危険な「統一教会騒ぎ」新たなテロ誘発も

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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 安倍晋三元首相が銃撃され亡くなった事件で、犯人の「宗教団体統一教会への恨み」という動機に注目して騒ぐ人々、メディア、政治勢力がある。この行為は非常に危険だ。昭和戦前期には、「テロで社会に自らの主張を広げられる」という風潮があったために、次のテロが誘発された。同じようにテロの批判ではなく、犯人の主張に注目されることが繰り返されれば、現代の日本でも次のテロが起きかねない。騒ぐ人の猛省と、その行為の停止を求めたい。

◆「主張」を広げるのがテロリズム

安倍晋三元首相Facebookから

 「テロリズム」とは、警察が次のように定義している。

広く恐怖又は不安を抱かせることにより、その目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動」(警察庁組織令39条)

つまり、政治上の主張という目的を持ち、それを達成する暴力行為がテロリズムである。テロはテロリズムの考えに立った行為の形と言える。そして安倍氏への銃撃はテロだ。

 警察発表によれば、実行した山上徹也容疑者は、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に恨みがあり、その攻撃の目的で事件を起こしたと供述している。安倍氏はこの宗教の信者ではなく、ただの逆恨みで、この事件ではテロに犯人の異常な思考も加わる。ただし、これは現時点で警察が供述を発表したもので、本当の意図はまだわからない。

 ところが、この発表を受けて統一教会と安倍氏、自民党の関係を騒ぎ、関心を盛り上げようとする人たちがいる。ジャーナリスト、メディアが情報を出し、それを一般大衆や、立憲民主党、共産党の政治家がSNSで拡散している。

 統一教会は異常な集金活動、そして自民党との癒着がかつて社会問題になった。しかし、それが目立ったのは1990年前後だ。今もこの組織に問題はあるのかもしれないが社会が忘れるほどに活動が縮小していた。韓国人教祖が死に、組織名を変えていた。「統一教会が原因」と、山上容疑者の狙いを垂れ流すことは、この人物の主張を拡散し、テロ行為を助けることになる。もしくは別の意図を持った黒幕がいる場合に、その黒幕を助けることになる。つまりテロを支援している。騒ぐ人は、自分が「テロの共犯者」と分かっているのだろうか。

 もちろん問題のあるカルト宗教と政治の癒着は当然批判され、暴かれなければならない。「統一教会、安倍、自民党」という、センセーショナルで、テロを支援するかのような、単純な議論をやめるように、私は言っているだけである。

◆テロ賛美する昭和戦前期、次のテロを誘発

 さらに山上容疑者の主張を強調することは、テロの連鎖を産みかねない、社会の破壊行為である。昭和戦前・戦中期(1925~45年)に、「愛国が目的だ」と主張するテロが頻発した。その動機に社会の関心が向いたために、主張が拡散できるとテロリストが思い、次のテロを誘発した。いつの時代のどの国でもテロにはその面があるが、この時代の日本では顕著だった。最近の日本で、テロ事件はまれで、歴史が示す危険を知らない人が多い。

 5・15事件(1932年)とその余波を紹介しよう。犬養毅首相が、首相公邸を襲った海軍の青年将校らに殺害された事件である。政治家が萎縮して、この事件以降、政党内閣は組織されなくなる。犬養は詰め寄った将校らに「話せばわかる」と言ったのに、将校は「問答無用」と頭を撃ち抜く残酷な行為をした。巡査も1人殉職した。

 この事件は当初のクーデターの予定が変化し、最後は首相殺害だけを目的にしたテロとなった。ただの「人殺し」である。ところが支援した民間右翼団体が、パンフレットや新聞で、「社会混乱や貧富の差を憂いて将校は決起した」と、キャンペーンを行った。その情報に影響されて犯人支援の動きが盛り上がった。海軍軍法会議には一般民衆から百万通以上の減刑嘆願書が送られた。それが影響したのか、判決で死刑はなく長期禁錮だけで、その後多くが恩赦などで出所した。

 この事件の結果、「動機が正しければ、どんな行為も許される」という誤った考えが、社会に植え付けられてしまったのだろう。その後にテロ、クーデター、また未遂事件の摘発が繰り返され、社会不安が増幅した。血盟団事件(1932年、政治家2人殺害)、神兵隊事件(1933年、未遂)などが続く。最大規模のテロになった2・26事件(1936年)では、犯人の陸軍将校らは、兵を動かし、9人(そのうち重臣や陸軍高官4人、警察官5人)の大量殺害をした。犯人らは5・15事件の社会からの好意的反響の大きさと、判決の軽さから見て、自分達の処罰を楽観視していたとされる。2・26事件の首謀者ら関与した者は18人死刑、2人自決となった。

 テロの連鎖によって、戦前期は愛国を唱える右派勢力、陸軍が力を得た。大日本帝国が敗北した太平洋戦争も、こうしたおかしな世論を背景にした陸軍の対外強硬策が発生の一因だ。

◆犬養家のその後の悲劇

NHK出演時の犬養道子氏(NHKアーカイブス画面から)

 5・15事件で気の毒なのは遺族だ。のち作家になる犬養道子さん(1921~2017年)は、当時11歳であり、事件直後に亡くなった祖父の遺骸に対面した。祖父が殺された理由が分からず、さらに犯人が讃えられる姿が悲しく不思議でならなかったという。家に出入りしていた商人は「あんたのところは国賊じゃないか。皇軍の兵士に殺されて。アカの手先だ」と、母に罵詈雑言を浴びせ、物を売るのを拒否したという。

 犬養家は転居し、犬養毅の親族ということを隠して生活した。親族の女性が、「人間ってそういうものよ、日本人ってそういうものよ」と、その境遇を悲しんだという。道子さんは、深く傷つき人生観を変えた。(以上エピソード、「昭和史七つの謎」保阪正康著、角川文庫より要約)安倍氏の親族も、同じ苦しみ、悲しみを、現代の日本人から受けているかもしれない。そうならば、私は日本人として、恥ずかしく、悲しい。

 日本の政治をめぐる議論では「戦前を繰り返すな」と言う言葉が左派政治勢力からよく聞かれる。今回、日本共産党を中心とした極左勢力が、安倍氏へのテロを政治利用し、犯人の動機を強調している。現代極左の人々は戦前の右翼と全く同じ愚行と醜い行為を繰り返している。犬養家を罵った商人と、今でも「アベガー」と叫ぶ人たちの似た姿を見ると、「人間ってそういうものよ、日本人ってそういうものよ」と私も言いたくなってくる。

◆次のテロを止めるため「テロ批判」こそ議論の中心に

「国葬に賛成する理由はない」とする蓮舫議員(同氏Twitterから)

 安倍氏への中傷、誹謗はその生前で異常であった。そして亡くなった安倍氏に鞭打つような異様な批判をしている人たちがいる。さらに統一教会を題材に、「安倍、自民党、カルト」と騒いでいる人やメディアがいる。

 こうした3つの動きをしているのは、ほぼ同一の「ノイジーマイノリティ」(騒ぐ少数者)だ。「サイレントマジョリティ」(静かな多数派)は安倍氏の死を悲しみ、テロへの怒りを示している。それが人としての当たり前の態度だ。ただし、そうした普通の日本国民は、安倍氏と同じように他者に寛容で、暇なこうした人たちと違って正業に忙しいので、前者を無視していた。そうした常識で向き合っていては、「騒ぐ少数者」の横暴が広がるばかりだ。

 安倍氏の悲劇的な事件の議論の中心は、「安倍氏の死を悼み、テロを二度と起こさせない」という考えで貫かれなければならない。「統一教会騒ぎ」の危険性を認識し、常識ある多数派が、それに踊る「騒ぐ少数者」の異常な行為をすぐに止めさせるべきだ。

"危険な「統一教会騒ぎ」新たなテロ誘発も"に2件のコメントがあります

  1. 通りすがり より:

    マスゴミは故意にこのテロ事件をネタに更なる恣意的な情報を拡散することで、次のテロを誘発しようとしている節がある。

    今朝も某TBSのラジオ番組で時事通信の論説委員が森本毅郎と共に「統一教会、安倍、自民党」を故意に密接な関係があるとしながら、さらに踏み込むと日本会議との関係も疑われるなどと憶測を垂れ流す始末。
    驚いたことに「まだ取材はしていないが」という耳を疑う前置きをしていた。
    時事通信や共同通信、朝日新聞などが実際の取材に基づかない「政府関係者の話」だの「自民党内の関係者」だのの話を都合よくでっち上げることが常態化してるのは周知の事実。

    やはり日本と日本人の敵は反日マスゴミのオールドメディアということで間違いない。

  2. トトロ より:

    軍部暴走を真似得た『統帥権干犯問題』を騒いだの軍部ではなく、犬養をはじめとする政治家で犬養が首相になっても動かないから青年将校から決起した。それを無視をするば同じことの繰り返しすることになる。

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