、ウィンブルドン選手権実況など」と書かれている。
こうしたことがあれば、この先、同容疑者のスポーツ実況を聞くことはないと思われる。民放でもスポーツを実況するアナウンサーのセクハラ疑惑などが報じられて実況の世界から離れた例もある。
また、NHKに限って言えば、記者だった男が強姦(当時)致傷など複数の犯罪により、懲役21年の刑が確定した例もある。
この先、船岡容疑者にどのような罰、NHKの処分が待っているか分からないが、47歳にして残りの人生はイバラの道となってしまったのは間違いなさそうである。
不起訴処分になったようですが、ストーカー規制法に基づく禁止命令を出されたことからも”この男の悪質さ”が想像出来ます。
メディアにもこの男と似通った悪質さを感じます。
被害者が特定されるような内容や誤解を生むような報道は控えるべきです。無責任な世間に不倫を疑われた被害者が気の毒でなりません。
20代の女性が50近い男を恋愛対象にするなど有り得ない。先輩だから立てていただけなのに男が勘違いした。単なる私の推理ですが、そんなところでしょう。
娘に近いような年齢の女性が四捨五入して50の自分、しかも既婚者を受け入れると思うこの男の感覚も理解不能です。
自分を律せない人は人生詰みますね。