「170cm人権なし」を語れぬ石原壮一郎氏

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 プロゲーマーのたぬかな氏が身長170cmない人は人権がないという趣旨の発言をして所属チームやスポンサーから契約を打ち切られた。許し難い差別発言であり、強い非難を浴びてしかるべきものでありながら、評論家・ジャーナリストなどの人々の腰の引けた対応が目につく。”大人力”を研究するコラムニストで、著書も多い石原壮一郎氏は批判する人々を蔑むような文章を公開している。

■プロゲーマーたぬかな氏の発言

YouTube「寄り道くん」チャンネル画面から

 これまでメディアで伝えられたところによると、たぬかな氏は本名が谷加奈(たに・かな)で、徳島県出身の29歳。eスポーツチームのCYCLOPS athlete gamingに所属し、エナジードリンクのRed Bull社とスポンサー契約も交わしていた。それらから得る収入で、年収は1000万円を超えていたという報道もある。

 そのたぬかな氏が2月15日、生配信で以下のような発言をした。

 「165はちっちゃいです。ダメですね。170はないと、正直、人権はないんで。170cmない方は、俺って人権ないんだぁって思いながら生きていってください。骨(こつ)延長の手術を検討してください。骨延長手術で調べてください。170cmあったら人権がちゃんと生まれてくるんで、骨延長でよろしくお願いします。言うよ、ホンマ、ちっちゃい男に人権あるわけないだろ。調子乗んな。こっちはチビにはきちい(キツい)んだよ。でも言わせて。あたし、デブとハゲには優しいから、言っとくけど。デブとハゲには優しい。けど、チビにだけはめっちゃ厳しいから。ただ、チビにだけはホンマ、人権がない。…」(YouTube「寄り道くん」:【問題発言】身長165cm以下の人には人権がないそうで。。eスポーツ レッドブル所属たぬかな

 この発言がネット上に流れると批判の声があがった。翌16日にCYCLOPS athlete gamingを運営するブロードメディアeスポーツが不適切発言としてHP上でお詫びを掲載、17日にはたぬかな氏との契約解除を発表した。また、レッドブル社も17日までに契約が終了していることをメディアの取材に対して答えている。

■「人権がない」発言の意味

レッドブルはたぬかな氏との契約を終了

 一部ではソーシャルゲームの世界では「人権がない」は「手に入れることで有利に戦える要素」という趣旨で使われている言葉であるとして、擁護する声もある。

 たぬかな氏自身も2月15日に自身のツイッターで「高身長が好きって言いたいだけでした…」とエクスキューズを述べている(既に削除)。

 しかし、ソーシャルゲームの世界でどのように「人権がない」という言葉が使われているかなど、大多数の人は知らない。一般人の人権に関する考えは憲法11条などが基本になっている。

【日本国憲法11条】

 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

 通常の国家であればこの種の規定は存在しており、特定の相手に「人権がない」と言うことは、「君たちを人間として見ない、みなさない」と言うに等しい。人間を奴隷、あるいは動物と同等の扱いをすることになる。

 乙武洋匡氏は自身のツイッターでたぬかな氏のニュースを引用しつつ「170cmどころか107cmしかない男です、こんにちは。…『人権は、誰にでもある』忘れないで。」と投稿した(乙武洋匡@h_ototake 2月16日午後4時25分)。

 たぬかな氏は身長170cmに達しない人々、特に乙武氏や、「ママは身長100cm」の著者であるコラムニストの伊是名夏子氏、あるいは小人症の人々など、自分の力ではどうにも克服することができない事情で身長が170cmない人々も含めて「お前ら人間じゃない」「人間のようなものにすぎない」と同様の発言をしているのである。そのことが170cmにわずかに足りない男性はもちろん、障害や疾病などにより低身長に苦しんできた人々の気持ちをどれだけ傷つけるか。当該発言が合理的区別とは縁遠い露骨な差別であるのは明らかで、耳にした者の身長が170cmあるかないかには関係なく、一国民として看過できるものではない。

 「交際するなら170cm以上ある人がいい」という個人の恋愛対象の嗜好を語るのとは全く次元が異なる。それを29歳の社会人が理解できないことが信じ難い。

 所属チームが発言から2日後に契約解除をしたのも当然と思われ、契約解除のお知らせの中では「当社は、いかなる差別的・侮辱的な行為や言動・SNS等での発言も許されるものではないと認識しており、すべての人にとっての多様性を大切にしております。」(CYCLOPS athlete gaming・「たぬかな」選手との選手契約解除のお知らせ)と説明されている。極めて常識的な判断であると思う。

■たぬかな氏発言と石原壮一郎氏

石原壮一郎氏(同氏公式サイトプロフィールから)

 このように、たぬかな氏の発言は許し難いものであり、チームとスポンサーから契約を解除されるという形で発言の責任を問われた。批判する人々も概ね、上述した怒りの気持ちから批判をしていると思われる。

 しかし、一連の報道を見ていると、そのように許し難い差別発言であることを正面から語る評論家・ジャーナリストがあまりいないことに気付かされる。驚かされたのが”大人力”について研究しているというコラムニスト・石原壮一郎氏の記事(NEWSポストセブン・女性プロゲーマー炎上 「近頃よく見かける話」をどう捉えればいいのか)である。

 石原氏はたぬかな氏の発言について「かばうつもりは毛頭ありません。失礼で無神経で不用意な発言だったと思います。」と書いているものの、契約を解除された経緯を含め「なんかスッキリしないというか、ノドの奥にザラザラしたものが残る感じは何なんでしょう」と疑問を呈している。その疑問を解消するために様々な人の立場に立った考察を加えている。

 石原氏が示した様々な立場の人は以下の3種類である(4種類目も示しているが、現実にはあり得ないとしている)

(1)発言を知って「絶対に許せない!」と正義感にかられて行動した人

(2)こういう世の中だから批判を受けるのは当然だとしたり顔をする人

(3)騒動を横目で眺めつつ何はともあれ今の時代を嘆くのが大好きな人

 最終的には「少しでも『天に恥じない』立場を追い求めること」であるとし、それは(1)から(3)、あるいは別の立場か、あなたはどれですか、と問いかけている。その上で「いずれにせよ少しずつ後ろめたさを覚えることにはなりそうですが、なるべく楽しく歩んでいきましょう。」とまとめた。

 この3つの立場について、石原氏は違和感を覚えるとしながらも、(1)の「界隈からは全力で距離を置く所存」としている。

■当サイトは正義感にかられて行動する人

ネット上のたぬかな氏の写真とレッドブル

 石原氏が何が言いたいのか分からないが、たぬかな氏を批判することは少しずつ後ろめたさを覚えることであるが、楽しくいこう、ということらしい。

 個人的な感想を言えば、たぬかな氏を批判することに全く後ろめたさなど覚えない。なぜなら、遺伝的な原因はもちろん、障害や疾病などが原因で、低身長でずっと苦しんできた人に「お前は人間じゃない」と言うに等しい罵詈雑言を浴びせることも、そういう発言をした人間を批判できない社会も、絶対にあってはならないからである。

 その意味では僕は(1)の「発言を知って「絶対に許せない!」と正義感にかられて行動した人」に分類されるであろう。その(1)の人に対して石原氏は以下のように書いている。

 「正義を背負って遠慮なく誰かを罵倒するのは、さぞ楽しくて気持ちいいことでしょう。癖になって、次から次へとターゲットを探したくなる気持ちも、よくわかります。」

 正義を背負っているのはその通り。人として許せない発言を批判するだけの正義感は持ち合わせているつもりである。しかし、残りの部分は全く的外れ。僕はたぬかな氏を批判はするが、罵倒はしない。批判する原動力は怒り、憤りである。そのようなもので満ちている心が楽しくて気持ちいいはずがない。もちろん、次から次へとターゲットを探したくなることなどない。それらは批判をする多くの人も同じ気持ちであろう。

 ところが石原氏は人として許し難い発言をした、たぬかな氏を批判する人を蔑むような目で見ているのである。

■石原氏は今すぐペンを置くべき

 たぬかな氏の一連の事件は、チームとスポンサーが発言から2日以内に契約を解除しているという事実が、何よりその性質を示している。端的に言えば「考えるまでもなく、許されない発言」ということである。

 石原氏は「大人力」を研究しているという。石原氏のいう「大人」は、社会通念から大きく外れた差別発言をした人ではなく、それを批判する人を見下すような人を指しているのか。誰がそんな醜い大人になりたいというのか。

 文章を生業としているのであれば、ベースとなる普遍的価値を持つ概念への尊重は揺るがせにしてはならない。その普遍的価値を持つ概念に自由、平等などの基本的人権や公共の福祉が含まれているのは疑いない。たぬかな氏の発言はその普遍的価値観を否定するものであるから、批判されるのは当然。正義感から批判する人は、それが反社会的な発言であり、決して許されない差別発言であるから声を大にして批判するのである。

 自分の努力ではどうにもならないハンデを背負って生きている人を嘲笑うような発言を許さない社会をつくることが大人の役割。普遍的価値を持つ概念を軽視するコラムは反社会的な性質を持つと言っていい。その程度のことが理解できないなら、文章を書く資格などない。もし、石原氏がそれを理解できていないのなら、今すぐペンを置くべきである。

    "「170cm人権なし」を語れぬ石原壮一郎氏"に14件のコメントがあります

    1. BADチューニング より:

      『プロゲーマーのたぬかな』

      などという女性を「知らない。それ誰?」というのが、このニュースを聞いた普通の日本人の第一印象だろう。

      ところで、
      金メダリストの平野歩夢氏の身長公表値は165cmだそうです。

    2. 椿餅 より:

      努力しても克服出来ないことを評価対象にしてはいけませんね。たぬかな氏は、骨延長手術=努力と考えたのでしょうが、病気や障害による低身長についての知識が欠落していたようです。人権云々は業界用語の意味合いだったのでしょうが、場所をわきまえて使うべきでしたね。

      たぬかな氏は、石垣のりこ議員と同類だと感じます。議員の安部前総理への(持病への)暴言を思い出しました。️️️

      石原壮一郎氏は、大人力をご研究とのことですが、ご自身の大人力はどの程度とお考えでしょうか?25点くらい?

      1. 椿餅 より:

        追加のコメントです。

        電車内で喫煙していた男に注意した男子高校生が、激昂したその男から暴行を受け、大怪我をした事件がありました。男子高校生の勇気ある行動を称えつつも、その行動を危険だと言う人もいました。それは、「非常識な行動を平気でするような人間には関わらない方がいいよ」という意味でしょう。今後、同様の事件が起こらないようにとの思いから出た意見だとは思います。

        ですが、「見て見ぬふり」を良しとする社会は健全なのでしょうか。周囲に迷惑を掛けたり、誰かを傷つける言動を目にした時、「それは良くないよ」と言える社会であって欲しいです。
        この事件の場合、勇気ある高校生に意見するのではなく、喫煙した男こそが責められるべきです。正しい行いをした側が、意見されるのには違和感を覚えます。そういう意味で、石原壮一郎氏にも違和感を感じました。

        「自分が信じる正義が絶対なのではなく、他者にとってはそれが不正義になることもある」と聞いたことがあります。立ち位置が違えばそうなるでしょう。正論だと思います。

        ネットでの匿名を隠れ蓑に、憂さ晴らしのごとく他人を叩き、優位に立つことを楽しんでいる人間もいます。叩くのは、その人なりの正義感からでしょう。そういう人間は、次々と攻撃する獲物を求めます。自分の正義こそが全てとばかりに行動に移します。

        「皆さん、ちょっと待ってよ、行動を起こす前に一呼吸置こうよ」…石原壮一郎氏は、そういうことを言いたかったのでしょうか。皆さんのコメントを読ませて頂き、そんな風に思えて来ました。ならば、石原氏の大人力は45点くらいが妥当かな…(笑)

        自分と違う意見を聞くのは、勉強になりますね。松田さん、goodな記事を有り難うございます!!

        1. 匿名 より:

          いいね!

    3. Tなか より:

      これをテーマにして記事を書く労力が勿体無い。と思ってしまいました。
      時々いるちょっと変わった方という括りで十分な気がします。

      1. BADチューニング より:

        >時々いるちょっと変わった方

        それも含めてまぁ申し訳ないが“プロゲーマー”?なんて現時点では『ほぼほぼ一般人』ですよね、
        そんな隅っこの方に居る人を中央まで引き摺り出して「コイツこんな酷い事言ってましたよ!」と叩きまくる現行の“Net社会”とは、
        石原壮一郎氏のボヤく「正義を背負って遠慮なく誰かを罵倒するのは、さぞ楽しくて気持ちいいことでしょう」は半分は当たってるでしょう、半分は。

        1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

          >>BADチューニング様

           チームと契約し、スポンサーと契約して、その宣伝役を負っています。

           特にスポンサーはその社会への影響力を評価して契約しているわけで、『ほぼほぼ一般人』という評価は当たっていないと思います。

           「Red Bull」のロゴを体にまとって「障害者は人間じゃない」と言われたら、スポンサーはすぐに下りるでしょう。

        2. 匿名 より:

          半分は当たっているね。

    4. どんぐり より:

      >「正義を背負って遠慮なく誰かを罵倒するのは、さぞ楽しくて気持ちいいことでしょう。癖になって、次から次へとターゲットを探したくなる気持ちも、よくわかります。」

      あくまでも個人的な感想です。この石原氏の発言は松田さんに少しあてはまるのではないでしょうか。「罵倒」は「批判」という言葉に置き換えられるべきですが、松田さんはご自身の中にある正義を背負って、反ネトウヨの人を次から次にターゲットにし、批判しているように思えます。ただ、前菜のたぬかな氏からメインディッシュの石原氏まで、ロジカルかつ迫力を持ってつなげる文章力はさすがです。感服いたしました。

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        >>どんぐり様

        >>僕は(1)の「発言を知って「絶対に許せない!」と正義感にかられて行動した人」に分類されるであろう。

         このように書いていますから、当てはまるということは前提の文章です。しかし、あてはまるのは一部であり、それ以外は的外れだよと書いた部分もご覧になっていただければと思います。

      2. 通りすがり より:

        >ご自身の中にある正義を背負って、反ネトウヨの人を次から次にターゲットにし、批判しているように思えます。

        「反ネトウヨ」から「反」を取り除けばそれはそのままあなたに当てはまるのではありませんか?
        そちら界隈の方々の発言のロジックは大体そういうものでしょう。
        自分らの意に反する人々のことを十把一絡げに「ネトウヨ」と呼称し、そんな言葉を安易に用いること自体リテラシー的にたぬかな氏と大差はない。
        それこそ「どんぐりの背比べ」というところでしょうか。
        しかもわざわざネトウヨ認定している人間の運営するサイトを閲覧し、右左関係ない記事に噛みついて、おまけに嫌味まで付け加えている。

        よっぽどお暇なんですね。あくまで私の個人的な感想ですが。

    5. 通りすがり より:

      >一部ではソーシャルゲームの世界では「人権がない」は「手に入れることで有利に戦える要素」という趣旨で使われている言葉であるとして、擁護する声もある。

      長年ゲーマーやってるが、そんなもん聞いたこともないw
      ビデオゲームのほぼ黎明期からビデオゲームと慣れ親しんできた私から見ても、「プロゲーマー」などという職種の存在には疑問を持たざるを得ないし、ビデオゲームでの対戦プレイを「eスポーツ」などという美化した表現にも首を傾げる。
      「動体視力や反応速度の衰え=加齢による衰え(ピークとしてはそこいらのプロスポーツよりよっぽど早く訪れると思う)≒廃業」であって、そもそも一生の生業になる商売ではないし、なにより気になるのが、プロゲーマーを自称する人間の殆どが今回のチームの面々のように「他人の気持ちを慮れない」「年齢の割に人としてあまりに未成熟」であること。
      現代のネット社会においてSNS等での迂闊な発言が、どのような結果に結びつくのか想像できないことも残念。
      曲がりなりにも企業に属し、自分自身の活動にスポンサーがついているのなら最低限身に付けておくべきリテラシーは抑えておくべきですね。
      こういうことを企業が教育しなくてはならないのかどうか、判断に苦しむところではありますが。

    6. 海軍大将 より:

      松田さんのコラムは、ほぼ毎回正論だと思うのですが、今回に限っては納得できませんでした。
      松田さんは、今回のたぬかなの発言を「一部ではソーシャルゲームの世界では「人権がない」は「手に入れることで有利に戦える要素」という趣旨で使われている言葉であるとして、擁護する声もある。」として、たぬかなが低身長男性の法的な権利を否定する意図で「人権が無い」と言ったわけでは無いことを認めながら、「しかし、ソーシャルゲームの世界でどのように「人権がない」という言葉が使われているかなど、大多数の人は知らない。一般人の人権に関する考えは憲法11条などが基本になっている。」として、「お前ら人間じゃない」「人間のようなものにすぎない」という意味になると解釈しています。
      つまり、たぬかなには差別的意図は無かったにもかかわらず、一般人の解釈を前提に、たぬかなの発言は差別発言だと断定しているわけですが、これは極めて危険な解釈であると思います。
      まず第一に、たぬかなの発言は生配信中の発言であり、「人権がない」=「手に入れることで有利に戦える要素」が理解できるクラスタの人を対象としていると考えると、その発言を聞くことが想定されていない一般人が聞いて「お前ら人間じゃない」「人間のようなものにすぎない」と解釈して傷つくことを想定しろというのはおかしくないでしょうか。
      私の高校では「人権が無い」=「委員などの職務がブラック」という意味で使われており、「○○委員には人権が無い」とか「××係は人権がフルで保障されている」といった会話がほぼ毎日のようにクラスに飛び交っていましたが(特に文化祭前)、そこで飛び出してきて「全ての人に人権はあります」と言う先生はいませんでした。それは、その学校で「人権が無い」=「委員などの職務がブラック」という意味であることが普及しており、同じ学校の生徒を相手に話す限りは、「人権が無い」と聞いて「お前ら人間じゃない」「人間のようなものにすぎない」と解釈するひとがいないからです。
      たぬかなの発言も本質的には同じです。たぬかなはゲーム配信の視聴者向けに発言している以上、その発言はあくまでゲーマー内での辞書に基づいて解釈しないといけない訳であり、それで傷ついたというなら、それはゲーマー用語を弁えずにゲーム配信を視聴して、勝手に誤解している方が悪いのです。
      第二に、本コラムでは「人権がない」=「お前ら人間じゃない」「人間のようなものにすぎない」が「一般的」な解釈だとされていましたが、この語義解釈を「一般的」とするのは松田さんの恣意的な解釈ではないでしょうか。寧ろ、私としては「人権がない」=「手に入れることで有利に戦える要素」を知らない人が世の中に、特にネットスラングに通じているはずのツイ民やネラーにも、余りにも多いことに驚いています。私はここ半年ゲームをしていないほどゲーマーとは程遠い存在ですが、その私でも知っているぐらい「人権がない」というのはメジャーなスラングです。「人権がない」と聞いて、「手に入れることで有利に戦える要素」と解釈する人もいれば、「お前ら人間じゃない」「人間のようなものにすぎない」と解釈する人もいれば、「委員などの職務がブラック」と解釈する人もいる中で「お前ら人間じゃない」「人間のようなものにすぎない」との解釈が一般的だと勝手に決めつけて、他者を批判するのには慎重であるべきだと思います。そもそも、たぬかなは「人権がない」=「手に入れることで有利に戦える要素」という意味だとみんな知っていると思っていた可能性も高いと思われます。
      第三に、本コラムにおいてたぬかなの罪は「身長170cmに達しない人々、特に乙武氏や、(伊是名は女なので略)あるいは小人症の人々など、自分の力ではどうにも克服することができない事情で身長が170cmない人々も含めて「お前ら人間じゃない」「人間のようなものにすぎない」と同様の発言をしているのである。そのことが170cmにわずかに足りない男性はもちろん、障害や疾病などにより低身長に苦しんできた人々の気持ちをどれだけ傷つけるか。」と、障碍や疾病などにより低身長に苦しむ人の気持ちに配慮していなかった事とされています。しかし、今回のように、差別的意図は無いが配慮が欠けている発言を過度に攻撃することは、「障碍や疾病などにより配慮が出来ない人」の社会参加を著しく制約することになります。現に、近年社会に於てますます「配慮」や「器用さ」「コミュニケーション能力」が求められるようになっていった結果、発達障碍者の社会進出が難しくなっていっているという事実もあります。世の中には配慮が出来ない人、自分の発言に傷つく人がいる事がいる事を想像できない人がいる事を受け入れる必要があると思います。

      最後に、なんで今回の発言が炎上したかを考えると、「現に今の日本において低身長の男性に人権が無いから」ではないでしょうか。低身長の男性が社会生活のあらゆる場面で疎外されているからこそ、たぬかな発言が炎上するわけです。「人権が無い」という言葉を狩ったところで、「人権が無い」実態を改善することはできません。たぬかな発言は低身長男性に「人権が無い」実態を可視化してくれた有益な発言であり、それを押しとどめようとする人のほうが低身長男性の人権回復を妨げていると思われます。

      1. 匿名 より:

        説得力のあるコメントです。ゲームとは無縁でネットスラングなるものも知らない為、たぬかな発言を誤解していました。となると、たぬかなへの処分は行き過ぎではないのか。

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