共産市議不正アクセスで捜査進展か 警視庁が回答

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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不正アクセス事件により調布市議会から3月に問責決議を受けた共産党の田村ゆう子市議(39=共産)はその後も政治活動を継続、22日投開票の都議会議員選挙でも候補者の応援に回った。一方で不正アクセス事件の捜査は進展している模様。警視庁は個別の事案には答えられないとしつつ、捜査への支障の恐れを理由に詳細は控える旨を回答した。
◾️問責決議後も街頭で支援呼びかけ
都議会議員選挙期間中の13日夕、田村市議は調布駅前で行われた田中とも子候補(北多摩3区)の街頭演説会で、司会役として田中候補、小池晃書記局長とともに選挙カーの上から投票を呼びかけた。
仕事帰りの人が多く行き交う調布駅前での演説会、多くの人は司会役の女性が「市民と行政当局からの市議会に対する信頼を失墜させ、市議会の品位を損なう結果となった。再発防止のためにも、当該行為の当事者たる田村ゆう子議員及び所属する会派の幹事長である岸本直子議員の両名に対し、その責任を強く問うものである。」(問責決議の提案理由から)との理由で問責決議を受けたことをどこまで認識していたのかは不明である。
決議の後、田村市議は岸本市議と連名で「本日市議会本会議で、私たち党市議2名への問責決議が可決されました。このことを真摯に受け止め、市民の皆様、関係者の皆様に深くお詫びを申し上げます。再発防止のため、定められたルールにもとづき厳格に対応して参ります。」とのコメントを発表している(参照・共産党市議2名の問責決議可決 幹事長にも責任)。
問責決議は3月27日に可決されても議員辞職はせずに街頭での政治活動を続け、市民に対する明確なお詫びもないまま、同党候補への投票を呼びかける姿勢はモラル上、大きな問題を孕んでいるように思える。
不正アクセス事件は、田村市議は議員用のクラウドに閲覧権限のない元市議の男性(73)にIDとパスワードを伝え、男性が不正に操作をしたことで明るみになった。調布市議団の岸本直子市議(幹事長)は、その事実を把握し、違法なことと知りつつ黙認していたというもの。
元市議の男性は6月13日の街頭演説会では姿を見せず、関係者に聞くと、現在、体調を崩して外に出られない状態であるという。また、岸本市議はこの日は姿が見えなかった。
◾️告発なしで捜査の可能性
共産党調布市議団と元市議による不正アクセスは不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)に抵触するおそれがある。元市議の男性によるアクセスは同法2条4項1号の定める不正アクセスに該当すると思われ、不正アクセスは同法3条で禁じられている。
また、IDとパスワードを伝えた田村市議の行為は5条の不正アクセスを助長する行為とされる可能性があり、岸本市議はそれを黙認していたことから共犯の疑いが強い(参照・共産・田村ゆう子市議が不正アクセス助長 調布市)。
調布市議会では不正アクセスが明らかになった(3月12日)後、同21日に井上耕志(こうし)議長(当時)が調布警察署を訪れて事件を相談し、同日の幹事長会議で現状報告をしている。同31日には議会運営委員会で公明党の平野充市議が会派の見解として不正アクセス事件で早期に捜査機関へ告発すべきとの考えを示した(参照・「速やかに告発を」共産市議不正アクセスで公明党)。
しかし、その後、議会から告発はされていない。捜査は表向き進んでいないように見えたが、ここに来て調布署が捜査に入っているという話も出ている。同署に捜査状況を聞くと「その件は警視庁本庁に聞いてください」とのことであった。
そもそも不正アクセス禁止法は親告罪ではない。市議会から告発(告訴)があっても、それは捜査の端緒にすぎず、訴訟条件ではない。
そのため、当時の井上議長が相談した時点で調布署が独自に捜査に入る可能性はある。
◾️警視庁からの回答
そこで当サイトでは他の媒体と協力し、6項目の質問を警視庁に連名で提出した。うち4つの質問は、不正アクセス事件の捜査状況に関するもので、これについては「個別の事案につき、回答は差し控えさせていただきます。」とのことであった。それ以外の回答は以下のとおり。
問3:一般論として、本件事案(筆者註・共産党市議による不正アクセス事件)と同様の相談を受けた場合、貴庁として通常どのような対応を取られるのか、ご教示ください。
回答3:個々の事案に即して対応することとなるため、一概に申し上げることは困難ですが、いずれにせよ、法と証拠に基づき、適切に対応いたします。
問5:貴庁管轄下の地方議会において、不正アクセス行為の禁止等に関する法律に違反し摘発した事例は過去にありますでしょうか
回答5:捜査に支障が及ぶ恐れがあるので、捜査の実施の有無を含めて、回答は差し控えさせていただきます。
ほぼ、ノーコメントと言っていい回答ではあるが、回答5の「捜査に支障が及ぶ恐れがあるので、」という部分が気に掛かる。後段の「捜査の実施の有無を含めて、回答は差し控えさせていただきます。」の部分は、過去の地方議会での不正アクセス禁止法違反事案の有無、それについて捜査をしたかどうかを含めて答えないというものであるから、「捜査」は過去の地方議会に関する捜査を指しているのは明らか。
そうなると前段の「捜査に支障が及ぶ恐れがあるので」の「捜査」は、本件の不正アクセス事件に対する捜査を指していると解釈するしかない。これは事実上、警視庁が本件の不正アクセス事件の捜査に入っていることを認めるに等しい。
問責決議を受け、さらに当時の議長から相談を受けて細かい状況を把握していることを思えば、当局が独自に捜査に入った可能性はある。
◾️田村ゆう子市議は聴取済みか
調布市議会事務局に捜査当局から不正アクセス事件について事情聴取などがあったかを聞いたが、「お答えできない」との回答であった。
そこで、5月29日に田村ゆう子市議に直接、電話で取材を行った。
ーー問責決議の後ですね、警察の方から田村先生と岸本先生に対してですね、何らかのお話を聞きにきたのではないかと思うのですが
田村:ちょっとその辺はまだ、議会内でも話をしていないので、この場でちょっとお答えはできないです。
ーーまだ、議会にはお話してないのですか
田村:そうです。
ーーそれでお話ができない?
田村:はい。
ーーそういうことなんですね
田村:はい。
事情聴取を受けたかどうか、議会に対して話をしていないから答えられないということであり、事情聴取された事実を否定することはなかった。その後、田村市議は冒頭の街頭演説会に参加するなど、都議選の応援に奔走している。
捜査当局としても逮捕状の請求などのタイミングも、政治案件である以上、一般の事件とは異なる扱いになるのが通常である。都議選の後は、参議院選挙が7月3日に公示され、同20日の投開票となる見込み。強制捜査に着手するのは通常選挙の日程も考慮される可能性がある。
当サイトのここまでの取材では、不正アクセス事件の捜査は水面下で進んでおり、強制捜査に着手するのは7月下旬以降の可能性が高いと考える。