高市氏惜敗も”次”は間近? 刷新できない自民党

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 自民党総裁選(27日投開票)は決選投票の結果、石破茂氏の勝利に終わった。高市早苗氏は21票差で敗れ、つかみかけていた総理総裁の座がスルリと手から滑り落ちる結果に。靖国神社参拝問題に代表される近隣国との不正常な関係を一新する期待があったが、自民党の判断は現状維持にあったと言える。

◾️岸田総理が流れ作った?

高市早苗氏(公式インスタグラムから)

 総裁選は第1回の投票で高市氏が181票(議員票72党員・党友票109)で1位、石破茂氏が154票(46、108)で2位となって両者が決選投票へと進んだ。当初断然ムードから終盤にかけて失速がささやかれた小泉進次郎氏は136票(75、61)で3位に終わった。

 決選投票は石破氏が215票(議員票189、都道府県連票26)を獲得、高市氏の194票(173、21)を21票差で下して5度目の挑戦で念願の総裁の座を射止めた。投票日前日の26日に麻生太郎氏が高市氏に1回目の投票から支援する姿勢を明らかにしたことで流れは高市総裁誕生と思われたが、そこが政治の世界の難しさか、1回目議員票46票から一気に143票を積み増した石破氏が逆転で勝利を収める結果となった。

 高市氏は群れない一匹狼的な政治家であり、石破氏は世間の評価は「仲間を背中から撃つ」というもので、どちらも議員票は集まりにくいタイプであるのは間違いない。実際に1回目の投票で最も議員票を集めたのは小泉進次郎氏の75票であった。告示後の失速がなく、党員票があと19票集まっていれば石破氏を抜いて小泉氏が決選投票に進出、議員票が集まる同氏が高市氏を破って総裁の椅子に座っていたことであろう。

 各種報道を見ると岸田総理が「高市では総選挙に勝てない」「高市では公明党との関係が微妙になる」などの理由から石破氏支持に動き、逆転劇を演出したとされる。その真偽のほどは不明ではあるが、高市氏が9人の候補の中で最も主張が保守的であるのは間違いなく、そこへの警戒感を持った議員がいたのは想像するに難くない。

◾️靖国参拝は国民の心の問題

靖国神社(撮影・松田隆)

 高市氏は総理になっても靖国神社参拝を明言しており、この問題を外交問題にすべきではないという主張を行っていた。個人的にはごく当たり前のことを言っていると感じるが、実際、総理の靖国参拝は2013年12月26日の安倍晋三総理を最後に10年以上、行われていない。その理由は中国・韓国からの反発、そして米国から支持を得られないという点にあると思われる。

 特に米国は安倍総理の参拝後に「近隣諸国との緊張を高めたとして『失望』という異例の声明を発表」(NHKクローズアップ現代・日米関係はどこへ~ケネディ駐日大使に聞く~)しており、この問題に関してオバマ政権から続く民主党政権は比較的厳しい姿勢で臨んでいることと思われる。「失望」声明時の副大統領が、現バイデン大統領であるから、基本的にその立場は現在も続いていると思われる。

 その部分に高市氏が切り込む姿勢を見せていたわけで、日本人の心の問題に外国が踏み込むことを事実上許容している日本政府のあり方を根本から変えるものであった。自国のために命を捨てた人々の魂に総理が誠を尽くすのは国民の心の問題であり、そこに外国が干渉してくる事態は、それがたとえ同盟国であったとしても異常としか言いようがない。

 そうした歪な国際関係を一新することに意欲を見せた高市氏を、自民党の守旧派と呼ぶべき人々が総理総裁への道を塞いだことは残念の一言。石破氏は「靖国神社への参拝は、天皇陛下がご親拝できる環境が整わない限り、行わない」(産経新聞電子版・石破茂氏、靖国神社参拝「天皇陛下がご親拝できる環境か」まずは憲法9条への自衛隊明記)としており、これまでの岸田首相と同じく私費で玉串料を奉納してお茶を濁すのであろう(参照・天皇陛下の8・15靖国神社親拝を求めたい)。

 こうした総理の姿勢が日本の若者に「日本は悪いことをした国だ」「周辺国に謝り続けなければならない」という自虐的な意識を刷り込み、国益を大きく害するのは間違いなく、政治家ならその点に思いを致してほしい。過去の悪弊を刷新しようとしたのは誰なのか、自民党の国会議員はもう一度考えていただきたい。

◾️石破政権で国政選挙連勝は可能か

 高市氏は、石破新総裁から党総務会長の就任を固辞し、閣僚を打診されても受ける予定はないと報じられている(TBS NEWS DIG・【独自】自民・高市経済安保担当大臣が総務会長の打診を固辞「閣僚を打診されても受ける予定はない」 石破総裁が打診)。

高市氏・公式HPから

 財政政策についても積極財政の高市氏に対して、石破氏は財政規律を重視と正反対であるから、高市氏が石破内閣の政権運営に手を貸さないのはある意味当然ではある。党員・党友票で1位であった高市氏に実質的な党の最高ポジションである幹事長を打診するなら分かるが、党の意思決定機関である総務会の議長役である総務会長が相応しいとは思えない。高市氏にすれば無役のフリーハンドで次の総理の座を狙う方が、国民のためになるという考えに至ったのであろう。

 石破氏が総裁に選出された際の麻生太郎氏の様子を見ると、総選挙で自民党が負ければ、石破氏の政権運営は極めて不安定になるのは明らか。そこを切り抜け、来夏の参院選でも一定の結果を残せば総裁としての任期を全うできるかもしれないが、石破政権で国政選挙2連勝が果たして可能なのか。一部報道では10月15日公示、同27日投開票とされており、10月には石破政権は死に体になっている可能性はある(朝日新聞DIGITAL・衆院選「10月15日公示・27日投開票」 石破氏、方針固める)。

 個人的な見解であるが、政治センスも政治家としての確固たる信念にも欠ける岸田総理が「高市より石破がベター」という判断をした時点で、石破政権は国民の支持は得られないように思う。

 高市氏の次の出番は案外、早いかもしれない。

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