刑務所行きか つばさの党黒川容疑者傷害罪成立も

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 公選法違反容疑で逮捕された政治団体「つばさの党」の黒川敦彦代表(45)らに傷害罪が適用される可能性が出てきた。黒川容疑者らには選挙の自由妨害罪の容疑がかかっているが、政治団体「日本保守党」の飯山陽(あかり)候補への自由妨害により、同候補が体調を崩して医師から加療が必要と判断されており、暴行によらない傷害罪が成立する余地がある。同罪の最高刑は懲役15年と自由妨害罪の4年を上回り、代表の黒川容疑者には実刑判決が出される可能性は十分にある。

◾️生理機能障害説

黒川敦彦容疑者(チャンネルつばさ・黒川あつひこ画面から)

 つばさの党は衆議院東京15区の補欠選挙告示日の4月16日、他陣営の候補者が演説するJR亀戸駅前で拡声器などを用いて演説が聞き取れないようにした選挙の自由妨害(公職選挙法225条)の疑いで、同団体代表の黒川代表、補選の候補者となった根本良輔幹事長(29)らが5月17日に警視庁に逮捕された。

 これ以外にも黒川容疑者らは日本維新の会、立憲民主党、無所属の候補者らにも同様の行為を行なっており、それらも立件される可能性はある。選挙の自由妨害罪の法定刑は4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金であり、それぞれの自由妨害罪が併合罪(刑法45条)としても最高で懲役6年しかなく、世間を騒がせ、民主主義の根幹である選挙の妨害という重大な事案であるのにあまりに軽いと感じる人は少なくないと思われる。

 ところが、ここにきて黒川代表らに傷害罪が適用される可能性が出てきた。日本保守党の飯山陽候補に対して行われた自由妨害で、同候補が選挙後に体調の不良を訴え、医師から加療が必要と判断されているのである。

 この点は同党のホームページでは「選挙戦の最中、4月19日より街宣現場や選挙事務所において“妨害”に遭い、この日を境に飯山氏は、不眠、耳鳴りなどの症状に悩まされるようになりました。投開票日翌日の4月29日、専門医を受診しましたところ、『加療が必要』との診断が下りました(病名非公表)。」と説明されている(日本保守党・支部長の異動について)。

 この情報は5月2日付けでリリースされたが、その後、黒川容疑者らの逮捕により、あらためて注目されることとなった。病名は非公表ではあるが、病気になったことは明らか。傷害罪における傷害は「人の生理機能に障害を与えること、または人の健康状態を不良に変更すること」であり、判例はこの生理機能障害説に立つとされている。

 飯山氏の生理機能に障害を与えた、もしくは健康状態を不良に変更した原因がつばさの党による選挙の自由妨害の具体的な行為によることをプレスリリースは明らかにしており、そうであれば黒川容疑者らによる傷害罪は成立する可能性はある。

◾️暴行によらない傷害

 傷害罪は人の身体を傷害することによって成立するため、言論行為しか行なっていない黒川容疑者らには成立しないように思えるが、これは暴行によらない傷害の例であり、過去にも同様のパターンで傷害罪が認められている。

 最も有名なのは奈良騒音事件、騒音おばさん事件などの名称で知られる事案である。これは奈良県の主婦が、隣家に対して1年半にわたり朝から深夜(翌未明に至る時もあった)までラジオなどを大音量で鳴らし続けたもので、それにより隣家の主婦に慢性頭痛症などを発症させたとして起訴された。

 最高裁は「約1年半の間にわたり、隣家の被害者らに向けて、精神的ストレスによる障害を生じさせるかもしれないことを認識しながら、連日朝から深夜ないし翌未明まで、上記ラジオの音声及び目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けるなどして、同人に精神的ストレスを与え、よって、同人に全治不詳の慢性頭痛症、睡眠障害、耳鳴り症の傷害を負わせたというのである。以上のような事実関係の下において、被告人の行為が傷害罪の実行行為にあたるとして、同罪の成立を認めた原判断は正当である。」との決定をし、”騒音おばさん”の懲役1年の実刑判決が確定した(最高裁決定平成17.3.29)。

 この判例からすれば、黒川容疑者らが「言論の自由」と呼ぶ行為も、傷害罪の実行行為にあたると解される可能性は十分にある。問題は「故意犯であるから傷害の故意が必要となる。」(刑法各論第6版 西田典之 弘文堂 p43)ことである。

 この点は捜査を待つことになるが、黒川容疑者は5月13日に家宅捜索を受けた際に取材に対し、選挙活動について「多少乱暴であるという認識はある」(FNNプライムオンライン・街宣車押収…「家宅捜索は心外」つばさの党・黒川敦彦代表「多少乱暴」と認識も「言論行為を権力者が止めてはならない」)と答えている点は注目される。つまり、多少乱暴なやり方というのは自らの選挙活動を飯山候補がストレスに感じることの認識はあったと言っているに等しい。構成要件的故意に欠けることはないと判断されるのではないか。

◾️講学上は併合罪で懲役22年6月

 このように飯山候補への自由妨害が傷害罪に当たるということになれば、飯山候補に対しては公選法の選挙の自由妨害罪と傷害罪の観念的競合(1つの行為が複数の罪名に触れること)で科刑上一罪(刑法54条1項)となり、その中で最も重い罪の刑である傷害罪で処断されることになる。傷害罪の法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金である。

 飯山候補以外の候補者への妨害罪とは併合罪(同45条)となるであろうから、22年6月以下の懲役となる。もちろん、それは講学上の話であり、法定の最高刑から1月も短くならない判決というのもそうそうないので、実際はそれよりはかなり短くはなると思われる。

 ただし、選挙の自由妨害、それも候補者を傷害する方法で実行したことは民主主義の根幹を揺るがしかねない事態で、それによって立候補を考えていた者が萎縮する可能性もある。検察もそれなりの求刑をすることは予想され、少なくとも黒川容疑者は実刑となるのではないか。逮捕時の様子から反省は皆無のように見え、矯正施設で矯正する必要はあると裁判官が考えても不思議はない。

◾️捜査側の覚悟

根本良輔容疑者(チャンネルつばさ・黒川あつひこ画面から)

 以上はあくまでも現時点での状況による推測であり、今後の捜査の行方によって事情は変わるかもしれない。

 それでも、警視庁が早期に黒川容疑者らに選挙妨害にあたると警告を出していたのに実行されたこと、家宅捜索で機動隊まで駆り出していることなどを考えれば、捜査側も相当な覚悟を持って臨んでいることは感じられる。

 表現の自由の美名の下に、他者の権利を侵害する、民主主義の根幹を為す公正な選挙の実現を阻むことが許されるはずもない。国民に保障された自由及び権利は「これを濫用してはならない」という憲法12条を全く考えていないような人物が国政選挙に立候補するというのは、悪い冗談でしかない。

 黒川容疑者らには、しばらく刑務所で反省の日々を過ごしていただきたい。

    "刑務所行きか つばさの党黒川容疑者傷害罪成立も"に1件のコメントがあります。

    1. BADチューニング より:

      故:安倍晋三氏に対する選挙妨害について、
      北海道の裁判所が◯◯判決を繰り返した為、
      現地で現実に妨害行為をしている時点で排除出来なくなったんですよね?

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