日テレ報道に北海道アイヌ協会の怒り

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 情報番組「スッキリ」(日本テレビ系)で12日、アイヌ民族を差別する表現がなされ、夕方のニュース番組で謝罪する騒ぎとなった。局には抗議が多数入ったとされる。この問題について公益社団法人北海道アイヌ協会(理事長:大川勝)に聞いた。

■アイヌ民族の女性を肯定的に扱う内容だったが…

ナレーションは「アイヌって、本当に美しいっすね〜」だった(日本テレビ画面から)

 問題になったのは番組内のコーナー「スッキりすの 週末オススメHuluッス」。これは定額制動画配信サービスHuluの中から優れた作品を紹介するもので、この日は「Future is MINE-アイヌ、私の声-」というドキュメンタリー番組を紹介した。萱野りえさん(32)というアイヌ民族の女性の生き方を描いたものである。

 コーナーの最後にナレーションと進行役をする、お笑い芸人の脳みそ夫さんの謎かけを視聴者に投げかけた。

 「この作品とかけまして動物を見つけた時と解く。その心は『あ、犬』」。

 これに視聴者の抗議が集まり、日本テレビは夕方のニュース枠で謝罪したというのが事件の概略である。

 「Future is MINE-アイヌ、私の声-」に対するコーナーでの扱いは非常に好意的なものであった。「違いを恐れるんじゃなくて違いを認めて分かり合える世界への希望」(歌手:AI)、「凛とした姿が強く美しく心が震えました」(歌手:加藤ミリヤ)という著名人の声も紹介している。

 それを受けて脳みそ夫さんは「アイヌって、本当に美しいっすね~」というナレーションで締めた。日本におけるマイノリティーのあり方、アイヌ民族の誇りを持っている人を紹介することで、多文化共生を感じさせるものと言える。作品を肯定的に扱うことで、社会へのメッセージとしていると言ってもいい。

■北海道アイヌ協会「対応を協議中」

 上記のような番組紹介の後に、前述の差別的な表現が使用された。これについては「お笑い芸人のダジャレにいちいち過剰反応しなくても…」という思いを持つ人も少なくないのではないか。「言葉狩りではないのか」という印象を持つ人がいても不思議ではない。

 この表現は、アイヌ民族への差別が激しかった時代、誹謗中傷、揶揄する際に使用されることが多かったと言われる。番組構成上はマイノリティーへの差別とアイデンティティーという重い話が続いた中、視聴者の緊張をほぐそうとしたものと思われるが、そのような歴史的経緯は考慮されていないようである。

 この点について、公益社団法人北海道アイヌ協会に電話で問い合わせた。

松田:日本テレビの問題について、お話をうかがえませんか

北海道アイヌ協会(以下、協会):私どもも対応を協議中でして、お時間を割くのは難しいです。

松田:ということは、もう日本テレビには抗議をしたわけですね

協会:抗議と言いますか、昨日(12日)のうちに連絡を入れ、担当の責任者と話をしています。現在進行形ですので組織として「こうです」とは、まだ言えない状況です。

松田:私も新聞社に勤務していて北海道出張が多かったのですが、番組で言われたような言い方は、差別が横行していた時代に子供たちがアイヌ民族の方をバカにする時によく使われたと聞きます

協会:そのように使われた経験のある人が、まだいらっしゃいます。

■「本州に住んでいる番組制作スタッフの方々が…」

日本テレビ画面から

 話は核心に入っていく。東京にいるとアイヌ民族への差別というのは実感しにくいこと、ダジャレに過剰反応では、と疑問を持つ人もいると思われる部分である。

松田:番組全体を見ると、萱野りえさんを非常に肯定的に扱っていて、「アイヌって、本当に美しいっすね~」というナレーションもありました。それが最後に謎かけで、冗談っぽく言っているわけですが、東京に住む我々からすれば「それがそんなに問題なのか」と感じている人は結構多いかと思います。ただ、北海道の(アイヌの)人の中には、そう言われてすごく傷ついたという経験を持つ人がいる、そういうバックグラウンドがあるという理解でよろしいですか

協会:そういうことです。また、個人的な感情だけでなく、アイヌ民族に対する正しい理解がまだまだ浸透されていないという点もあります。本州に住んでいる番組制作スタッフの方々がアイヌ民族の存在を含めて、歴史や現状について理解がされていないんじゃないかということは言えます。何でそれが問題になるのか分からないという方は、そういった部分の感覚がちょっと鈍いと言うか…

松田:「鈍い」という言い方は、どうでしょうか。東京にいると状況は分からない部分があります

協会:アイヌ民族について、(北海道以外では)知る機会が少ないじゃないですか。歴史、文化を持っているアイヌの存在を実感する機会も少ないでしょうし、そういう実態からこういう問題が生じています。アイヌの精神世界を理解して映画の内容を紹介するということは、多くの人に知ってもらうためのものでありますが、(今回の問題は)手法があまりにも…。過去、北海道で経験されたことっていうのを知らない人たちによって作られることで、ああいう表現になってしまっているということです。それをもう少し、しっかり認識してもらうためにはアイヌ民族についての情報を全国的に広めていくことが大事だと思います。

■アイヌ民族の尊厳に配慮を欠いた日本テレビ

松田:番組での失礼な表現は、アフリカ系米国人の肌の色を揶揄するのに似たものというイメージでしょうか

協会:存在自体を認識した上でやったのなら故意にやったものですから、もっと悪いと思います。アイヌはカムイと対になる言葉ですから、その中に差別的な意味合いは全くありません。アイヌという尊称を名前の後に付けるのは、尊敬される人物ということで用いられるのに番組では犬と絡めて表現しています。そういった意味ではアイヌ民族の尊厳に全く配慮がなく、そういうことで言われた過去がある者たちにとってみれば、不快極まりないわけです。それを何も疑問に思わず、アイヌを犬と絡めて表現することを、(番組制作の)準備をしていた人たちが「これってどうなんだろう」と思うことはなかったのでしょうか。制作の過程で誰もそれを「表現がおかしくない?」というのが出てくるべきだと思います。結果、間違った情報が発信されてしまったということです。

松田:間違った情報というのは…

協会:表現もそうですし、アイヌということが正しく伝わらず、「アイヌ」という音と犬を絡めた上に、動画に犬(の絵)も使っていることです。なぜ、そこに使わないとPR・周知ができなかったのかというのは、最初に感じる疑問です。

■日本テレビは本当に知らなかったのか

 アイヌ民族を揶揄する表現として、犬と絡めた表現が過去に頻繁に用いられたことを日本テレビは本当に知らなかったのだろうか。「コーナー全体が前向きなものだから、こうしたダジャレ的な扱いも許される」と考えていた可能性は、よく調査されるべきであろう。

 メディアは森喜朗元首相の女性に関する発言では、異常なまでのバッシングを続けてきた。その基準からすれば、日本テレビの表現は比べ物にならないほど悪質。この問題をどう扱うか、当事者の日本テレビはもちろん、それ以外のメディアもその見識が問われている。

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