調布市議会は刑事告訴視野 共産市議不正アクセス

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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調布市の共産党市議が元市議の男性にIDとパスワードを伝えていた問題で、調布市議会は刑事告訴も視野に入れて検討していることがわかった。18日、同市議会の正副議長が取材に対して明らかにした。事態を重く受け止めており、事件をうやむやに終わらせないことを明言した。
◾️「あってはならないこと」
日本共産党の田村ゆう子市議(39)が議員専用のクラウドに閲覧権限のない元市議の男性(73)がログインできるようにIDとパスワードを伝えていた事件について、内藤美貴子副議長は「あってはならないこと。まさかの事態です」と、議会として重大な問題としてとらえていることを明かした。
井上耕志(こうし)議長は現時点での議会としての対応について、現在、法律の専門家に発生した事象を説明し、法的な評価の確認作業をしているところであるとし、その結果によっては刑事責任の追及もあり得ることを明かした。
「法律的な構成がどうなるのか、我々も法律の専門家ではないのでわからないので、(専門家に)見解を確認していただくのと同時に、刑事告発というのがあるのかないのか。それも法律的な裏付けがないと。いきなり警察に持っていって告発だという話にもならないので、そこを今、同時に検討している状態です。ことがことですから、できる限り早い形で何らかの解釈をいただければありがたいと伝えています」(井上議長)
また、正副議長はここまでの経緯をあらためて説明した。それによると、発端は報道されているように12日午前の本会議中でのこと。田村市議のアカウントから全議員が通知を受け取った。同日午後に同市議と、共産党市議団の岸本直子幹事長が正副議長と議運の正副委員長に対して、IDとパスワードを元市議の男性に渡していたことを伝えた。
事態を重く見た井上議長は翌13日に各会派の幹事長に声をかけて幹事長会議を開催し、重大な影響を及ぼしかねない事案が発生したため、全議員に(IDとパスワードの厳重な管理を)周知をしていただきたいとの注意喚起を行った。14日に正副議長が読売新聞の取材を受け、15日に同紙が報道して公になったという流れである。
当サイトでは17日に田村市議と岸本幹事長を取材。そこで共産党調布市議団が組織ぐるみで不正アクセスを行なっていたことを明らかにした(参照・共産党市議団 組織ぐるみで不正アクセス(前)(後))。
◾️考えられる法的構成
議会事務局によると、議員と一部の職員だけがアクセスできるクラウドには個人情報や入札に関する情報など、重要な秘匿すべき事項は含まれていないという。とはいえ、アクセス権限のない者にIDとパスワードを伝えてアクセスさせていたことは、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)に違反する可能性がある。
元市議の男性がアクセスしたことは同法2条4項1号の定める不正アクセスに該当すると思われ、不正アクセスは同法3条で禁じられている。また、IDとパスワードを伝えた行為は5条の不正アクセスを助長する行為とされる可能性がある(参照・共産・田村ゆう子市議が不正アクセス助長 調布市)。
岸本幹事長は、元市議の男性が不正にアクセスして閲覧が許されないクラウド内の行政文書を閲覧していること、田村市議がIDとパスワードを伝えたことの双方を認識した上で、それを黙認していたこと、それによって議員団の議案に対する問題、市政に関する問題を共有する行為に関与していたと考えられ、事後的な共犯が成立する可能性がある。また、仮に幹事長の立場と権限を利用し、田村市議の意思を抑圧してIDとパスワードを伝えるよう命じていた場合、間接正犯とされても不思議ではない。
様々な法的構成が考えられるが、少なくとも田村市議がIDとパスワードを伝え、元市議の男性が不正アクセスをしたという、違法性があると認められる事象は明らかになっており、その点で刑事責任が認められるかを議会としては専門家に法的評価を求めて、今後の対応を決定する考えである。
◾️疑念が生まれるような行為
今回の問題は、地方自治制度についての危機という考え方もできる。議員ではない民間人が不正にデータにアクセスし、議案への態度を決める時などのための助言を田村市議に与えていたというのである。
両者の関係が、助言に対して田村市議が異を唱えることができないようなものであったとすれば、民意を代表していない民間人が、選挙によって民意を得た議員の意思を抑圧して議員活動をさせ、そのことが市政に影響を与えかねない。その意味で健全な民主主義を阻害する行為とも言い得る。
その点について井上議長は「議員が政策決定、意思決定をする際には、先輩や市民、あるいは家族の意見が影響を与えることもあるかとは思います。しかし、議員以外がアクセスするという想定のないクラウド内の行政情報に(不正な手段で)アクセスした第三者から言われたことを意思決定に反映させるのであれば、(市民からの)疑念を生むと思います。疑念が生まれるような行為をやってしまったことが問題です。我々は議会の中できちんと有権者が納得できるよう『こういうことで、こういう流れだったんだ』ということの説明をいただかなければなりませんし、疑念を抱かれないような利用の仕方を示していかないと信頼回復には遠いと感じます」と話す。
地方自治の根幹を揺るがす、民主主義の破壊というのは飛躍した考えとしても、今回の事例においては田村市議の行為が包含する危険性は同議長の話からも明らかであろう。
◾️議会としての厳しい姿勢
今回の件で市議会はどこまで真相に迫れるか、事案の解決に本気で取り組むのか、議会からの明確なメッセージが示されず、不安に感じている調布市民は少なくないはず。「うやむやにされて終わってしまうのではと懸念する市民もいると思う。議会としての姿勢を明らかにしてほしい」と聞いた。
それに対して井上議長は「うやむやにするなどとは、考えてもいません。法律的な解釈を専門家に確認をしていただいているところです。それと同時に警察の方に相談をする態勢についても、今、どうしようかということについては検討しています」と、刑事告訴に向けての検討を続けていることを明らかにした。
また、内藤副議長は「絶対にあってはならないことです。私たちはうやむやにするつもりはありません。」とした上で、「議員控室で普通に(元市議の男性がアクセスしてはいけないクラウド上の行政情報を)見ることができていた、それが当たり前のような環境にあったこと、それを自分の自宅で、見るだけでも良くないのに操作したという事実があること、そういったことを踏まえて今、専門家にうかがっています。議長とも話していますが、仮に今回、法的には難しいとなったとしても、議会としてこの不正を『あ、そうですか』というわけにはいかないということも含めて考えています」と厳しい姿勢で臨むことを明らかにした。