報ステCM騒動 21世紀の内ゲバに失笑

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 報道ステーション(テレビ朝日系)が3月22日に公開した番組CMが差別的な内容であるとの批判が相次いだため24日、取り下げた。番組CMの作成側も、それを攻撃した側もどっちもどっちの内部相剋を見るようで、失笑を禁じ得ない。

■どっかの政治家が「ジェンダー平等」とかって…

報道ステーションのWebCM画面から

 報道ステーションのCMは15秒と30秒の2つのバージョンがあり、問題となったのは後者。若い女性が会社から自宅に戻り、モノローグの形でメッセージを発する。女性が話したまま記す。

「ただいま。なんかリモートに慣れちゃってたらさ、久々に会社行ったら、ちょっと変な感じしちゃった。会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もう、すっごいかわいくって。どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかって今、スローガン的に掲げてる時点で、え、何それ、時代遅れって感じ。化粧水買っちゃったの。もうすっごい、いいやつ。…にしてもちょっと消費税高くなったよね。でも国の借金って減ってないよね? あ、9時54分! ちょっとニュース見ていい?」

 これに対して、SNSなどで批判が殺到。例えば社民党の福島みずほ代表は「…女性の低賃金や子供を育てながら仕事を続けることの困難さ、子どもや女性に対する暴力、様々な生きづらさがある。それを変えようとしているときに、ジェンダー平等は時代遅れと言うCMを作る感覚が理解できない。」(3月24日公開のツイッター)とした。

 また、ジャーナリストの治部れんげ氏はHUFFPOSTの取材に答え、CMの問題点を3つ挙げた。

 1点目は「一番の問題は、ジェンダー平等が達成されているという間違った認識に立っていることです。番組CMとはいえ、報道機関のものなので、事実に基づかなければいけない。なぜ、『ジェンダー平等は達成されている』かのように描いたのかを問いたいです」ということ。さらに、差別の解消に取り組む人を笑うのは差別の上塗りであり、さらに「ジェンダー平等が達成されている」という間違った認識にたったセリフを女性に言わせていることが悪質だとした(参照:報ステのCMが「悪質」な理由。「ジェンダー平等を掲げるのは時代遅れ」と描き、批判が集まっている)。

■「ジェンダー平等が時代遅れ」とは言ってない

 福島みずほ代表の主張は正確ではない。CMの女性の言い分を良く聞いてみると「ジェンダー平等が時代遅れ」とは言っておらず、政治家がジェンダー平等をスローガンに掲げている点、即ちその政治手法を時代遅れと言っているのである。当然、ジェンダーによる差別を容認しているわけではなく、差別解消に向けての手法が時代遅れと言っているに過ぎない。

 差別を容認する内容であれば批判されるのは当然であろうが、差別解消を訴える政治家の手法を批判するのは当然に報道の範疇である。その意味で福島議員の主張は根拠がない。

 治部れんげ氏の批評も、的外れ。「ジェンダー平等が達成されているという間違った認識に立っていること」を前提としているが、前述のように「差別解消に向けての手法が時代遅れ」と言っているに過ぎず、差別が解消されていることを前提にしていない。前提が間違っているから、その後の主張も根拠を失っている。

 せめて、CMの中身をよく吟味してからツイートやコメントをすればと思うのだが、自分たちが批判されたと思ったら無条件に噛みつきに行くのが彼らの習性なのであろう。一言で言えば他者の批判はしても、自分への批判は許さない。一般的には彼らの”味方”と思われているテレビ朝日(報道ステーション)が相手でもその原則は揺るがないようである。

■70年代の新左翼運動の終末を見るかのような争い

 なお、テレビ朝日はCMの取り下げについて、Twitterで以下のような説明を掲載した。

 「今回のWebCMは、 幅広い世代の皆様に番組を身近に感じていただきたいという意図で制作しました。ジェンダーの問題については、世界的に見ても立ち遅れが指摘される中、議論を超えて実践していく時代にあるという考えをお伝えしようとしたものでしたが、その意図をきちんとお伝えすることができませんでした。(以下略)」

 議論をしているのではなく、既に実践へと進んでいるということで、スローガンとして掲げる政治家を時代遅れと表現したということであろう。それはそれで筋が通っており取り下げる必要はなく、謝る必要もない。福島みずほ氏らの指摘が適切ではないことを主張すればいいものを、クレームが入ると謝罪して取り下げでは、報道機関としての矜持はないのかと思う。

 また、伝え方が十分ではなかったという落ち度を自ら認めているが、森喜朗元首相の女性に関する発言の時に厳しく批判した局が、我が身に起きた場合は、謝罪して削除して終わりというのも釈然としないものを感じるのは僕だけではないだろう。

 テレビ朝日にすれば、3月29日(月)から「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系)が月~木は午後10時からスタートとなるため、民放のニュース枠の争いが激化するという危機感があったのかもしれない。そこでイデオロギー的な臭いを消して、一般の人をひきつけようという狙いだったのではないかと想像している。

 その結果が、ジェンダー差別解消を叫ぶ人たちとの”内ゲバ”のような様相になってしまった。1970年代の新左翼運動が分裂を繰り返し内ゲバに発展したが、まさにそれを見るかのようではないか。血が流れない分、まだましではあるが、半世紀の間、進歩のない人たちという点では相当情けない姿と言える。

    "報ステCM騒動 21世紀の内ゲバに失笑"に5件のコメントがあります

    1. 月の桂 より:

      おはようございます。
      今日は休みで、のんびりした朝です。

      〉自分たちが批判されたと思ったら無条件に噛みつきに行くのが彼らの習性なのであろう。一言で言えば他者の批判はしても、自分への批判は許さない。

      *****
      同感です。
      この価値観には、今回の記事の対象者だけではなく、社会全体が染まりつつあるように感じます。どこもかしこも、承認欲求の強い人ばかり…。様々な意見を聞くのは、自分の学びに繋がると思うのですが、マウント取りたい人ばかりです。
      私は男女共同参画部署にいたこともあり、ジェンダーバイアスには敏感な方ですが、フェミさん達の思考回路には、理解が及ばないことが多いです。
      常に喧嘩売ってますね。ヒステリックだし。
      売り物として出せない低レベルな喧嘩ばかりで、商品価値無しだと思いますが…(笑)

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        >>月の桂様

         コメントをありがとうございます。

        >>常に喧嘩売ってますね。ヒステリックだし。

         本当にそう感じます。それで彼らの許せないことは、例えば報道ステーションが「日本アゲをしている人たちは時代遅れと感じます」といったCMを作成した時には、まず、文句を言ってこないだろうということです。表現の自由は、自分たちを攻撃するものにだけ及ばないと考えているようで、彼らの多くは憲法を軽視する人たちだと思っています。

         僕が常々、福島みずほ議員は最も憲法を軽視する政治家と評しています。憲法が規定する自由は自分たちに都合のいい主張にだけ認められるとし、死刑を予定する現行憲法を無視して、死刑を廃止しろと主張していますから、論外と感じています。そうした姿勢が今回の件で明らかになったのではないでしょうか。

    2. MR.CB より:

      》》ジャーナリスト松田様

      松田さんがおっしゃる通り、まさに内ゲバですね(笑)。批判されすぐに取り下げるあたり、立憲などの先生達から「よわったね〜。そういう風(ジェンダー否定)にとられても仕方ないよ。まあ、一旦ここは【配慮が足りませんでした】の体で引いてちょうだいね」などのやりとりがあったのではないでしょうか(笑)。
      しかしながら、福島氏や蓮舫氏のように脈絡を切り取って、(意図的に)偏った解釈で批判する得意技には毎度のこと辟易します。朝日系の十八番でもありますが。まあ、テレ朝だったからこの程度で済みましたが、フジテレビだったら証人喚問ものだったでしょうね(笑)。
      いずれにせよ、レベルが知れる話題です。

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        >>MR.CB様

         コメントをありがとうございます。

         報道機関としてすぐに不適切だと認めて下げる、事前のチェックはどうなっていたんだ、批判されようが自分たちが信じた道は貫き通すのがメディアだろう、と言いたいことは山ほどあり、という感じです。

         全く情けない話だと思います。彼らは全く責任を取らないのも特徴ですね。森元首相には「謝ってすむ問題ではない」と言っていたメディアもありました。「いつやめるかは私たちが決める」と言った記者も。

         同じことをテレビ朝日に言ってほしいものです。

    3. 野崎 より:

      出来レース??

      最初から批判を想定してのことではと妄想が湧いてしまいます。
      批判を惹起させる、しかしてその目的は、
      森発言を契機として、女性は~だと公には言えなくなった、に同じく、
      ジェンダーに触れるのは出来なくなった、出来にくくなった、一応の目的は達成できた?

      妄想ではないのは左翼のネットワークの存在であり、その情報戦の巧みさです。
      よってやらせ、出来レースではとの思いが湧いてしまいます。批判が起こることは想定できたはず。

      今般の米国大統領選における混乱はベトナム戦争当時の反戦世代が社会の中枢、民主党に入り込み、次の世代へ洗脳工作を行った為だとする米国の識者の分析がありました。(名前を失念、調べればわかります。)
      日本も同じです。

      69年、極左に占拠された東大安田講堂が陥落した時、
      時代は若者向けラジオ深夜放送の全盛、極左学生のメッセージが高らかに読み上げられた。
      ●安田の城は落ちるとも、これより我らは社会の中枢に入り込み戦いを続ける、と、
      私はその継続されている闘い、潜伏活動の証左を持っています。(当時知る左翼学生達の現在に至るまでということ)

      よってこれは出来レースではとの妄想が湧いても来ます。

      内ゲバは必定でしょう、それは何故か、長文となり割愛します。

      奴ばらファシストの目的は規制秩序の破壊です。
      ●あらゆる犯罪は革命的である。
      70年代に書籍化され標榜された左翼のメッセージです。
      犯罪は社会秩序の破壊である、率先して法を犯せと、社会を破壊せよと、そ社会、既成秩序を破壊する、その発想は連綿として今に続いている。

      奴ばらの破壊を目的としての表面上のポリコネ、ダブスタ、フェイク、奴ばらはそれを自覚している、よっての矛盾は承知の上です。

      多様性を認めよ、異文化共生、移民の奨励。
      同性愛者は死刑とするイスラムとの衝突は必定。

      キリスト教は同性愛を否定する。
      左翼にほぼ支配された日本のキリスト教界は同性愛、同性婚にだんまり。
      靖国参拝に政教分離を主張するもクリスチャンスクールに対する私学助成にはだんまり。

      相模原知的障碍者施設における一異常者が犯した殺人を拡大し、社会に生産性の無いものは不要とする価値観があると糾弾する。 日本は差別社会であるとの空気を作り出し、差別という言葉の力を強化しレッテル張りの武器とせんとする。

      しかししかし、しかし、この偽クリスチャン共は人工妊娠中絶には沈黙である。
      中絶は相模原の事件よりはるか以前から存在する。
      中絶を容認する偽クリスチャン共もいる、生む産まないは女の自由とするフェミニスト達と連携する。

      米国のクリスチャン、特に福音派は中絶に大反対である。

      米国はキリスト教が基盤にあり何とかファシストの攻撃に何とか耐えうる。
      しかし宗教及び規範を有しないとされる日本はいかに、、
      よって文化的側面に対する攻撃に弱いと前にコメントしました。

      70年代、猖獗を極めた左翼の活動に対して、
      故三島由紀夫が文化防衛論を上梓したのは故亡きことではないと考えます。

      米国が共産化されなかったのは(現在鬩ぎ合い)ピューリタンにより建国された国、キリスト教が基盤に在って故と

      日本は天皇の存在故、共産化を免れたと、
      それも昭和天皇まで、、

      御返信は不要です。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です