佐々木恭子アナに謝罪を 「悪人」呼ばわり週刊文春

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 週刊文春によるフジテレビに関する一連の記事で、同局アナウンサーの佐々木恭子氏(52)の傷つけられた名誉は未だ回復されていない。元タレント・中居正広氏の女性とのトラブルやフジテレビの対応を批判的に報じる週刊文春の記事では事件を握りつぶした「悪人」の1人として名指しで批判されたが、その後、同誌は中居氏のトラブルにフジテレビの関与はなかったと記事を訂正した。佐々木氏を「悪人」呼ばわりする根拠も消失したはずだが、文春サイドが謝罪した事実は確認できない。

◾️誌面と電子版で異なる見出しの姑息さ

佐々木恭子氏(フジテレビHPから)と週刊文春

 週刊文春は、フジテレビに関する問題で独自に取材した内容を報じ続けたが、フジテレビの2度目の記者会見の前日である1月27日までに電子版の有料記事末尾に一部の修正を発表した。

 その内容は、「事件当日の会食について『X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた』としていましたが、その後の取材により『X子さんは中居に誘われた』『A氏がセッティングしている会の”延長”と認識していた』ということがわかりました。お詫びして訂正いたします。」というものであった(週刊文春電子版・中居正広9000万円SEXスキャンダルの全貌 X子さんは取材に「今でも許せない」と…)。

 中居氏から同意のない性的行為を求められたというX子さんは、当初は会社の編成幹部であるA氏に誘われたとしていたものが、その後の取材で中居氏に誘われたということが明らかになったというもの。ここは問題の重要な部分であり、当初の文春の報道は間違っていたのである。中居氏やフジテレビが『記事中にある食事会に関しても、当該社員は会の設定を含め一切関与しておりません』と主張したことが、結果的に正しかったと判明した。

 2024年12月26日発売号(1月2・9日新年特大号)より後、すなわち1月8日発売号(1月16日号)以降は、訂正された事実で書かれている。そこで問題となるのは1月8日発売号(1月16日号)での記事である。週刊文春電子版を見ると「中居正広『9000万円女性トラブル』X子さんの訴えを握り潰した『フジテレビ幹部』」となっているが、誌面では異なる見出しになっている。「中居正広『9000万円女性トラブル』X子さんの訴えを握り潰した『フジの3悪人』」である。

 その「3悪人」とは、記事からするとアナウンス室長B氏、編成制作局長C氏、そして、アナウンス室部長の佐々木恭子氏である(肩書は全て当時)。

◾️個人のトラブルと会社の関与

 後からなされた訂正によると、1月8日発売号からX子さんは中居氏に誘われ、問題の2023年6月の中居氏宅での会食にフジテレビ(特に編成幹部のA氏)の関与はなく、ただ、X子さんが「A氏がセッティングしている会の”延長”と認識していた」という前提で記事は書かれたことになっている。これは抽象的に表現すると、X子さんが会食への参加は業務の延長という錯誤に陥っていたということである。

写真はイメージ

 会社は関係ないのに、業務であると錯誤に陥っていたX子さんが中居氏の家へ行き、「意に沿わない性的行為を受けてしまった」(前述の中居正広『9000万円女性トラブル』X子さんの訴えを握り潰した『フジの3悪人』から、以下、特別な指定がない限り同記事からの引用)後で、X子さんはアナウンス室のB室長と佐々木恭子部長に出来事を仔細に報告した。

 上記の経緯からX子さんと中居氏の個人的なトラブルであることは明白。そうなるとアナウンス室幹部としては、社とは関係のないシチュエーションで個人間で発生したトラブルに会社として関与することはできない。

 X子さんは「すぐに佐々木さんには事件のことを相談しました。それを聞いた彼女は『大変だったね。しばらく休もうね』と言うだけ…。守ってもらったという感じではありませんでした」と取材に答えているが、自らが業務であるとの錯誤に陥っていただけで、実際は業務とは無縁の個人間のトラブルであるから、会社が社員のプライベートな部分に入り込み、相手に抗議するなり事情を聞くなりなど考えられない。

 会社からすれば個人間のトラブルであり、しかも相手の自宅に行かないことを選択できたにもかかわらず訪問、そこで性的行為を受けたという状況である。純粋に社員の個人的な男女間トラブルに『ウチの社員に手を出すな』などと会社が介入することはあり得ない。上司はX子さんの保護者ではない。

 そのようなごく当たり前の事実を無視して、前述のように「守ってもらったという感じでありませんでした」、あるいは「勇気を持ってトラブルを報告したのに、何一つ味方になってくれないことに彼女は大きなショックを受けたのです。」(X子さんの知人)というコメントを頼りに、「中居正広『9000万円女性トラブル』X子さんの訴えを握り潰した『フジの3悪人』」などと幹部を一括りにして悪人呼ばわりはどう見ても、幹部3人に対する名誉を著しく傷つけるものであろう。特に佐々木恭子氏は実名を出されており、容易に本人の特定が可能であるから事態は深刻である。

◾️なぜ佐々木恭子氏が悪人なのか

 仮に中居氏の自宅での会食にフジテレビの関与があれば「3悪人」とされた人々の対応は異なったはず。関与があれば業務の一環であり、会社には当然、安全配慮義務があり、X子さんが被った被害を回復するための努力が求められる。今回は関与がない、業務ではないから動くに動けなかったということは会社勤めをしている人間なら容易に理解できる。

 1月8日発売号からX子さんは中居氏に誘われたもの、フジテレビの関与はないということを前提としたのに、なぜ、「X子さんの訴えを握り潰した『フジの3悪人』」などというタイトルになるのか。握り潰したのではなく、介入したくてもできないことぐらい週刊文春の記者も理解できるであろう。

 上司としてどこまで介入できるか、プライベートな領域に踏み込めるか。それらの要素を考慮し、与えられた権限内で可能な対応をしたと思われる佐々木恭子氏が、なぜ『悪人』と呼ばれなければならないのか。

「3悪人」の文字が並ぶ週刊文春1月8日発売号(1月16日号)

 文春サイドは、記事を訂正したというのに訂正前の事実を前提として書かれた記事で個人の名誉を傷つけているのであるから、訂正と同時に佐々木氏ら幹部3人に対する名誉回復に努めるのが筋。ところが記事を訂正して簡単なお詫びをしただけで、「3悪人」と罵倒した相手には無視を決め込む。これが許されていいはずがない。

 佐々木氏はウイキペディアによると二児の母であるという。生まれた年からしてまだ大学生にもなっていない多感な時期のお子さんのようである。母親が日本で最も発行部数の多い男性向け一般週刊誌(日本雑誌協会・印刷証明付部数)で悪人と書かれたら、その子たちはどう感じるか。その程度の想像力を働かせてから記事を書いたらいかがと思う。そして、ネットでは「フジテレビ幹部」と表記しながら誌面では「フジの3悪人」と書き分ける、その意図的な使い分けには違和感を覚える。。

◾️週刊文春の責務

 事件の核心である中居氏とX子さんとのトラブルは守秘義務が設定されたため、詳細な事情は不明。

 しかし、問題の会食に社の関与がなかったことは関係者全てが認めた動かし難い事実である。そうであれば、佐々木恭子氏ら「3悪人」と一括りにして批判した幹部の名誉回復は、週刊文春の責務である。記事を訂正し謝罪した以上、彼らに対する名誉回復にも同様の誠意を示すべきと考える。

    "佐々木恭子アナに謝罪を 「悪人」呼ばわり週刊文春"に2件のコメントがあります

    1. 匿名 より:

      週刊文春の出版責任について読者に問うならば、いっそのこと文藝春秋と週刊文春への批評をシリーズ化して問題提起してほしいですね。文藝春秋から出版できるかもしれませんし

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        >>文藝春秋から出版できるかもしれませんし

        いや、できませんて(笑

        3月末に報告書が出るようですから、また、その頃でしょうか。そこで文春報道も再び検証されるかもしれませんし。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です