誰も言わないなら僕が言う「乙武洋匡さんのエレベーター発言はおかしい」

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 安倍晋三首相のG20の夕食会での発言が話題になっている。大阪城が約90年前に再建された時にエレベーターを付けたことを「大きなミスを犯してしまいました」と言ったことについて、「バリアフリー軽視」などの指摘が出ているのである。

乙武洋匡さん、それは言葉狩り?

 首相の発言は大阪城が「約90年前に16世紀のものが忠実に復元された」と説明した後で、「しかし一つだけ、大きなミスを犯してしまいました。エレベーターまでつけてしまいました」というものである。「忠実に復元した」と言いながらも、16世紀には存在しなかったエレベーターを設置してしまった、という矛盾をジョークとして語ったものであることは子供でも分かるだろう。

 しかし、作家の乙武洋匡さんは「朝から、とっても悲しい気持ちになる」とツイートした。朝日新聞はさっそく記事で叩いているが、こういうメディアのやり方に僕はこれ以上ない嫌悪感を覚える。乙武さんも作家を名乗るのなら日本語はよく理解できるであろう。安倍首相が「障害者が上り下りできないように、エレベーターを設置しない方が良かった」と言っていると感じたとしたら、語学力に問題があるから作家の看板を下ろした方がいい。

 乙武さんが自らの障害を克服して、強く生きている姿は多くの人を勇気付けた、その功績は小さくない。しかし、これはもう、弱者が弱者の地位を利用して「おれが気に入らないから、その発言は許さない」という言葉狩りの類である。バリアフリーとか、障害者が住みやすい社会とか、誰もが批判することができないという状況を背景に、相手の発言を曲解して攻撃するのはまさに弱者による脅し。これに便乗した朝日新聞の記事は「批判されることのない弱者の立場」を錦の御旗にして、気に入らない相手を攻撃する構図でしかない。

 確かに障害を持つ人々、差別に苦しんできた人々に対しては特段の配慮が必要であり、そうした人々が幸せに生きられるように社会全体がケアしなければならない。だが、そうした守られるべき人々はオールマイティーのパワーを持ち、批判されることのない特権的地位に就いたわけではない。障害を持つ人々、差別を受けた人々も国民の一人として、社会に対する責務を有する。安倍首相の言葉を不快に感じたとしても、その趣旨が社会福祉を否定するような内容でないことはしっかりと理解すべきだし、できるであろう。自らの発言が、一部のメディアに政治利用されることの重大性を自覚してツイートしてほしい。

 乙武さんがツイートで言ったことに対して、僕はこう言いたい。今回の報道を見た時も、2、3年前に乙武さんの人間として恥ずべき行為の数々が伝えられた時も、僕は「朝から、とっても悲しい気持ちになった」。

4 thoughts on “誰も言わないなら僕が言う「乙武洋匡さんのエレベーター発言はおかしい」

  1. アバター うさ より:

    この記事を読んで、私も
    「朝からとっても悲しい気持ちになった。」

    貴ブログの記事に偶然出会い、興味深い切り口に惹かれ次々記事を読むうちに、こちらの記事を読みました。

    安倍首相がこんなジョークを言ったとは知りませんでした。が、私自身もジョークとは分かるけれど、胸を刺されるような痛みを感じました。

    なぜなら、車椅子の親友と行動する度に、「君だけ行って来なよ。」と一緒に入らない経験だらけだからです。
    お城ブーム、キャンプブーム、夢は広がってもその都度「行けない現実」を突きつけられるのです。
    だから、このエレベーターのニュースを知った時は、時代考証や歴史的価値から考えて「やり過ぎ」と感じる気持ちと、「夢が叶う!」という喜びと、両方ありました。

    だから、安倍首相のジョークは、「長年の越えられない壁が取り払われた喜び」を感じている障害者(や高齢者)にとって、ワイワイ湧いているところに冷水をぶっかけられるような…「なんでぇ〜?」と泣きたくなるようなショックを与えた言葉だと思うのです。

    乙武さんの不祥事は、「不愉快や不信感を与える悲しさ」ではあっても、「夢が叶った喜びに冷水を浴びせる悲しさ」では無いと思います。
    その違いを分かっていただきたくてコメントしました。

    乙武さんは好きではありませんが、彼の発言が障害者のシンボルとして扱われる事実は確かです。時に過激で、障害者達からも迷惑に感じる発言も多々ありますが、今回の「悲しい」という控えめな発言は、「皆んなの声を代弁していた」と感じました。

    「バリアフリー軽視」と指摘したのは、マスコミの記事であって、乙武さんはただ「悲しい」と「呟いただけ」だと思います。

    最後に、車椅子で入れない所は「毎日遭遇する」のです。彼らは「毎日我慢して暮らしている」のです。そして、その「我慢は口にしないのが普通」のこととして生きて来たし、今もそうして暮らしているのです。

    「お城にエレベーターなんてあり得ない!」と誰もが思っていたと思います。だからこそ、安倍首相もあんなジョークを発したのでしょうし。エレベーター批判する側への緩和剤として言ったのかも知れません。
    そういう配慮のできる首相にだからこそ、せっかくのエレベーター利用者を「逆に悲しませている事実」に気付いて欲しいと、ツイートしたのかもしれません。

    街中のジョークなら、悲しくてもやり過ごすでしょう。でも、一国の首相、それこそ「発言に影響力のある」最たる人の声だからこそ、悲しかった人は大勢いたと思いますし、見過ごせなかったのだと思います。

    1. matsuda matsuda より:

      >>うさ様

       コメントをありがとうございます。
       安倍首相の発言は
      「中世の城(の外観)を忠実に再現」→「中世になかったエレベーターを設置」

       という単なるジョークです。それをご自身の体験などから「ワイワイ湧いているところに冷水をぶっかけられるような…「なんでぇ~?」と泣きたくなるようなショックを与えた言葉だと思う」のは、そう感じるのは自由ですが、安倍首相は「エレベーターを作らない方がいい」などとは言ってません。考えてもいないでしょうから、(そういう解釈は悪意的すぎませんか?)というのが一般的な解釈でしょうし、僕もそう感じます。

       外観は中世の再現を心がけながらも、観覧者の便を考えて大阪城にエレベーターを設置したのです。仮に設置せずに内面まで中世の再現をし、「エレベーターを設置せずに良かった」と首相が言ったら、それこそバリアフリー軽視で大問題でしょう。十分にバリアフリーに心がけた上で、そんなことは意識もないジョークを言ったと考えるのが一般的な解釈だと思います。

       単なるジョークを、「この立場から許せない」と言うのは、まさに言葉狩りの理論そのもの。弱者の立場に立つ人間が、そうではない人間が反発できない主張をして攻撃する古典的手法です。

       以前、ビートルズのジョージ・ハリスンがこんな話をしていました。ビートルズが大人気の頃、誰もが彼らに会いたがった。ある日、「障害を持つ人々に会って、夢を叶えて欲しい」という手紙をもらい、(それならば)ということで4人が会ったそうです。すると、手紙を書いた健常者で介助者の女性が、障害者をそっちのけで自分が4人と会うことを楽しみ、しきりに話しかけ、接触したとか。その時の経験をジョージ・ハリスンは「最悪だ」と語っていたのをテレビで見ました。

       障害者の願いを一顧だにしなかったら、ビートルズは世間から批判を浴びたかもしれません。「障害者のためなら」という思いも強くあったでしょう。そうした感情を利用する者が、障害者にも、健常者にもいるということを示す好例だと思います。

       乙武氏の発言は、そうした「障害者カード」を振り回しているように僕には感じたから、そのように書きました。その点をご理解いただけると幸いです。

  2. アバター MR.CB より:

    乙武氏を擁護するつもりはありませんが、過去には障がい者の振舞いを律する発言も多々あったように思います。ただし今回の件については、松田氏の見解が一般的なものだと思います。乙武氏の、意図的か否は定かではありませんが偏った主張ですね。読解力がないと評されても致しかたない。いわゆる【弱者の脅迫】。終戦直後に吉田茂がGHQ草案の天皇に対する扱いで、マッカーサーに「窓下の市民デモ」を盾にして「ことと場合によっては日本国が共産主義国家になってしまう」と対峙したことを思い浮かべてしまいました。

    1. matsuda matsuda より:

      >>MR.CB様
       コメントをありがとうございます。
       メディアにいた人間としては、弱者を攻撃することは非常にハードルが高いというのを日々、実感していました。そこを突いてくる自称弱者の圧力はメディアにとっては本当に頭が痛い問題でした。共同通信の記者ハンドブックが、差別用語を指定して使うべきではないことを示していますが、それはまさに弱者の言葉狩りに対する自衛手段です。

       本件の乙武氏のコメントはまさに弱者の脅迫にほかならないと思いました。ご賛同いただけて、大変嬉しいです。ありがとうございました。

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