市川速水朝日編集委員が安倍首相発言”変造”か
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
最新記事 by 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 (全て見る)
- 見えてこない導入の必要性 分娩費用の保険適用化 - 2024年11月18日
- 検討会で弁護士暴論「産科医は医療安全に前のめり」 - 2024年11月16日
- ズレてる安藤優子氏 窓際指定席を外国人に「どうぞ」 - 2024年11月12日
朝日新聞の「論座」で8月2日に同社の市川速水編集委員の「韓国は『敵』なのか 日韓亀裂の正体は『初の報復』対『挙国防衛』/修復不能を危惧する緊急声明」という記事が公開された。日本による対韓輸出規制について批判する内容だが、これが発言内の原因と結果の因果関係を変更する「変造」と言っていいレベルの事実の指摘に基づくものである。その手法を明らかにしたい。
■輸出管理規制の見直し、ホワイト国外しは報復か?
市川氏の記事は、韓国への半導体素材の輸出管理規制の見直し、それに続くいわゆる「ホワイト国外し」について論じている。一連の日本政府の政策について「『報復』という手荒な手段」であり、「表向きは元徴用工訴訟の『報復』とはいわずに『通常の措置』を装う。ところどころに報復や敵視の本音が垣間見える。」としている。
これまで安倍内閣では、一連の措置は徴用工問題とは無関係であり、国家の安全保障上の問題であるとしてきた。7月12日に行われた日韓の事務レベル会合では「韓国の貿易管理体制が脆弱であり、予防的な措置」と説明したと伝えられている。
安倍首相自身も、7月3日に行われた日本記者クラブ主催の7党党首討論会で、報復ではないことを明言し、ワッセナー・アレンジメントによるものであることを明らかにしている。
政府が報復ではないと否定しているものを「報復である」と考えるのは、市川氏の勝手である。しかし、そのように考えるなら論拠を示さなければ説得力を発揮しない。全体で4000文字近くの長い記事だが、その論拠については実に短い。問題となるのは以下の一文である。
■一見、合理性があるように見える市川氏による首相発言
市川氏は前出の「報復や敵視の本音が垣間見える」と書いた後に、「たとえば安倍首相は『1965年に請求権協定でお互いに請求権を放棄した。約束を守らないなかでは、今までの優遇措置はとれない』というような言い方で。」と、その具体例を示して論拠としている。この安倍首相の発言は、以下のように理解すべきで、他の理解の方法はないと思う。
① 日韓請求権協定で、相互に請求権を放棄した。(前提 A)
② しかし韓国は約束を守らない(原因 A)
③ 約束を守らないのであれば、従来の優遇措置を取れない(結果 A)
これが真実であれば、安倍内閣による「報復や敵視の本音」は明らか。約束を守らないから一連の措置をとったもので、それは対抗措置であり報復であろう。もし、本当に安倍首相がそのような発言をしていたら、である。
■市川速水氏のトリック、発言の切り貼りで因果関係を変更
結論から言えば、この安倍首相の発言は前出の7党党首討論会でなされているものを”切り貼り”したものである。この時の発言は今でもyou tubeで見聞きでき、その発言全体は別記事に示しているので、参考にしてほしい。
この時の安倍首相の発言の要旨はこのようになっている。
1、請求権協定で、相互に請求権を放棄した。(前提 A)
2、しかし韓国は約束を守らない。(原因 A)
3、国同士の約束を守らないと一体、どうなってしまうのか(結果 A)
4、貿易管理体制の強化は安全保障上の問題(前提 B)
5、しかし韓国は約束を守らない。(原因 B)
6、約束を守らないのであれば、従来の優遇措置を取れない(結果 B)
市川氏が示した安倍首相の発言は、確かに部分的になされている。しかし、その繋がりが全く異なるものとなっているのである。安倍首相は1~6を語り、前半の1~3がA事象(主に徴用工問題)に関するもので、後半の4~6がB事象(貿易管理体制の問題)についてである。
ところが、市川氏は安倍首相の発言の1、2、3ではなく、1、2、6を① ② ③としているのである。つまり前提Aー原因Aー結果Bという流れである。B事象はA事象とは何の関係もないが、安倍首相の言葉を省略する形でA事象の前提と原因を、無関係のB事象の結果を結びつけたのである。
安倍首相としては「発言の趣旨が違う」と言いたくなるだろうが、それに対しては「あなたは確かに1、2、6の内容を話したではないか」と反論できるという仕掛けになっている。
■従軍慰安婦報道について全く反省していない?
これが市川速水氏の論法。相手が言ったことを切り貼りすることで意味を変え、それを論拠に自分の正当性を主張している。発言者の言葉そのものは変えないが順番を変えることで、本来、因果関係がない部分に因果関係を持たせてしまうのである。「変造か」と書いたが、「捏造」と言ってもいいレベルであろう。
そして、そのような批判が出ることへの対策なのか「というような言い方で。」と最後に付している。これは「あくまでも言い方の問題を論拠にしたのであって、言った内容そのものについては論拠としていないことは明示しているから問題ない」という逃げ道、エクスキューズを作っているのであろう。
後は自分が作り上げた前提に乗って、これまでの日本政府の対応を「報復」であると決めつけて批判を重ねる。従軍慰安婦報道で全世界に向けて謝罪し記事を取り消した朝日新聞だが、編集委員の書く文章を見る限り、全く反省していないと言うしかない。
以上、別記事で安倍首相発言の全内容を掲載しているので、参考にしていただきたい。また、映像についてはこちらから確認が可能である。