共産党市議2名の問責決議可決 幹事長にも責任

松田 隆
@東京 Tokyo
調布市議会(井上耕志議長)が27日、不正アクセス事件に関して共産党市議2名に対する問責決議を賛成多数で可決した。閲覧権限のない者にIDとパスワードを伝えた田村ゆう子市議だけでなく、岸本直子幹事長の責任も問うもので、組織ぐるみの行為であると議会が認定したに等しい。閉会後、決議を受けた両市議は連名でお詫びのコメントを発表したが、責任の取り方については明言を避けた。
責任を強く問う
田村市議が議員用のクラウドに閲覧権限のない元市議の男性(73)にIDとパスワードを伝え、男性が不正に操作をした事案について、関係者はこの日、慌ただしい動きを見せた。井上議長と内藤美貴子副議長が午前8時40分の議員運営委員会に出席、25日に問責決議が提出されたのを受け、事態の重大性に鑑みて議案に追加することを求め、了承された。
問責決議は定員28名の同市議会において、正副議長と共産党市議2名の計4名と調布・生活者ネットワークの1名を除く23名によって提出された。議案の説明に入ると田村・岸本の両市議は議場から退出し、両名が不在の中、決議案を提出した丸田絵美市議が提案理由の説明を行った。
「…各議員に貸与されている当該会議システムのID・パスワードについては他に漏らすことのないよう厳重な管理を求められているにもかかわらず遵守されていなかった。その結果、市議会に対する信頼を損なうことにつながったことは極めて遺憾である。また、それを黙認してきた幹事長にも同様の責任がある。本事案は、市民と行政当局からの市議会に対する信頼を失墜させ、市議会の品位を損なう結果となった。再発防止のためにも、当該行為の当事者たる田村ゆう子議員及び所属する会派の幹事長である岸本直子議員の両名に対し、その責任を強く問うものである。」
厳しく表現の目立つ決議案は、提出者とならなかった調布・生活者ネットワークの1名が起立しなかっただけで賛成多数で可決された。
「結果的に黙認」は言い逃れか
今回の不正アクセス事件は15日の讀賣新聞オンラインの報道で明らかにされ、田村市議はその日のうちにXの自らのアカウントでお詫びを発表。田村市議が単独で責任を負うかのようであったが、その後、当サイトの調べなどから岸本幹事長が事情を把握し、違法なことと知りつつ黙認していたことが明らかになった(参照・共産党市議団 組織ぐるみで不正アクセス(前))。
市議会もそうした点を重視したのか、田村市議だけでなく岸本幹事長にも「同様の責任がある。」とし、「その責任を強く問う」とした。
両市議は閉会後に連名でコメントを発表した。
「本日市議会本会議で、私たち党市議2名への問責決議が可決されました。このことを真摯に受け止め、市民の皆様、関係者の皆様に深くお詫びを申し上げます。再発防止のため、定められたルールにもとづき厳格に対応して参ります。」
報道陣の取材に答えた岸本幹事長は「そういう事象(IDとパスワードを伝えていたこと)があったということに気が付かなかったことは、結局意識の甘さというところだったということだと思いますので本当に反省しています。そういうところに気がついてこなかった、結果的に黙認していたという形になってしまいました」と話した。
「結果的に黙認」という表現から、自分は気が付かなかったために黙認していた形になったという意味合いで受け取れる。そこで「知らなかったということですか?」という質問すると「知らなかったというのではなく、そこの場にいて見ていたという事案について注意をしなかった、あるいはきっちり言わなかったということは私の意識が甘かったと言いたかったんです」と幹事長は話した。
その後、報道陣とやりとりがあったが、元市議の男性が田村市議のIDとパスワードを用いて不正にログインして閲覧しているのを認識し、それを容認していたことを認めようとしない。不正にログインしている事実がありながら、それに気付かなかったから自分の意識が甘かった、つまり、元市議の男性が不正ログインして閲覧している状況に気付いていなかったと言いたいのであろう。
その真意はわからないが、不正アクセス禁止法違反に問われた時に、自らは不正アクセスを知りながら黙認していたのであれば共同正犯とされかねない。その事実が目の前で行われていたが、気付かなかったので黙認しているような外観はあるが(結果的に黙認)、不正アクセスの故意はないから無罪となるべきという主張をするために明言を避けているようにも思える。当サイトが17日に行った取材でも、同様の説明がなされた(参照・共産党市議団 組織ぐるみで不正アクセス(前))。
また、15日の讀賣新聞オンラインの報道の後、田村市議のお詫びだけで岸本幹事長は今日に至るまで何も発信していない点について聞くと「この間、党とも相談してきましたけども、きっちり自分のやってきたことを振り返ることと、事案も自分の中で整理できないと簡単には発信できないという気持ちが強かったです」と答えた。
岸本幹事長を含む問責決議の可決後に考えを変えたのかは不明だが、12日の発覚以来、2週間以上沈黙を続けた対応には疑問が残る。
空虚な反省の言葉
問責決議を受けての責任を取り方について田村市議は「それは現時点ではお答えできません。これからあらためて考えてみたいと思います。(議員辞職についても)今はお答えできません」と事実上、回答を拒否。
岸本幹事長は「こういう事情(問責決議の可決)を受けて、私たちは弁護士とも相談していますし、党の地区委員会とも相談して、どういうふうに私たちはしていこうかってことを、今日の今日(なので)、これを受けてまた、相談をするという状況です」と、こちらも今後の対応については明言を避けた。
市議会は刑事告訴も視野に入れており、岸本幹事長はその点を意識しながら話しているように感じられる。田村市議も話を聞くたびに内容が変わっている。両議員の「深くお詫び」「本当に反省」という言葉が空虚に響くと感じる人は少なくないと思われる。