僕が体験した日本語学校のブラックな現実(その1)

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 ジャーナリストのかたわら、専門学校で講師をやらせていただいているが、それ以外にも日本語学校で日本語講師もやっていた。「やっていた」と過去形なのは、既に契約を解除したからである。今日は僕が経験した日本語学校の実態を書こうと思う。

 まず、最初に申し上げておくが、今、僕が非常勤講師として雇っていただいている専門学校は待遇が良く、非常に居心地のいい職場である。その一方で、日本語学校はまさにブラックと呼ぶべき学校が多い。

”ブラック”日本語学校は少なくない

 文科省などが2008年に策定した2020年までに留学生30万人計画が実施されたこともあり、日本語学校は雨後の筍のように出て、今ではその数は400を超えると言われる。政府も完全にコントロールできていないのが現実で、授業がいい加減であったり、教師が十分な能力を有していなかったり、ひどい場合には不法就労の隠れ蓑になっていると言われる学校もある。

 当然と言うべきか、講師に対しても、その処遇はいい加減。通常、日本語学校の非常勤講師は、学校側と業務委託契約を結ぶ。僕は今年3月に中野区にある、業界では老舗の学校から採用の通知をいただき、新学期に向けて研修や、その後の歓迎会にも参加させていただいた。直接の採用担当であった教務主任の先生は非常に熱心な女性で、授業や通常業務についての説明も入念にしてくれた。しかし、なぜか給料等の話になると曖昧に言葉を濁したり、僕が「明日、その話をしましょう」とメールを出したら、会った時に僕を避けることが多く(何だろうな?)と不思議に思っていた。

 そして歓迎会の2次会で、同僚になる予定の先生方から衝撃的な事実を聞かされた。

 「ウチは契約書は交わしませんよ。給料は最初にもらった時に明細を見て初めて時給が分かるんです。みんなそうです」。

 びっくりして、その夜、教務主任の先生に「すぐに契約書を交わしましょう。契約書を交わさないと、仕事はできませんよ」とメールを送った。すると「皆さんには、これまで契約書なしで働いてもらっていました。学校のオーナーにはせめて契約書を交わすようにとずっとお願いしていています。松田さんの件も早急にと言っていますが、返事がありません。契約書なしでは働けないという趣旨は分かりますので、採用を辞退していただいて結構です」という趣旨の返信があった。

 契約書がなければ給料も契約期間も問題が起きた時にどう解決するか、何も分からない。学校側が好きなようにできるから、たとえば授業に入ってから1か月後に「契約期間満了だ」と言って首を切ることも可能。

 契約書なしでよく働く人がいるなと思うし、また、そういう人がいるからこの種の学校が成り立っているというのは間違いない。日本語学校の先生というのは国際交流の最前線にいるわけで、さらに外国人に教えるという優越的立場に立てる上、社会貢献をしているという実感も得られるから、労働条件が劣悪でもやりたいという人が後を絶たないのであろう。そのため日本語学校の方では、非常勤講師という弱い立場に対して条件も明示せずに働かせるという極めて悪質なやり方がまかり通るのである。

 教務の主任の女性には恨みはないし、いい人だとは思うが、契約書なしで働かせるということを隠して採用に向けて面接や模擬授業をやらせていたのは事実。彼女の行為もまた極めて悪質と言うしかない。

 日本語学校のあくどさについては、先日、契約を解除したもう一つの学校についても語りたいが、これはまた、後日に。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です