プーチン=浅野内匠頭で擁護するアナリスト
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領を忠臣蔵になぞらえて擁護する記事が登場した。それによると同大統領は浅野内匠頭長矩であり、吉良上野介義央のようなNATOにいじめ抜かれて刃傷に及んだとし、一方的に批判することに疑問を呈するというもの。冗談ではなく本気で擁護論を展開しているようで、プーチン大統領の国際法違反、人道に反する行為にも一定の合理性があるかのような議論には疑問符がつく。
■吉良上野介=NATO
問題の記事は国際投資アナリストで人間経済化学研究所の執行パートナーの大原浩氏が3月18日、現代ビジネスで公開したもの。内容を簡単に紹介する。
ウクライナ侵攻について、ロシアやプーチン大統領だけが一方的に悪いとする報道に疑問を呈した記事を3月7日に先行して掲載しらが(現代ビジネス・プーチンは米国を見透かしていた? ウクライナの悲劇はだれの責任か)、その後も状況に変化はない。
手を出した国は悪いが、手を出さざるを得ない状況に追い込まれていたのは事実である。そのため一時の感情に流されずに冷静かつ公平な対応を行うことが日本の将来にとって重要である。
忠臣蔵で浅野内匠頭を批判する人は少ない。それは吉良上野介が浅野をいじめたから事件が起きたのであり、喧嘩両成敗のはずが浅野は切腹、吉良は処分はなしとなり、多くの人が疑問を感じている。
今回のウクライナの構図は、強大なNATO(北大西洋条約機構)=吉良が、経済的には弱小のロシア=浅野をいじめ抜いた結果、ロシア=浅野が吉良の小姓ゼレンスキーに手を出したものである。
ロシアにとってウクライナのNATO加盟は、煽り運転や幅寄せをされている感覚であったはず。そのため「『ウクライナがNATOに加盟したらロシアは終わりだ』とプーチン氏が考え、そのようなメッセージも明確に送っていたのに「危険運転」を行った米国やNATOにも大きな非」があると考えられる。(以上、現代ビジネス・プーチンだけが悪玉か―米国の「幅寄せ、煽り運転」がもたらしたもの)
■松の廊下は喧嘩両成敗?
筆者の大原氏の言いたいことは冒頭の「『手を出した』国が悪いに決まっているが」としているが、『手を出さざるを得ない』状況に追い込まれていたのも事実である。」に集約されていると言っていい。手を出したロシアは悪いが、そのように仕向けられたから、ロシアばかり責めるなということであろう。
その比喩としてのプーチン大統領(ロシア)=浅野内匠頭であり、ロシアを一方的に責めるのは「浅野内匠頭は極悪非道」と同じという主張で「上野介が悪いに決まっている」という多くの日本人の感性に訴えかけていると言っていい。
仮に大原氏の言うようにプーチン大統領(ロシア)=浅野内匠頭としよう。浅野の行為とその処分を検討してみる。
浅野内匠頭長矩は1701年3月14日(旧暦、新暦では4月21日=ke!san・和暦から西暦変換)、江戸城内の松之大廊下で、小刀で吉良上野介義央の額と背中に切り付けた。たまたま現場に居合わせた梶川与與惣兵衛頼照に取り押さえられた。
浅野は即日切腹となり、吉良はお構いなし。その後、忠臣蔵などで脚色され、吉良による嫌がらせは相当なもので、名誉を重んじる武士としては耐え難いものであり、刃傷に及ぶのも当然という世論が形成された。そのあたりは大原氏も(史実と違うという意見もあるが)と一定の配慮を行っている。
しかし、当時の幕府の判断は浅野切腹、吉良邸に討ち入りを行った大石蔵之介良雄ら46人も切腹としている。浅野方は一方的な加害者であり、吉良は被害者でしかない。
大原氏は「喧嘩両成敗のはずなのに、吉良上野介はお構いなしにもかかわらず、浅野内匠頭の言い分は全く聞かずに即日切腹を命じた五代将軍綱吉の采配に対しては、多くの人々が疑問を感じるだろう。」と書いているが、この点は事実を誤認している。松の廊下での刃傷は前述の通り喧嘩ではなく、一方的に傷害を負わせたものである。吉良が小刀を抜いて応戦していれば刑法でいうところの「喧嘩闘争」と言えなくもないが、そのような事実はない。梶川与與惣兵衛頼照の「梶川日記」を読めば、その点は明らかである。
現代の刑法で考えれば、浅野は殺人未遂罪(刑法199条、203条)に問われる行為を実行し(もしくは傷害罪=同204条)、吉良はその被害者に過ぎない。吉良は当時、高家肝煎饗応差添役として勅使の接待の指南役という重要な業務を行なっていたと考えると、浅野には威力業務妨害罪(同234条)も成立すると思われる。
当時の幕府が「喧嘩両成敗」を適用する場面ではないと判断したのは当然。吉良にも侮辱罪(同231条)が成立するかもしれないが後世の脚色の可能性があり、仮にそのような事実があったとしても吉良を処分するかどうかは浅野の処分とは別問題であるし、そのことで浅野の行為の違法性が阻却されるとは思えない。
■違法な侵攻に合法な自衛権発動
忠臣蔵が江戸の庶民にも、そして現代でも愛されているのは、名誉を重んじ、主人の仇を家臣が討ち、自らも切腹を命じられて散った潔さ、武士道精神の体現にある。基本的人権など普遍的価値を有する概念を最大限に尊重する現代社会では許容される余地はない。
そのような時代設定を意識した上で現代人は忠臣蔵を楽しんでいるのである。そうした背景を無視し、たまたま状況が似ているから「プーチン大統領=浅野内匠頭」としてプーチンにも一分の理があるという主張は理由がない。大原氏はその点に気付いていないのか。
ロシアによるウクライナ侵攻は明確な国際法違反であることを、大原氏は分かっていないのか。
【国連憲章】2条
4、すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
これに対して、ウクライナの防衛は合法である。
【国連憲章】51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。
ロシアが国連憲章2条4項に違反し、ウクライナが同51条で個別的自衛権を発動しているのは明らか。ロシアの違法な行為に、ウクライナは合法な行為で対抗しているのである。その法的評価を考えれば、ロシアを一方的な悪者であるとする報道になるのは当然である。
■ロシア擁護の無責任さ
ウクライナのNATO加盟はロシアの安全保障には大きな脅威となるかもしれない。だからといってウクライナに侵攻していい理由にはならない。ウクライナの国防はウクライナが決めるもので、隣国が他国の安全保障政策のあり方を決定することなど許されない。もし、それを認めるなら「日米安全保障条約は我が国にとって脅威なので認められない」と中国が日本に侵攻することにも一分の理があることになってしまう。
そもそもロシアは今回の件でいざとなれば核兵器を使うぞと脅せば、西側諸国は攻めてこないことは分かったはず。ウクライナを中立化させなくても自国は防衛できる。しかし、ウクライナは1994年のブダペスト覚書で核兵器を手放した結果、ロシアからの侵攻を許すことになった。そう考えると、ロシアが停戦の条件としていると言われる非武装、中立化など飲めるはずがない。
大原氏も少しはそのあたりの事情を考えればどうかと思う。ロシア擁護の声は大原氏以外にも散見するが、無責任な言動で世論をミスリードすることは物を書くことを生業とする人間のすることではないことは肝に銘ずるべきである。
浅野内匠頭の子孫として言わせて貰うならば、これは全く関係のない話であること。
そしてロシアにはロシアの言い分は有るにせよ。
今回のウクライナ侵攻は全くの侵略行為であり。
浅野家は太平の世で他国を侵略した事はございません。
浅野家家臣”47義士”は吉良邸に討ち入りしています
これはロシアによるウクライナ侵攻に重ねることも出来るかと
>これはロシアによるウクライナ侵攻に重ねることも出来るかと
はい?
ではロシアがウクライナ領内に何らかの仇討のために討ち入ったとして、その原因となった「松の廊下刃傷事件」に相当する出来事は何かな?
見当違いもいいところでは?
>浅野内匠頭長矩
>江戸城内の松之大廊下で、小刀で吉良上野介義央の額と背中に切り付けた
この“事件”を聞いた大名達の当時の感想は概ね『斬らずに刺せばよかったのに』
きっちりトドメを刺しておくべきでしたね。
自らの切腹は免れられないなら吉良を確実に殺しておくべきだったのでしょう。
そういう意味合いでもロシアを浅野内匠頭に、ウクライナを吉良上野介に、という例えには当て嵌まらない。
むしろ逆で、先に実力行使に及んだプーチンの立場上、最終的にはプーチンには人道上の罪が降りかかる以上はウクライナを最低でも空白地にする必要がある、ということでしょう。
無論そんなことはさせませんが。
ロシアによる侵攻を松の廊下刃傷沙汰事件に当て嵌めること自体無理筋。
毎度のことながらあちら界隈の活動家紛いの連中は総じて例え話が下手糞なんですよね。
そんなにNATO諸国が拡大するのが怖いならロシアもNATOに入ればいいだけの話。
プーチン自身もNATOに入りたかったらしいが、NATOから入ってくれと誘われないのが不満、というつまらないプライドのせいで加盟しないままになっているらしい。
NATOからは「いかなる国家であろうとNATO側から勧誘は一切しないので、加盟を希望するなら自ら申告して欲しい」と伝えられていたにも関わらず。
それを逆恨みしてかその後のNATO拡大に本当に危惧の念を抱いたのかわからないが、自分勝手に侵攻を始めた結果が現在の体たらく。往くも地獄、退くも地獄の自縄自縛に陥っている。
NATOがいかに怖かろうが、先に手を出さない限り自国の国土や国家を危ぶむ必要性はなかろうに。
プーチンもヒュンダイビジネスも「雉も鳴かずば撃たれまい」という格言を知らないのだろうか。